第五回 アルンカス王国編(第十三章~第十四章)
●主な登場人物・勢力紹介●
※本ページには、『異世界艦隊日誌』第十三章から第十四章までの内容および結末に関するネタバレが含まれています。
※人物の所属や階級、立場は、原則として第十四章終了時点を基準としています。
※本ページでは、アルンカス王国編で重要な役割を担った人物を中心に紹介しています。名前のあるすべての登場人物を網羅したものではありません。
●フソウ連合・主要人物●
●鍋島貞道
フソウ海軍総司令長官。フソウ連合の外交最高責任者。
共和国からアルンカス王国に関する権利を譲渡されたが、同国をフソウ連合の植民地として支配することを拒む。
アルンカス王国を独立国家として再建し、内政上の自治を認めたうえで、相互防衛条約を締結する方針を示す。
アルンカス王国の陸上戦力や地理的価値がフソウ連合に利益をもたらすことは理解している。
しかし、その利益を一方的な支配によって得るのではなく、両国が互いを補い合う関係を作ろうとしている。
現地でのフソウ連合への期待が高まっていることについても、楽観視していない。
期待が大きいほど、失望へ転じた際の反発も強くなると考え、部下たちへ慎重な行動を求める。
海賊襲撃の際には、現場の毛利照正大尉へ、戦うか撤退するかの判断を任せた。
毛利が軍事機密である航空機を使用したことについては、行動の正しさを認めながら、組織として軍規違反を不問にはしなかった。
形式上は一か月の謹慎処分としつつ、実際には家族と過ごす休暇を与え、謹慎後の昇進も決める。
規則だけで人を切り捨てず、善意だけで規律を曲げることもしない。
人間性と軍隊組織の双方を守ろうとする姿勢が表れている。
● 東郷夏美
フソウ海軍大尉。鍋島長官の秘書官。
アルンカス王国政策や外洋艦隊編成など、拡大し続ける海軍と外交に関する事務を支える。
映画『夜霧の渡り鳥』の試写会では、鍋島とともに作品を鑑賞する。
鍋島役の俳優を格好いいと評価しながらも、自分は本物の鍋島の方が好きだと伝える。
鍋島への好意は隠しきれなくなっているが、二人の関係を決定的に変える言葉までは口にしていない。
的場と杵島マリの結婚を知った際には、友人であるマリが思いを実らせたことを喜ぶ。
一方で、自分には直接知らせてくれなかったことに拗ねるなど、秘書官とは異なる親しい一面も見せる。
● 川見悟
フソウ海軍大佐。諜報部責任者。
アルンカス王国に複数の連絡員を送り込み、現地の政治、世論、生活状況を調査する。
列強側から見下ろした報告ではなく、現地の人々と同じ目線で得た情報が必要だと考えている。
中でも木下喜一大尉を、責任感が強く、アルンカス王国行政との連絡役に適した人物として評価する。
共和国関係者が撤退した後の王国内部を把握し、正式な権利移譲へ向けた事前調整を進める。
情報収集を単なる敵情把握ではなく、友好国となる相手を理解するためにも活用している。
●アルンカス王国●
●チャッマニー姫
アルンカス王国王家最後の生き残り。
街では「マムアン」と名乗り、身分を隠して行動している。
共和国によって王族の多くを失い、幼いながらも王国と国民の未来を背負わされている。
王宮では、常に大人びた判断と態度を求められており、年相応の少女として振る舞う機会はほとんどない。
しかし街へ出れば、屋台の食事を楽しみ、自分の好きな場所を木下へ紹介し、感情を素直に表すことができる。
アルンカス王国を深く愛しており、木下へ案内の報酬として求めたのも、自分の国を好きになってもらうことだった。
フソウ連合が共和国と同じ支配者になるのではないかという不安も抱えている。
一方、木下との交流を通じて、彼個人への信頼と淡い恋心を育てていく。
王女と軍人という立場で再会した際には、以前のように話せず落ち込むが、後に再びマムアンとして木下と街で会う。
国家を背負う王族であると同時に、初めての恋に戸惑う一人の少女として描かれている。
●木下喜一
フソウ海軍大尉。アルンカス王国へ派遣された連絡員兼使者。
現地の人々と同じ目線から情報を集めるため、首都コクバンで市場や港を歩き、住民の話を聞いていた。
街では名前を現地風に「キーチ」と呼ばれている。
マムアンと名乗る少女に案内され、アルンカス王国の文化、食事、歴史、人々の感情を知る。
マムアンが王家最後の生き残りであるチャッマニー姫とは知らず、彼女を国を愛する普通の少女だと思って接していた。
後に正式な使者として王宮を訪れ、マムアンの正体を知る。
外交経験が豊富な人物ではないが、相手の使用人にも頭を下げる礼儀正しさと、命令ではなく提案として話を進める誠実さによって、宰相バチャラの信頼を得る。
海賊襲撃時には、フソウ海軍だけですべてを守るのではなく、アルンカス王国側にも自国防衛への協力を求めた。
戦闘後には、毛利が軍事機密を使用した理由を王国側へ説明し、彼を擁護するために外交的な働きかけを行う。
その結果、フソウ連合の提案への承諾、感謝状、毛利への勲章授与へとつなげた。
実直な性格でありながら、必要な場面では機転を利かせられる若手軍人である。
●プリチャ
チャッマニー姫付きの侍女。
二十歳という若さながら、機転の利く性格を評価され、姫の側近を務めている。
チャッマニーからは、侍女というよりも姉のように慕われている。
常に王家最後の生き残りとして振る舞わなければならないチャッマニーが、心を許せる数少ない人物の一人。
チャッマニーが木下へ恋心を抱いていることに気づき、その感情を温かく見守る。
王女としての立場を守りながらも、彼女がマムアンとして木下と再会できるよう手助けする。
姫を規則で縛るのではなく、重圧の中で失われがちな少女らしい時間を守ろうとしている。
●バチャラ・トンロー
共和国支配下に置かれていたアルンカス王国の宰相。
共和国の人間が撤退した後も、崩れかけた行政と国家を支えている。
共和国への抵抗運動や独立運動に関わる者たちともつながり、アルンカス王国が再び独立する機会を待ち続けていた。
フソウ連合の使者として現れた木下を、当初は経験の浅い若者だと見ていた。
しかし木下の礼儀正しい態度と、フソウ連合から示された対等な提案に触れ、評価を改める。
あまりにも好条件であるため、フソウ連合に別の思惑があるのではないかと警戒しながらも、独立への道を現実的に検討する。
海賊襲撃では、木下の要請を受けて沿岸防衛と上陸対策を進める。
フソウ海軍が秘密兵器まで使って王国を守ったことに感動し、フソウ連合が言葉だけでなく行動によって友好を示したと理解する。
王国の独立と国民の安全を最優先に考える、現実的な政治家である。
●フソウ海軍・特別警戒艦隊●
●毛利照正
フソウ海軍大尉。特別警戒艦隊司令。
水上機母艦瑞穂と松型駆逐艦を中心とした部隊を指揮し、アルンカス王国周辺の警戒任務に就く。
三十隻前後の海賊艦隊を発見した際、戦うか撤退するかの判断を海軍本部から任される。
自艦隊が本格的な艦隊戦に向かないことも、敵との戦力差が大きいことも理解していた。
それでも、目の前でアルンカス王国の人々が襲われることを見過ごせず、迎撃を決断する。
戦闘では通常戦力だけで敵を止められないと判断し、秘匿を命じられていた航空機を使用する。
軍規違反になることを理解したうえで、人命を守ることを優先した。
帰国後の軍法会議では、軍人である前に人でありたいと述べ、自らの判断を後悔していないと答える。
娘の真奈美に恥ずかしくない父親でありたいという思いも、彼を変えた大きな理由となっている。
一か月の謹慎処分を受けるが、実質的には家族との長期休暇であり、謹慎後の昇進も決まる。
アルンカス王国からは、最高位の特一級騎人英雄章を授与されることとなった。
●海辺太郎
フソウ海軍中尉。特別警戒艦隊副官。
毛利照正を実務面と精神面の双方から支える人物。
海賊艦隊の情報や海軍本部からの指示を整理し、各艦へ伝達する。
帰国後、軍法会議を恐れて弱気になっていた毛利へ、娘に誇れる行動を取ったのだから胸を張るよう励ます。
毛利の人間臭さと決断力を理解し、信頼している。
軍法会議後は大尉へ昇進し、毛利の謹慎期間中、特別警戒艦隊の指揮を任される。
●瑞穂
フソウ海軍の水上機母艦。特別警戒艦隊の中核艦。
偵察用の零式水上偵察機や二式水上戦闘機を運用し、広い海域の索敵を担当する。
アルンカス王国防衛戦では、毛利の命令によって航空隊を発進させる。
航空機の存在を現地住民へ知られる危険を冒しながら、海賊艦隊へ空から攻撃を加えた。
強力な砲撃力ではなく、索敵能力と航空戦力によって友好国を守る、特別警戒艦隊の要となる艦である。
●外洋艦隊●
●真田平八郎
フソウ海軍少将。外洋艦隊司令。
フソウ連合領海外で活動する新設艦隊の編成と訓練を担当する。
アルンカス王国派遣を見据え、短期間で艦艇と乗組員を実戦投入可能な状態へ整えなければならない。
外洋艦隊の将兵が、海外ではフソウ連合そのものを代表する存在になることを理解している。
厳しい訓練を行う工藤たちへ一定の信頼を置きながらも、兵士へ無理をさせすぎないよう配慮する。
戦闘能力だけでなく、国外での規律、礼儀、責任感を備えた部隊を作ろうとしている。
● 工藤特務兵曹
外洋艦隊要員の教育を担当する特務兵曹。
武藤、金子とともに「鬼の三羽烏」と呼ばれる厳しい教官の一人。
訓練中は激しい口調で兵士を叱咤するが、人格を傷つけるような侮辱や、暴力による指導は行わない。
特に、失敗を隠したり、誤魔化したりすることを厳しく戒める。
現時点で完璧であることより、間違いを認め、改善する姿勢を重視している。
外洋艦隊の中核となる第一期要員を育てる、現場教育の責任者である。
●ウェセックス王国海軍●
●トッドリス・カンパー
ウェセックス王国海軍少佐。
ドレッドノートなどの譲渡艦を受け取るため、王国の乗組員候補を率いてフソウ連合を訪れる。
アッシュ王子から親しく名前を呼ぶことを許されている仲間の一人。
指揮官でありながら、自ら一般兵と同じ訓練を受けることを希望する。
厳しい研修を通じて、フソウ海軍の強さが優れた艦艇だけではなく、兵士の練度と教育制度にあることを理解する。
訓練後には、ドレッドノートの指揮権を正式に受け取り、実弾射撃を行う。
王国海軍の新しい艦隊と人材育成を担う、アッシュ派の若手指揮官である。
●リチャード・リイリネス
ウェセックス王国海軍中尉。
トッドリスとともにフソウ連合へ派遣された、アッシュ王子の仲間。
指揮官として研修を見守るだけでなく、兵士と同じ訓練へ参加する。
フソウ海軍の訓練の厳しさに苦戦しながらも、王国海軍を立て直すために食らいついていく。
トッドリスを補佐し、ドレッドノートとその乗組員を王国へ持ち帰る役目を担う。
●伊藤大尉
フソウ海軍の訓練教官。
ドレッドノートを受け取る王国海軍要員の教育を担当する。
トッドリスやリチャードを特別扱いせず、艦を運用するために必要な能力を身につけさせる。
研修終了後はトッドリスへ指揮権を返還し、王国側の判断による実弾射撃を行わせる。
艦を渡すだけでなく、自力で運用できる状態まで責任を持って育成する、フソウ海軍の教育方針を体現する人物である。
●イタオウ地区・映画事業●
●杵島マリ
フソウ海軍中佐。広報部所属。イタオウ地区の映画産業を担当する。
戦争で被害を受けたイタオウ地区へ、新たな産業と雇用を作るため、映画製作を進める。
完成させた作品は、戦記映画『夜霧の渡り鳥』と、恋愛映画『遠い地のあなたに……』。
戦争の記録や海軍の宣伝だけでなく、人々が純粋に楽しみ、感動できる娯楽を作ろうとしている。
映画館の建設や映画会社の設立も進め、継続的な産業として定着させようとする。
私生活では、的場良治大佐との結婚を決意。
六月に結婚式を挙げる予定で、鍋島へ仲人を依頼する。
広報担当者、文化事業の責任者、そして的場の伴侶として、新しい段階へ進もうとしている。
●的場良治
フソウ海軍大佐。東部方面部司令。
第十三章では前線の中心には立たないものの、イタオウ地区の復興と東部方面の防衛を担当している。
恋人の杵島マリと結婚することを決め、鍋島へ手紙で報告する。
現在の直接の上官が鍋島であることから、仲人も鍋島へ依頼した。
戦場では大胆な作戦を迷わず実行する一方、結婚の報告は手紙で送るなど、私生活では相変わらず少し不器用な面を見せる。
●正体不明の勢力●
●謎の老人
第十四章の最後に登場する、正体不明の老人。
白い髪と長い顎ひげを持ち、表向きは慈愛に満ちた穏やかな雰囲気を漂わせている。
しかし、その内面は冷酷で、目的のためには多数の人間を捨て駒として扱う。
アルンカス王国を襲った海賊艦隊は、この老人の勢力が用意した者たちだった。
襲撃が失敗し、全滅したことについても、大きな損失とは考えていない。
フソウ連合、ウェセックス王国、フラレシア共和国、シルーア帝国など、各国の政治と人物の動きを継続的に監視している。
鍋島が世界の変化の中心にいると考え、その存在を危険視する。
最終的には鍋島を消す必要があると判断し、配下へ命令を下す。
所属国、組織、真の目的は、この時点では明らかになっていない。
● 影の男
謎の老人へ各国の情報を報告する人物。
暗闇の中に溶け込むように姿を隠し、老人の命令へ絶対的に従っている。
海賊を装った襲撃者たちが捕虜となっても、自分たちとの関係が漏れないよう工作していた。
王国のアッシュ派や共和国のアリシアについても調査し、それぞれの組織へ協力者を潜入させようとしている。
老人から鍋島排除の命令を受けた後、気配ごと消えるようにその場を立ち去る。
諜報や暗殺に関わる能力を持つと考えられるが、その素性は不明である。
●主な国家・組織●
●アルンカス王国
かつてフラレシア共和国の支配下に置かれていた王国。
海上交通と河川輸送を共和国に掌握され、王族の大半も処刑されている。
王家最後の生き残りであるチャッマニー姫と、宰相バチャラを中心に、国家としての体制をかろうじて維持してきた。
共和国との講和によって、同国に関する権利がフソウ連合へ譲渡される。
しかしフソウ連合は植民地化せず、独立国家としての再建と相互防衛関係を提案する。
海賊艦隊との防衛戦を通じてフソウ連合への信頼を深め、その提案を受け入れることを決める。
陸上戦力と豊かな土地を持つ一方、海軍力と海上防衛能力に乏しい。
フソウ連合との関係によって、独立と安全保障の両方を得ようとしている。
●フソウ海軍外洋艦隊
フソウ連合領海外での活動を目的として新設される第五艦隊。
アルンカス王国への派遣と、国外における友好国支援を主要任務として想定している。
戦艦、巡洋艦、駆逐艦、支援艦を組み合わせた大規模な編成が計画されている。
将兵は海外でフソウ連合を代表する存在になるため、戦闘能力だけでなく、規律や礼儀にも厳しい教育を受ける。
配備される艦艇には、輸出商品としてフソウ連合の造船技術を外国へ示す役割もある。
●特別警戒艦隊
水上機母艦瑞穂と松型駆逐艦を中心とする警戒部隊。
本格的な艦隊決戦ではなく、索敵、船団護衛、周辺警戒を主目的とする。
アルンカス王国周辺で海賊艦隊を発見し、現場判断によって迎撃を決断。
航空戦力を投入し、アルンカス王国軍と協力して襲撃を阻止した。
小規模な警戒部隊でありながら、両国の友好関係を決定づける大きな役割を果たす。
●ウェセックス王国
フソウ連合からドレッドノートなどの艦艇を受け取り、海軍再建を進めている同盟国。
艦艇だけでなく、フソウ式の訓練と運用方法も学ぼうとしている。
アッシュ派の若手軍人たちが、新戦力の中核へ配置されている。
フソウ連合との関係は、単なる艦艇購入から、人材教育と共同訓練を含む軍事協力へ発展している。
●イタオウ地区映画事業
ヒュドラ作戦で被害を受けたイタオウ地区の復興事業として始められた新産業。
杵島マリを中心に映画製作、映画館建設、映画会社の設立が進められている。
戦争や海軍活動を伝える戦記作品だけでなく、一般の人々が楽しめる恋愛映画なども製作する。
広報手段であると同時に、文化、娯楽、雇用を生み出す産業として成長し始めている。
● 正体不明の組織
謎の老人を中心として、各国へ諜報員や協力者を送り込んでいる勢力。
海賊を装った艦隊をアルンカス王国へ差し向け、首都攻撃を企てた。
王国のアッシュ派、共和国のアリシア、崩壊へ向かう帝国、そしてフソウ連合の鍋島を監視している。
一国の利益ではなく、世界規模の何らかの目的に従って動いていると考えられる。
第十四章終了時点では、その正式名称、拠点、目的はいずれも不明である。




