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機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー  作者: 井上 斐呂


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第52話 鉄の購入 x 図書館 x 王立魔術学院

調査から帰った翌日は特に予定がない。予定がない日はだいたい王都の散策をすることになる。


だが今回は目的がある。素材としての鉄を購入できないかと思い鉄くずをあつかっている廃材屋を探そうと思う。武器を強化しなければ全力で戦うことは出来ない。


執事のジョエルさんに工業地帯の場所を聞いてみると王都の海側、港の近くにあるそうなのでそこに向かう。


鉄製の商品を買って素材にする案もあるがそれは最後の手段だ。金がかかるし使えるものをつぶすのも気が引ける。


鉄工所を探して話を聞いてみると鉄くず屋のようなものは無いと言うことだった。なんでも鉄魔術で大抵のものは修繕しゅうぜんできてしまうので鉄が廃棄されることはあまりないそうだ。


おまけに鉄魔術で成形まで行えるので切削せっさくくずもでないようだ。製鉄所から直接購入するか鉄工所に譲ってもらうしかないかもしれない。


話を聞いている鉄工所にゆずってもらえないか聞いてみたが色よい返事はもらえなかった。しかたないので製鉄所の場所を聞いてそこに行ってみる。


製鉄所で話をしてみると鉄工所におろすよりだいぶ割高でいいなら売ってもいいとのことだったので買うことにした。割高でも流石に製品を買うよりはだいぶ安い。


とりあえず20キロ購入することにした。本当は1トンほど欲しかったが亜空間がおおっぴらに使えないのでこれぐらいにしないと怪しまれる。


鉄塊てっかいを小脇に抱えて人目のない小道に入る。この地区は全体的に人通りが少ないが亜空間を使っているところを目撃されるとマズいことになる。慎重に周囲の視線や気配を探り鉄塊を亜空間にしまう。


これで良し


無事に鉄を購入することが出来た。これで武器を強化することが出来る。


次に服を買いに行くことにした。今は自作の和服と狩りで使用している服しかない。コウモリ戦で破れたところは亜空間内で修繕したがもっといい服が欲しくなった。


王都の道を行く人々はどことなくお洒落な服装をしている。魔物がいる世界だから武器を持って移動することも普通であるので狩り着でいることも普通なのだがこの際街用の服と狩り用の服もデザインがいいものに変えようと思う。


散策していた甲斐があって服屋に目星は付いている。服屋には迷わずに着くことができた。


この世界の服は古着の他はほとんどがオーダーメイドだ。既製品の服を売っているところはあまり見かけない。


値は張るが思い切ってオーダーで作ることにした。自分の魔力になじませて使うとすれば自分の体にぴったりとフィットしたものの方がいいと考える。


採寸してできあがりまでの時間を聞くと二時間ほどで完成すると言われた。


、、、速いな


それとなく話を聞いてみると布の裁断は魔術ですぐに出来るらしい。二着分で30分かからないらしい。


こんなところまで魔術が利用されるのか、、、と思うがよくよく考えてみると魔術の根本から考えるならむしろ産業に使うことの方が有用にも思える。戦闘に使う方が異端なのかもしれない。魔物がいるからそんなことはないか。


二時間ほど外をぶらぶらして時間を潰しできあがった服を受け取る。


その後、家に戻ると購入した鉄を利用して武器の強化に取り組む。元々あった“雷閃ライセン”をいったん素材に分解する。利用できる部分は後で再利用する。


鉄の塊から不純物を抜き、鉄粒子を並べて刀の形にくみ上げていく。刃の部分を外して研ぎ直すなんてことはしないのでつかつばの部分と刀身を一体のものとして設計する。


形ができあがると鉄の結晶の組成を変化させて硬軟こうなん互層ごそうを作り出す。これで堅くて粘りのある構造が出来た。


出来た刃の表面に“雷閃”から取り出した魔鉄をコーティングして粒子を堅い結晶の組成にする。柄には同じく取り出したケラチン質でコーティングして握りの感触を柔らかくする。そのうえに布を紐状にしたものを巻いていき刀が完成する。


めいはどうしようか、、、


今は一本しか使わないから識別のための名前は必要ないといえば必要ないのだがせっかくだから銘を打っておこう。


鉄をメインの素材にして雷魔術を主体に使うから“鉄鋼刀テッコウトウ雷豪丸ライゴウマル”とでもしておこうか。


手甲と脚甲も鉄を主体に作り直して雷魔術を使用しやすくすると同時に防御力を上げておこう。


まだまだ鉄に余裕があるので胸当ての強化と頭部を守る防具を作成する。


今はこのぐらいでいいか。もう一つ別にやりたいことがある


地中の中で高圧高濃度の魔力にさらされると鉄は魔力を帯びて魔鉄になるのだという。ならば亜空間の中で鉄に魔力を供給し続ければ普通の鉄も魔鉄になるのではないか?


似たようなことはすでにやっている。火熊にとどめを刺した魔石爆弾、、、俺もとどめを刺されそうになったが。あれを作るときに亜空間内で魔力を込めまくったのが相当昔に思えてくるな。


亜空間内ではこちらが任意に物質を加工できるが勝手に物質の方が変化することはない。どれだけ高圧の魔力を掛けようが崩壊することはないので掛けれるだけ掛けて放置していればやがて魔鉄になっているだろうという計算だ。


魔石爆弾を早めに試したのは僥倖ぎょうこうだったかもしれない。今の魔力量であれを試していたら暴発させていたかもしれなかった。あれは当分の間、封印しておくべきだろう。


ということでとりあえず一日試してみる。魔力消費としては一度圧を掛けてしまえばそれ以上消費することはない。掛けられる最大の圧力はどうやらコアの残存魔力量に依存するようだ。


とりあえず様子見で50%ぐらいの圧力にしておく。明日が楽しみではある。


その日は暇な時間はすべてトレーニングに当てて一日を終えた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日は本屋に行こうと思う。そう思ってジョエルさんに聞いてみたら図書館を勧められた。


あるんだな、図書館


一応場所は聞いておいたので行ってみると石造りのかなり立派な建物だった。入って本を読むだけなら誰でもかまわないそうだ。中に入ってみるとだだっ広い空間に所狭しと本棚が並べられていてぎっしりと本が詰まっている。


前世でもこれほどの規模の図書館に行ったことはない。流石王都の図書館と言ったところだ。


だが建物内を一通り見るだけで本は読まないようにする。一度視るだけでコアが記憶してしまうので情報を盗むような気がしてしまう。あまり時間を掛けずに退出して聞いておいた本屋に向かおう。


図書館を出て少し歩くと同じような石造りの建物が見える。図書館よりも更に立派な建物で彫像などで装飾されている。


全容は把握できないが敷地は図書館の3倍ぐらいあるかもしれない。石材の古びた感じは歴史を感じさせる。


門柱に仰々《ぎょうぎょう》しくかかげられた金属の表札ひょうさつを読むとどうやらここがオードさんの言っていた王立魔術学院らしい。


なんてこった。自分からここに来てしまうとは


周りをうかがうと平日の授業中だからだろうか。人っ子一人歩いていないのでほっとしてその場を後にする。万が一にでも例の賢者とやらに遭遇そうぐうしてしまってはことだ。


何でもない通りすがりにしか過ぎないが人よりも魔力が多いし黒髪黒目を魔力変異と勘違いされるかもしれない。自身に相手の興味を引きそうな要素はある。不自然にならない程度に素早くその場を後にした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(別視点)


魔術学院のガラス張りの廊下を歩いていると大きめの魔力を感じふと外を見てみる。


視界の中に黒いものが映り込みそれに視線を合わせて注視すると人であるようだ。


どうやらその黒髪の人物から大きな魔力を感じているらしい。他に外を出歩いている人物はいない。その事実から確定的だ。


(黒髪は珍しいわね。魔力変異かな? 魔力も大きいし )


しばらく見ているとその人物は用事でも思い出したのかそそくさと歩いて行ってしまう。


自分も用があって学院長室に向かっていることを思い出すと止めた足を再び動かして移動していく。


やがて学院長室にたどり着くと重厚な扉をノックもせずに押し開ける。


「入るわよ 」


入ってから入ると宣言をした闖入者ちんにゅうしゃに部屋のぬしは苦言をていする。


「入ってから言わないでくれるかな? いや、その前にノックをしてほしいな 」


「いいじゃない。兄妹なんだし 」


「こちらは学院長なんだけど、、、まあ、それはいいか 」


何度となく繰り返したやり取りに半ばあきらめ気味に区切りをつけると本題に入ろうとする。


「頼んでおいた資料はできたかな? 」


「そんなことより聞いてよ。さっき外に黒髪で魔力の大きい人がいたんだけど狩人かな? 王都じゃ強い狩人って珍しいよね。黒髪は魔力変異かな。どう思う? 」


「、、、、、」


話をぶった切られて兄は絶句するがこれもいつものことかと思い直ししばらく雑談に乗ることにした。


「黒髪なら獣人かな? 」


「獣人ではなかったと思うけどね 」


「なら魔力変異かな。魔力が多いならあり得るとは思うけど 」


「そうかしら? なにか違和感があるのよね 」


「、、、どんな答えならお気に召すのかな? 外国、とくに別の大陸の人間なら十分にあり得ると思うけどね 」


「ああ~、それかも。外国人ならあるかもね。この国の狩人なら王都のこの辺りには来ないし 」


「それは偏見な気がするけど、、、。なんでそんなに気になったんだい? 」


「勘よっ。なんだかいつか会うって予感がするの 」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


本屋に来ると結構な本の量に少々驚かされた。


ジョエルさん、いい本屋を知っているな。さすがセリアの執事と言ったところか


値段は田舎であるリルゴの町よりだいぶ安いような気がする。物流費の問題か買う人間の母数の問題か、、、。


まあ、安いと言っても別に安いわけではない。前世でも電子書籍は安かったが紙の本は高かった。こちらの生活費を考えるとまだまだ趣味の世界のものといった感じだ。


欲しい本はいろいろある。地理書とか歴史書、魔術関係の教本、この世界の文明の水準を知るために科学の本なんかもいい。だがそれらの本は結構いい値段がする。


コウモリの討伐報酬が期待できると言っても今は無職だからな。取らぬ狸の皮算用であれこれ消費するのは気が引ける。鉄は今後の収入に繋がるから良しとする。


いろいろ考えて今回は娯楽小説を買おうと思う。文化や風俗を知るにはこういうのが案外役に立つものだろう。値段も2000エスクぐらいで手頃と言っていい。紙の質はあまり良くはないが。


店員に年齢を伝えて俺が読んでもおかしくない内容の本をいくつか見繕みつくろってもらってそれを購入する。


帰宅してからそのうちの一冊を読んでみる。


、、、なるほど。ラブロマンスありの騎士の英雄譚えいゆうたんか。翻訳に若干怪しい部分があるが性描写は結構過激だ。ちょっぴりというかだいぶエッチだ。


これは亜空間に保管しなければメイドさんに見つかるとやっかいだろう。挿絵も少ないし文章をしっかり読まなければわからないと思うが案外こう言うのは適当に開いて読んだ場所が該当箇所になることが多いものだ。


いい加減な管理は良くない。自分一人の空間が確約された場所でこっそりと読むのがいいだろう。同年代の文化を知ることは悪いことじゃない。そうだ、俺は悪くない。


本を読んでいる間に鉄の魔鉄化実験を始めて一日が経つので確認をしてみる。どうやらわずかに魔鉄化が進んでいるようだ。もともと鹿から得た鉄は魔鉄ではあったがそれの魔鉄としての質も上がっている。


この方法で問題はないようだ


唯一問題があるとすれば圧を掛けたまま亜空間から取り出すとおそらく魔力の暴発を引き起こすということか。コアの本能的に取り出せないだろうけど戦闘になる前に使える状態にしなければならないことには注意を払うべきだろう。


後は効率化か、、、


残りの鉄を二つに分けて違う環境に置く。一つは50%で圧を掛けたパターン、もう一つは100%で圧を掛けたパターンだ。この二つを比べて圧を掛ければ掛けるほど魔鉄化が進むのかを確認したい。


その後は日課のトレーニングを行うなどして一日を終えた。

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