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第82話 オルカ プロポーズする?

いきなり泣き出したドロシーさん。

ほんとにいきなりだったので慌ててふためく私。

聞けば、姿形は似てないが同じ名前の別人と勘違いしてしまったと。

そんな事もあるよ、誰だって勘違いくらいするさ。

名前だけで勘違いは……普通はしないか。

でもドロシーさんなら勘違いしちゃうかも?な気はする。

なぜか分からないけれどそんな気がした。


でも、ちょっとだけ引っ掛かるものはある。

んー、まさかまさかの地球人、それも日本人だって可能性も無きにしも非ず。

まぁ可能性としては限りなく低いけどね。

でも無いとも言い切れない。

だって今現在私がこうしてこの世界に居るんだもの。

そうゆう訳で私はドロシーさんとその知人と言うのが元の世界の住人かも知れないと言う可能性は捨て切れないでいた。


「ところで院長先生は自室? それとも執務室?」


ドロシーさんが少し落ち着いたところでベルさんが聞いている。


「どうでしょうか、時間的には微妙かなー。 私も今から執務室で仕事だし一緒に行きますか。」


そう言って私たちを先導して歩き出すドロシーさん。


「ドロシー頑張ってるねー。子供たちの面倒みて先生のお手伝いして、たまに冒険者の仕事もしてるんでしょ? 大変だねー。」

「ちょっと頑張りすぎじゃない? 少しは手抜いたっていいんだよ?」

「そ、たまには楽するのもイイ。」


みんなが口々に言ってるけど肝心のドロシーさんは


「んーでも、先生には育てて貰った恩があるし。」


「それ言ったら私たちみんな一緒だよ。」

「そうよ、ここの孤児院に居る子はみんな院長先生の子供だし。」


「私が出来る事なんて高が知れてるし、受けた恩は返せる時に返さないとね。」


ドロシーさんは真剣な表情で答える。


「ドロシー難しく考えすぎ。そんな肩肘張ってたら疲れちゃうよ?」

「もっと楽に。」


ベルさんとカーリーさんがそう言うもドロシーさんは何も言わず笑っただけだった。


「リズさんたちやカーリーさんたちがみんなに内緒でこっそり院長先生にお金渡してたり、子供たちにって狩って来た動物のお肉とか渡してたりとかしてるの私知ってるよ。 ううん、カーリーさんたちだけじゃなくて他にも同じようにしてくれる人も居るし。」


ドロシーさんがペコリと頭を下げる。


「お金はー、あ あれは寄付よ寄付。」

「そうそう、寄付に違いない。」

「お肉はぁ、ほら、獲り過ぎちゃったりしたら食べきれないしー、腐らせるのも勿体無いしー。」


リズさんたち皆嘘が下手だねー。

めちゃめちゃシドロモドロじゃない。

しかも顔ちょっと赤いし。

眼も泳いでるし。

みんなイイ人過ぎて笑っちゃいそう。

私はニコニコしながらその様子を眺めている。


「本当に有難う御座います。 おかげで何とかなってます。」


そう言ってドロシーさんはまた頭を下げる。


「あー、もう。そんなのいいから。 ほら、顔を上げて。」

「「そうそう、この孤児院出身者なら当たり前だから。」」


「それを当たり前って言えるリズさんたちは偉いと思いますよ。普通は中々言えませんから。」


うん、その通りだね。

だから今回の事にしたってアルマさんとアイザックさんの結婚のお披露目をここですれば子供たちもお腹いっぱいごはんが食べられるって考えた訳だしね。

どこまでお人好しなんだか。


私が元居た世界と違いこっちの世界はとても厳しい。

一度街を出れば魔獣が居て襲われたりする。

最悪命を落とす事だって有り得る。

魔獣だけとは限らない、盗賊も居る。

商人は街から街へと行商の旅に出る時は必ず護衛を付ける。

冒険者を護衛に付ければそれ相応にお金が掛かるが命には代えられない。

命あっての物種だしね。

農民たちだって農作業してる時に魔物も襲われる事もあるし、村ごと盗賊になんて話もあるという。

つまり何が言いたいかと言うと、みな今日を生きるのに必死なのだ。

自分の事で手いっぱいで他人の事を構ってる暇などない。

ましてや他人に施しを与えるなんてとてもとても。

リズさんたちのように自分の食い扶持から他人に分け与えるなんてとても珍しいのだ。

よほど裕福な人でないと寄付などと言うものはしない。

だからリズさんたちのようなこの孤児院出身の子たちはみな偉いなーと思う。

そうゆう優しい心根を持つリズさんたちだからこそ、私も何か協力出来ないかと思ってお肉の提供を申し出たのだから。


「もー、ドロシーは相変わらず固いなー。そこはニッコリ笑って『ありがとう』でいいのに。」

「そうそう、それにドロシーだって薬草採取とかで稼いだお金孤児院に入れてるじゃん。一緒だよ一緒。」

「ドロシーも偉い。」

「そうゆう事。 ドロシーもあんま難しく考えすぎないようにして、頼るべき所は頼る! 私たちや先生方に頼ったらいいんだからね!」


メロディちゃん、リズさん、カーリーさん、ベルさんが言う。


「ところで、さっきから気になってたんですが、アルマさんの姿が見えないんですが何かあったんですか?」


やや心配そうな様子で聞いてくるドロシーさん。


「うん、アルマの彼氏知ってるでしょ? その彼氏と結婚するんで院長先生にその報告と、ここでお披露目したいからその許可を貰いに来たの。」


ベルさんが代表してそう説明する。


「ええええぇぇぇっ! そうなんですか! アルマさん良かったですねー。」


女の子ならこうゆう恋バナは好きだもんね。

ドロシーさんも目をキラキラさせている。


「アルマさんの結婚の話は分かりました。 でもそれだったら尚更アルマさん本人から報告するのが筋だと思うんですけど……。」


「あー、それね。実はアルマの彼氏がちょっと怪我しちゃってね。 あっ、怪我は大丈夫なんだよ、もう治ってるから。 ただ、大事をとって暫く休んでるだけ。アルマは看病でその付き添いね。」


ベルさんが例の蟲騒動でアイザックさんが怪我した経緯をボカしにボカして説明している。

昨日のアレは他言無用がいっぱいだから。


「昨日は大変だった。」


カーリーさんが遠い目をしながら疲れたように言った。


「でしたねー。」


メロディちゃんも首を上下に振りながら「うんうん」と頷いている。


「でも、ザックのプロポーズでみんなが湧いた。」

「ぷくく、公開プロポーズでアルマ顔真っ赤だった。」


ベルさんもカーリーさんも思い出し笑いしてるし。

まぁ二人とも顔真っ赤にして照れちゃって初々しいったらありゃしない。


「何それっ!公開プロポーズ?! うわー、それ見たかったぁー。」


うおぉっと、ドロシーさんの食いつきがすごいな。


「で、で、で、ザックさんは何て言ってプロポーズしたんですか?」


興味津々ですか、そうですか。

カーリーさんがドロシーさんの前まで歩いていって真剣な表情で


「アルマ、俺と結婚してくれ!」


アイザックさんの真似をしてる。


「うひゃーっ、これは照れる!」


ドロシーさん変な声出してくねくねと悶えてるよ。

面白いものを見ちゃった。

なんかちょっとルカっぽいのがまた笑える。


「なんでアンタが照れてるのよ。」


リズさんがツッコミを入れる。

けれどドロシーさんは


「えーっ、だってこんなの言われたら照れちゃいますよー。」


乙女の顔で真っ赤になりながらモジモジしてる。


「だったら早く男掴まえなきゃ。」

「そうだそうだ。」


と、ベルさん、カーリーさん。

するとメロディちゃんが悪い顔をして私の方を見ながら


「じゃあさ、オルカさんがそれ言ってあげたら?」


「「はいっ?」」


私とドロシーさんの声が重なる。

「結婚してくれ」って私がドロシーさんに言うの?

別にいいけど……さ。

その面白い物でも見るような目はヤメて欲しいかな。


「ほれっ。 ほれっ。」


これっ、メロディちゃん。

その手の平を上に向けながらクイックイッとするのヤメなさいってば。

ドロシーさんも期待に満ち満ちた目で見ないの。


「はぁ~。もう、しょーがないなぁ。」

「1回しか言わないからね。」


「うん。 ワクワク♪」


ドロシーさん期待し過ぎ!

ほんとにもー。

けど、ヤバイわー。 これマジで照れる。

前世でルカにプロポーズした時以来の恥ずかしさだわ。

自分の顔が熱いのが分かる。

これ後で絶対に茶々入れられるヤツだ。

メロディちゃんやリズさんたちの方を見るとみんな興味津々って感じで期待に満ち満ちた目で合図してくる。


分かったわよ。

分かりました、言えば良いんでしょ言えば。

私は恥ずかしくて逃げ出したくなる気持ちを奮い立たせてゆっくりとドロシーさんの方へ歩いて近づき、真っ直ぐに見つめながら


「ドロシー、私と結婚して……みる?」



……。




………………。





「………………はい。 よろしくお願いします。」


ドロシーさんが真っ赤な顔して俯きながら返事をする。


「「「「おめでとーっ!」」」」


「いやいや、違うから。」


「不束者ですが末永くお願いします。」


「ドロシーさんまでっ?!」


ちょっと待ってよ。

なんでこーなるの? 誰か教えてよーっ!

リズさんたちは腹を抱えて笑いこけてるし。

ちょっとー、そこ笑いすぎですー。


「わたし…別に……いいです よ?」


いや、可愛らしく小動物みたいにちょこんと小首を傾げられて「いいですよ」って言われても。

ドロシーさん可愛らしいから別にイヤではないんだけど……って、そうじゃなくて。

私たち今日会ったばっかりの初対面だよ?

なのに何でそうなるの?

そこな可憐な娘さん、よーく考えてから決めないとダメよ。


「ドロシーもああ言ってるんだからオルカさんも覚悟を決めろーっ!」

「そうだー、覚悟を見せろーっ!」


貴女たち完全に面白がってるでしょ。

ドロシーさんもそんなウルウルした目で見つめないの。

この子マジで惚れっぽいのね、そんなとこもルカに似てるってどうゆう事?


「あー、もう。分かった! でも最初は友達からね。異論は一切認めません、いいですね!」


なんなのこの茶番劇。

なんかすっごい疲れたんですけど……。


「ところで、オルカさんご趣味は?」


はい?

まだ続ける?

ええっと……私どうすりゃいいのよ。

リズさんの方を見ると両手を上に向けて外国の人が良くやるような「やれやれ」のポーズをして笑っている。

リズさん無言の「私は知らないからよきに計らえ」ね。

そーですか、よーく分かりました。

後で覚えてなさいよ。

ジト目でリズさんを軽くひと睨みしておく。


「あ あのね、ドロシーさん。そうゆのも含めて今度ゆっくり話しましょ、ね。」


「ドロシー、仕事は? それと院長先生にも話したいし。」


そう言って今までの流れをぶった切ったベルさん偉い。

少々強引だったけどどうにか軌道修正して本来の目的に向かう事に成功した。

そういや私何のために付いて来たんだっけ?

確かカーリーさんに言われて強制的に連れて来られたんだよね。

むむむ、すると全ての元凶はカーリーさんじゃないの!

当のカーリーさんは……肩を震わせてまだ笑ってるし!

もーっ!


「カーリーさん、メッ!だからね。」


一応怒ってはみたけれど


「そんな可愛く怒られてもなー。」

「だねー」

「怒ったオルちゃんもイイ!」


ダメだこの人たち全然懲りてないよ。


「怒ったオルカさんも素敵♪」


ドロシーさん貴女まで……。


なんかもうどうでも良くなってきた。

はー、帰りたい。








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