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機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー  作者: 井上 斐呂


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第53話 最後の講義

次の日は約束通り狩猟ギルドに向かう。受付カウンターに行き用件を伝えるとロビーでオードさんを待つ。


しばらく待っているとオードさんが来て再び訓練室に行く。まだなにかやるんだろうか?


「この間話した通り狩猟免許は交付される。とりあえずはおめでとうと言っておく」


「そうか。ありがとう 」


「だが狩人はなってからの方が大変ではある。とくに上級狩猟者が狩る魔物はあのコウモリを越えるものが普通にいる。生き残れるかは自分次第だ。


ギルドとしてもできる限り手助けをしてやりたいが中層はともかく深層ともなると道を作って維持するだけでも莫大ばくだいな人員と時間と金がかかる。基本的に深層で行方不明になっても捜索されることはない。


それを踏まえたうえでお前はもう深層に挑戦できる力は十分にあるから七ッ星の狩猟者として登録させてもらう。特権はある程度与えられるがその分要求は厳しくなると思ってくれ 」


「いきなりそんな高い等級でいいのか?」


「特例になるが仕方がない。ああ、先に狩猟者の等級制度についての説明をした方がわかりやすいな。


通常だと狩猟免許を交付されてギルドの組合員になった者は一ッ星の狩猟者から始める。星一つから三つは初級狩猟者として見なされるがこの等級だと狩り場の割り当てがあって狩猟数に制限がある。一ツ星ならこの狩り場でウサギを月10までとかな 」


それだと駆け出しの狩人はあまり稼げそうにないな。ギルドから住居とかのサポートはありそうだな。下積みはどこだってそんなものか? 流石に一ツ星からはやってられないな。


「星が増えるごとに割り当ても増えていってより稼げるようになるが同時に義務も増えていく。期限内にギルドにいくつ以上魔石をおさめろとかな。ギルド以外にも魔石や魔物の素材を買い取る商店があって大抵ギルドより買い取り金額はいい。だがそこに集中すると義務をおろそかにしたってことで懲罰ちょうばつの対象になる。最悪除名だな 」


この語り口だと除名になる人間も多少はいるんだろうな。意図的か実力不足かはわからないが。


「ちゃんと仕事をこなして義務を果たしていけば等級は上がっていく。だが期限内に等級を上げることが出来なかった場合も除名の対象になる。


特に星三から星四に上がるとき、つまり初級から中級に上がるときだな。そこの査定は結構厳しいぞ。長いこと初級でくすぶるぐらいならいっそ他の仕事に就いた方がいいからな。


まあ、ギルドとしてもそのまま上の等級に上がって欲しい人材が他の仕事に就いたりするからお互い様ってことでもあるがな 」


いつかの衛兵の人、オストさんって言ったかな、彼が話していたな。とりあえず狩人として働いて力がある程度付いたら転職するってヤツか。


「無事に中級の始めである四ツ星になれば中層の割り当てがある。こちらは割と自由に狩り場を選べるし義務もそこまできつくない。討伐依頼への強制参加とかもないことはないが多くはない。自分事でもあるしな 」


その地域の狩人なら自主的に参加するか。強制されるのは話に合った専門的な狩人とかか? 上級狩猟者も呼び出しがありそうだな。なるべく勘弁かんべんしてほしいね。他人とのからみが多いとぼろが出そうだ。


「そしてさらに等級が上がっていって上級になれば特に割り当てや制限はなくなる。義務も最小限と言ったところだ。ギルドとしても凄腕の狩猟者を抱え込んでいたいってことだがさっきも言ったように深層はギルドとしても不明な点が多い。行方不明になっても捜索は出来ないし狩猟中の補助も一切ないものと思ってくれ 」


「その代わりに待遇面がいいってことか 」


「そうだな、そう思ってくれていい。家を借りるときとかもギルドを通せばいい物件を斡旋あっせんしてくれる。魔物の情報も優先的に知ることが出来る。ギルドの書庫もある程度までなら自由に見ることができる 」


それはありがたいな、稼ぎやすくなる予感がする


「いきなり上級を与えるのはそういう背景があってのことだ。それだけの人材に初級の魔物を狩らせるわけにもいかないだろう。正直に言えば初級の割り当てをお前に与えるのがもったいない。


魔境の表層は比較すれば相当に狭い。ギルドは新人に狩り場を割り当てるのに困っているんだ。中級でも可能だがあのコウモリを単独で倒せる人材を中級からってのも具合が良くない。


中級は中級で割り振りを変えなきゃならんところが出てくる。実力のあるヤツが中層でも深層よりに狩り場をかまえるのが通例だからな。四ツ星からだと押し出されるヤツが出てくる 」


辺境にいた狩人達が初級ばかりだったのはそういう理由か。他に狩り場がなかったと言うことなのだろう。出来たばかりだから空いていたと。半ば強制的に移ってきた人間もいたのかもな。なかなかに世知辛せちがらいな。


「六ツ星でも問題はないが手紙にはなるべく高い等級をつけてやれって依頼が書いてあったんでな。そう言うわけで七ツ星から始まるってわけだ 」


なるほど。セリアのお陰でもあると、、、


いろいろ世話になりすぎて頭が上がらなくなりそうで怖いな。そこまでしなくてもそのときが来れば依頼はちゃんと受けようと思うのだけれどまだ信頼されていないのだろうか? それとももっと強くなれということか? 後者ならどれほど過酷な任務になるんだろうな、、、。


まあ、どのみち稼げるならリスクもいとわない所存しょぞんだ。自分自身を強化するためにも深層へはどのみち挑戦しなければならない。もし何かあってバレて人間の中で生活できなくなったらほとぼりが冷めるまで再び魔境生活をしなければならない。そのときは人が絶対に来ない深層の奥になるだろう。強さを求めるのは間違いじゃない。


「なるほど、ギルドの事情は良くわかった。ありがたく受ける 」


「そう言ってもらえるとこちらも助かる。それで最後に約束通り狩人の挨拶あいさつを教えておこう 」


「ああ、そういう話だったな 」


落ち着いた物言いになったが内心ではちょっとうれしかったりする。コウモリを倒した後のジスタさんとのやりとりが思い出される。


なんか映画みたいなやりとりだったな


思い出すとちょっとテンションが上がる。言葉で語らずにちょっとした仕草でやりとりするのはなかなかかっこいいんじゃないだろうか。


「実際は狩人はそう頻繁ひんぱんに挨拶を交わすなんてことはない。初めて会う狩人と狩り場ですれ違うときとかくみを作るときによく知らない狩人がいる場合とかだな。日常的にはやらないな 」


、、、ちょっとテンションが下がる。だが大蛇の討伐をしたときケイルにやっていれば挨拶が返ってきたということか。いや、あのときは狩人じゃなかったから無駄か、、、。


「まずは対面の挨拶からだ。薬指と小指を折り曲げて親指で押さえて人差し指と中指を立てる。相手に小指側の側面を向ければ完成だ 」


なるほどなるほど。自分でもやってみる。よっ、とかおっすとか言う感じかな。仰々しい感じではないな。


「改まったかたちにするととこのまま自分の方にいったん引いて元に戻す。これは自分より相当実力が上の狩人に対して敬意を込める意味合いをもつ。まあ、そこまでの狩人と会う機会はそこまでないだろうがな。すでにお前もそうとう上の方にいるしな」


「するよりもされる側の方が近いと、、、」


「実力の差を感じることもそうだが実績があるとか名前が知られていることの方が重要かもな。長いことやって積み上げがある狩人の方が尊敬されやすい。そういうのは顔に出てくるもんだ。不思議とな 」


なるほどな。若いヤツはあなどられがちと、、、


「お前も活躍して大物をギルドに納めていけば名が通るようになるさ。実力は十分なんだからよ 」


名前が売れるのは少々困るかもしれない。こっちの正体をかんがみればな、、、。だが名が売れる方が収入には繋がる気がする。将来的にジャックスをこちらで広めるときにも役立つか? バレなければ問題はないのだが、、、バレさえしなければ。


「次は感謝を伝える挨拶だな。もうジスタと一緒にやっていると思うがちゃんと理解できているとは言えないようだしな 」


バレてるな、、、バレ違いではあるが


「前にやったように拳を握ってこう水平にかまえて軽く突き出したようなかたちを作る。これでありがとうって意味になる 」


前にやったように俺も同じように拳を突き出す。


「そうだ。そうやって同じ仕草を返すことで感謝を受け取ったと伝えることになる。更に深い感謝を伝えるときは拳を完全に前に突き出す。同じかたちで返せばいいが距離が近いときは拳を合わせれば大丈夫だ 」


近かったので拳を合わせてみる。ここらへんは前世とあまり変わらない感覚だと思う。理解しにくいってことはないな。


「最後に謝罪だな。指をそろえて手のひらを広げて手の甲を相手に向けて指先は下に向ける。これは軽い謝罪をあらわす。悪かった、ぐらいだな。狩猟中にお互いが近づきすぎたときとか組を作っているときに軽い失敗をしてしまったときに使う。


本当に謝罪をしたければ街とかであったときに正式に行う。お互いに生きていればだけどな 」


いつ死ぬかわからないから軽く流して禍根かこんを残さないようにしよう。そういうものかな。


「謝罪を受けるときは同じ仕草で軽く左右に振る。気にするなって意味だな 」


これでオードさんの講義も終わるってことか。短い間だったがいろいろなことを教わった気がするな。いい経験になった。


「これで伝えるべきことはあらかた伝えたかな? すべてを教えるなんてのは無理なんであとはおまえが実際に経験の中で学んでくれ。魔境の中でしか学べないことの方が多い。まあ、そんなことは百も承知だろうがな 」


「そんなことはないさ。勉強になった 」


「普通の見習いと違いすぎるんで正直どう教えればいいのか見当も付かなかった。だが満足してくれたようで何よりだ 」


そう言うとオードさんは封筒をこちらに差し出してくる。


「こいつを持って受付にいけば手続きをしてくれる。あとはみそぎに近いモンもあるが誰もが通る道だ。がんばれよ 」


「? ああ、、、? 」


禊ってなんだろうな?


「それじゃあ、俺は別の仕事に戻る。会うことはあまりないだろうが狩人として生きるならいつか会うこともあるだろう。またな 」


「ああ、またな 」


きびすを返すとオードさんは訓練場を後にした。その背中を見送ってからロビーの受付に向かう。


別れの挨拶は教えてもらってなかったな。狩人には不要か、、、

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