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機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー  作者: 井上 斐呂


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300/333

第300話 新生活 x タルタイン

高速の上から見る街並みは高層建築が目立っていて近代的な都市に見える。人口は三分の二ほどだがプラニスよりも発展してそうだ。


どんな生活になるかな…


頭の中に青写真は描いているが実際に何が起こるのかは未知数だ。期待と不安が入り交じる妙な興奮が体を震わせているのを感じつつトライクを走らせていった。


タルタインの市街地に設けられたインターを降りて最初に向かうのは狩猟ギルドだ。まずは住む場所を探さなければならない。


エンジュの案内で迷わず辿り着くと駐車場にトライクを駐めて入り口へと歩いていく。


外観は歴史を感じさせる重厚なものだ。ここに来るまでの街並みはコンクリート製の近代的なビルが目に付いたがその中で異彩を放っていると言っていいだろう。


位置的には郊外の魔境に近い北側にある。都市の拡張と共に何回か移設されているそうだがデザインは変えることなく建設当時の、七百年ぐらい前のものと変わっていないと言う。


増築はしていて当時より大きくなってはいるが増築部も同じ建材を使い、構造とデザインを統一している。何処を増築したのかぱっと見では見分けがつかない。


元からある部分は当時の建材を魔術で修繕していてそのまま使い続けられているので疑ってみれば若干古びている様にも見えなくもないが、単に気のせいかも知れない。


入り口の部分は確実に当時からのものだという。そんな歴史ある入り口を潜ると自分も歴史の仲間入りをしたような気分だ。


その先、内装も飾り気がなく古びた印象を受ける。硬い石の床を踏みながら受付の前へと出た。この時間は俺の他に誰もいなかったのですぐに対応してくれる。


会員証を提示して用件を伝えると別の窓口に案内されカウンターテーブルを挟んで職員と向かい合って座ることとなる。


応対してくれたのは若い女性だったがこのとき俺はレイゼルトで俺の担当になっていたキリアムのことを思い出していた。


今頃なにをしているんだろうな…


この女性が担当になることはないんだがこうして狩人になりたての頃を再現したようなシチュエーションになるとどうしても頭にちらついてしまう。


そんな俺の思いなどつゆ知らず淡々と物事は進む。


俺が住居に希望する条件を伝えるといくつか見繕ってくれて間取りが記載された紙を俺の前に提示してくる。


俺の希望はデカいガレージがついていている物件だ。いろいろ大物を作り出しいてもおかしくないような家がいい。家というよりかは工場こうばに近いのかも知れない。


できれば周りに他の家があまりないほうがいいのだがこれ程の都市でそれは望み薄のように思われた。


だが、ある一つの物件を見た時、全身に電流が流れたかのようにびびっと来た。


こっ、これだ…


まるで俺が図面を引いたんじゃないかと思えるぐらい思い描いていたものとそっくりな物件があった。


一階が全てガレージで締められていて二階が居住スペースになっている郊外型の一軒家だ。周りとの間隔もそれなりに空いているという。


なんでも昔、とある上級狩人が建てた家だという。同じようなことを考えていた狩人がいたと言うことだ。なんだか親近感が湧いてくる。


家賃はひと月あたり二十三万エスクになる。タルタインの相場からすれば安い部類だそうだが、それは立地を原因としているという。


都市の中心部からは離れていてそこまで買い物とかに便利ではない。近くに駅とかもない。狩人なら片道三十分、小走りで移動するなんて朝飯前ではあるが一般の人にはキツいし面倒だし時間もないと言うことだろう。


他の狩人にしてもこの家は広すぎて持て余してしまうので人気は今ひとつなのだとか。


「ここにするとしよう 」


「内見などはよろしいのでしょうか? 」


「しなくても大丈夫だ。大抵のことは俺の魔術で解決出来る 」


物件を決定したら契約書を作成して手続きが終わった。これを以てここでやることは大体終わった。


借家の鍵を預かるとすぐにそこへ行く。掃除や家具の設置を行い、ちゃんと住めるように整えなければならない。夜になる前に済ませてさっさと新生活のスタートを切りたいのだ。


外観は結構モダンな感じで赤茶けた色をした瓦屋根の家だった。ぱっと見の特徴としてはなんと言っても一階正面を埋め尽くすシャッターだろう。


家の南側、横に長く三つのシャッターが並んで広がっている。一見するとここを開けて家に入るしかないように見えるが家の東側に回るとドアがついている。一応正式な玄関口はここなのだろう。


今回はトライクを仕舞うので三面あるうちの一番東側を開ける。


中はシャッターに添って壁で仕切られていて、その壁に人が通るため間口が設けられている。強度を出すために壁を設けているのだろう。


仕切り壁の反対側、東側には二階へと続く階段があった。階段を降りた先に外側から見た玄関ドアが設置されている。玄関を開けて入ったらすぐに二階へ行けるような設計だ。


今見ている区画は階段がある分、他の二つの区画より狭くなってはいるが幅も奥行きも申し分なく、トライクを余裕で格納出来る程度には広い。


トライクに乗り込むと旋回させてバックでガレージの中へ進んでいく。天井は高く車高を一番高くしてもまだまだ余裕があった。


車体を中に完全に納めるとトライクから降りて周りの隙具合を確認する。中央寄りの壁に寄せて駐めたが横は余裕で行き来できるスペースがある。前も後ろも余裕だ。


これだけの空間があれば相当な大物を作り出しても怪しまれない……こともないかも知れないが理由付けぐらいはできるだろう。


二階に上がって居住スペースを確認するとそれなりに長いこと使われていなかったのかホコリが少し積もっていて若干かび臭い。ガレージも確かに汚れていたがそこはあまり気にならなかった。


生活する場所ともなるとこう言ったところが気になってしょうがないな…


先ずは家中の窓を開けて空気を入れ換える。窓枠は丈夫なアルミ製だ。特に劣化もガタも見られない。断熱性は低いが冷暖房を使わなくていい俺達には気にしなくていい部分だ。


ちょうどいい、掃き掃除も今やってしまおう…


空術で気流を発生させると空気の交換を促進させる。次に家中に極小竜巻を発生させてホコリや塵を集めると亜空間に引き込んで分解処分する。


これで大まかにはキレイになった。


更に細かい汚れを落とすべく水を使った掃除に取りかかる。水を操作して壁や床などに貼り付けさせると衝撃魔術で振動させて汚れを浮かせる。


そうして家の隅々をきれいにしたら今度は家具の配置だ。


窓を閉たら最初はカーテンを付ける。もともとレイゼルトで使っていたものだけでは足りないが亜空間の中には在庫が眠っている。工作用の素材としての布は大量に確保してあるのだ。


目測で布をちょうどいい大きさに加工してカーテンとして機能させるためフックを取り付けられるように穴を付ける。


完成したものを取り付けて外から見えないようにするといよいよ家具を配置していく。


寝室に亜空間から取りだしたベッドを置くとすぐにジュジュがその上にダイブしてゴロニャンと身をくねらせる。


大きくてもやはり猫だな…


前の家で使っていたままに亜空間へと仕舞い込んで、そのままの形で取り出したのでにおいとかは残っているはずだ。ふんふんと鼻を鳴らしてそんな久々のにおいと感触を確かめつつ新たなにおいを付けていった。


その間に、他の家具を設置していく。


寝室には物書き用の机とかを前と似た配置で置いていき、別の部屋にいくと俺お手製の筋トレマシーン達を置いた。


作り出してから改良を重ねていき今では魔鉄を使ったものに変化している。体の魔力強化をさせずにおもりとして使っている魔鉄だけに魔力を流しながら筋トレを行うことで、魔力コントロールを鍛えると共に筋肉に物理的負荷を与えるのが目的だ。


前の家ではスペースが足りなかったから巨大化させるのは難しかったがこの家はもっと広い。さすがにジムとまではいかないがもっと大がかりで専門的なマシーンを作ってみるのもいいんじゃないだろうか。


家が広がった分、夢も膨らむなぁ


もっと早くこうしていれば良かったのではないかと思ってしまう。レイゼルトに自分の家を持つという選択肢もあったような気がしてきた。実際それが出来るだけの貯蓄はあった。


しかし、あのときはどうせ帝国にいくなら賃貸でいいやと思っていたし、金を貯めなければならない目標はある。この世界にジャックスを、ロボット競技を広めるという目標が……十分に最適解を選べていたはずだ。あの時の俺は…


いや、しかし…こうも考えられるな

とっかかりすら見えない目標の為にせこせこと金を貯めるのは無駄だとも…


それより今の自分の能力を磨くことに金を使ってより多く稼げる様に伸ばしていった方が建設的じゃないか? 今は仕事に打ち込むべきだ。金を貯めるのは目標を実現するための道筋が見えてきてからでいいんじゃないだろうか?


ふむ、、難問だな、、、


どちらの考え方も間違っていない。どちらを選んだとしても最終的には目標にたどり着けるんだろう。


ただ、現状、どちらかに偏るのも危険なような気がする。バランスはとても重要だ。何が起こるのかわからないのだから、この世界では。


投資でもするかな…


現金を持っておくことは重要だが余らせておくのも勿体ない。とりあえず半分ほどを株や債権などに換えておくのがいいだろう。


一応の結論が出ると次はキッチンがある部屋を整えにいく。ダイニングキッチンと言った間取りだ。


テーブルと椅子を並べてダイニング部分はすぐに終わる。


問題はキッチンだな…


アイランド型のキッチンだった。ダイニングに面した島にシンクとガスコンロがついている。シンク下の扉を開けるとガスボンベが設置されていた。ここからコンロにガスが供給される仕組みになっているらしい。


壁にはつり棚とかがついていて収納スペースは多い。


作業することを考えると、どこに何を置くのかが重要になってくる。それ次第で作業効率が格段に変わってしまう。


備え付けの棚とかガス台の位置を確認しつつ調理を行うときの動きをイメージしていき、それに従って調理器具や食器を亜空間から出して並べていった。


最後はそれように大きく空間を空けているであろう場所へと冷蔵庫を置く。コンセントを差し込めば生活するに当たって一通りのことは終わる。


プラグを掴み差し込もうと思ったがそこで躊躇が生まれて手が止まる。


いや、まて… こんなすぐに電力の消費が上がったらおかしくないか? 入居して初日から、それもたったの数時間で冷蔵庫を持ち込んでいるのは変だろう。


トライクに積み込めるはずもないし、当然だが帝国で俺が購入した形跡は全くないからな。


しばらく冷蔵庫は使わない方がいいだろう。電力消費は誤魔化しが効きにくそうだ。


家具とかも見られたら困るが無理矢理侵入してくるなんてことはしてこないはずだ。そこまで疑われているとは思えない。見られたところで俺は鉄術も木術も使えるから言い訳くらいは出来る。


となると冷蔵庫は仕舞って置いた方がいいか…


冷蔵庫を亜空間に仕舞うとそこだけ不自然にぽっかりと空いたようになる。見栄えはしない。生活感が一気になくなったような印象を受けた。だが、それも仕方がないこと…


気を取り直して新居祝いに夕食を豪勢なものにしたいところだ。広い庭がある一軒家なので外観を見た時からBBQをするようなイメージが頭にあった。

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