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第29話 F? G? って、胸の話ではないからね

マチルダさんに案内されて表のカウンターの窓口まで移動。

マチルダさんさんはもう1人の女性職員に私の冒険者登録を指示していた。


「オルカさん、こちらに。」


マチルダさんに呼ばれてカウンターの所に行く。

リズさん、メロディちゃんとくーちゃんは私の側でガッチリとボディガードしてくれている。

ぐるるる。

くーちゃんが近寄って来ようとする冒険者たちに対して軽く威嚇していた。


「くーちゃん、噛んじゃダメよ。人間は脆いから噛んだら簡単に怪我しちゃうのよ。」


一瞬で場の空気が凍り付いた。

あらら、くーちゃんと念話してたつもりが声に出ちゃってたみたいね。


「ヤベェ。」

「オイオイ、そんなのに噛まれたら死じまうだろうが。」

「ヤベェ。ヤバすぎる。」

「ヤベェ。女王様♪」


強面の冒険者たちがドン引きしているし、目の前の女性職員さんは「ひっ!」って顔を引き攣らせている。

一部キラキラした目でこっちを見てる変なのが居たのは見なかった事にしよう。


「失敗失敗。 うふ。」


笑って誤魔化そう。 うん、そうしよう。

私はくるりと回って可愛らしく笑ってみた。


……うわー すっごい引かれてる。


「あの~ 登録され ますか?」


あ、はい。 勿論登録しますよー。

まずは市民カードを出して針で指先をちょこんと刺して血を一滴。


「ちょっとチクッとしますよー。」


血にはその人固有の魔力が宿っている為カードの魔力と血の魔力が一致しないと登録その物が出来ない仕様で偽造も他人のカードを使う事も叶わないのですって。

魔法と言うものがある世界特有の強固なセキュリティと言えるわね。

ここで従魔の魔力も登録しておくと冒険者の種別が自動でテイマーとして登録される。

これでどこへ行っても面倒も煩わしさもなく街の出入りが出来るようになる。

じゃあ剣士や魔法使いはどうするのかと言うと、紙に書いて提出すると職員が魔道具でカードに記録するという仕組みなのだそう。

市民カードは冒険者カードでもある。

市民カードは名前と年齢と出身国が表示されて、冒険者や商業・工業などのギルドに所属していると市民カードに一緒に表示されるようになる。

現代で言うなら超多機能で偽造不可能な免許証のような物ね。


そしてそして私も冒険者登録が出来た!

これで私も冒険者を名乗ってもいいのよね。

やったね。


「「オルカさん、おめでとう!」」


「二人とも、ありがとう。」


「では、説明を致しますが聞かれますか? 大抵の方は面倒くさいのがイヤでお聞きにはならないのですが。」


職員さんが聞いて来たので私は


「もちろん聞きます、お願いします。」


と、答える。

当たり前よね、何でもそうだけど最初が肝心。

説明があるなら聞くに決まってるじゃない、ねー。

説明を聞かない人に限って後になって都合が悪くなるとそんなの聞いてないとか言い出すのよね、バカじゃないの?

最初に聞かなかった自分が悪いんじゃない。

処置なしよ。

そう言うと職員さんは嬉しそうに


「ですよね。 では、ご説明致しますね。」


久しぶりに聞いてくれる人が現れたわと張り切っている。


「冒険者にはランクと言う物がありまして……」


要約するとこう言う事みたい。

冒険者にはA~Gまでのランクがあって、Aが最上位でGが登録したての駆け出し初心者。

Aより上、Sランクと言うのもあるけれどそれは余程の功績、例えば国を救ったとか伝説の魔物を討伐したとかでないとなれないらしい。

過去に数人がなっただけで現在はこの国にはSランク冒険者は居ないとの事。

冒険者は依頼をこなす事でランクを上げていく。

Gランクは年齢に関係なく薬草の採取や街の雑役依頼しかする事が出来ない。

これは初心者の命を守る為という意味合いが強い。

Fランクは成人していれば討伐依頼も受ける事が出来るが未成年の場合は討伐依頼は受ける事が出来ない。

しかし護衛任務には就く事が出来るので商隊などに付いてゆく依頼は大丈夫。

ただし、任務中に魔物に襲われた場合はその限りでなく応戦しての討伐は問題なしとされる。

まぁ、そうよね。そうじゃなかったら死んじゃうもんね。

Eランクからは年齢関係なく討伐依頼も受ける事が出来るようになる。

なるほどね、じゃあ私はGランク……


あれ?

私の冒険者ランクFになってるよ? なんで?

最初はGランクからってさっき説明受けたばっかりなんだけど。


「それについては私から説明するわね。」


マチルダさんから受けた説明によると、Eランクの冒険者2人で手こずる魔物の群れを1人で簡単に倒せる冒険者が、いくら初心者とは言えGランクでいい訳がない。

こうゆう強い冒険者は歓迎だからギルマス権限により最初からFランクにしたと。

Fランクは討伐依頼はまだ受けられないが力のある冒険者だからすぐにEランクに上がれるだろう。

まぁそう言う事らしい。


私はそのまま窓口の職員さんに買い取りをお願いする。

森の調査に出向いていたリズさんたちが途中説明をしてくれたのと、マチルダさんの指示もありスムーズに話は進んだ。

ただ量が量だけに窓口では無理なのでギルド併設の解体施設の方へ行く事になった。

マチルダさんに先導されて着いた解体施設はまんま体育館のような場所で、そこには解体専門の職員さんがいた。

マチルダさんが行くと軽く会釈して「珍しいですな。」などと話しているのが聞こえた。

まぁそうだよね、窓口の職員が魔物の解体場所になんか普通来る訳ないか。


「買い取り依頼です、今回は大量にありますので直接こちらに来て頂きました。」

「オルカさん、早速ですが出して貰ってもいいですか?」


マチルダさんに促されて私は

あ、はい。 これなんですけど……。


「よっ と。」


ボスと思われる一際大きいのを筆頭に狼の死骸が全部で19体。


「「……うわ。」」

「こりゃまた沢山。 嬢ちゃん随分と容量の大きなアイテムBOX持ちなんだな。」

「それにしてもまたエライ綺麗な切り口だな。 それに鮮度もいい。 もしかして時間停止か?」


「あはは、そこんとこは秘密です。」


「だよな、普通の冒険者は手の内は晒さないもんだしな。 けど譲ちゃん気をつけな。 世の中には変なのもいるから、有用なスキルは出来るだけ知られないようにしとけよ。」


はい、そうします。

って言うかもう既にやらかしてる感あるんですけどね。

リズさんとメロディちゃんがジト目でこっち見てるよ。

なんだろなー 私よく分かんない~。


「実は他にも色んなのがあるんですけどどうします? 出します?」


「おう、あるんなら出してくれ。 ついでにやっとくぜ。」


助かります。

これなんですけどね、とオーク2体を出した。

1体は既に食事用にお肉になってるから。

他にも狩った狼や獣や犬顔の魔物とか、なんか珍しい鶏とかこの際だから纏めて出しておいた。


「これもまた切り口が綺麗なもんだな。 余程切れる剣なのか?」


ちらりと私を見て


「いや、帯刀してないな。 すると魔法か。なるほど。」


意外とするどいね、この人。

だてに冒険者ギルドで働いてる訳じゃないって事ね。


「お おい。これってコカトリスじゃねーか。 嬢ちゃんこんなのまで狩ってたのか? 鮮度もいいし状態もいい。 これはいい値段つくぜ。」


「あ、それは私の従魔が狩って来てくれたんです。 その魔物珍しいんですか?」


「なに言ってるんだ、こいつはBランクの魔物で高級食材だぞ。 俺も久しぶりに見たからな。 腕が鳴るぜ。」


なるほど、これは期待して良さそうね。

私のストレージの中にはコカトリスがまだ何体か入ってるからいざとなったら売却してもいいわね。


「なぁ、譲ちゃん。 量が量だし、これから急ぎでやるからよ、換金は明日まで待ってくれねーか?」


「はい、いいですよ。 明日の何時ごろ来ればいいですか?」


「では、明日のお昼過ぎならいつでもお好きな時にお越し下さい。」


マチルダさんにそう言われた。

私は分かりました、明日は物資の補給もしたいので昼イチでまたここに来ますと言って解体施設を後にした。


私はギルドの建物に戻って先ほど話を聞いていた窓口の職員さんに


「魔物の買取の換金は明日になったので明日の昼イチでまた来ますね。」


「はい、お待ちしております。」


職員さんはにっこり笑って返事をしてくれた。

ふふ、可愛い子の笑顔はいいわねぇ、癒されるわ。

思わず私もにっこり。

横に居たメロディちゃんが私の袖をつんつん引っ張って


「誰にでも笑顔を向けちゃダメですよぉ~。」


ってちょっとむくれている。

なぁにこの可愛い小動物♪

思わずメロディちゃんの頭を撫で撫で。


「もう~ 子ども扱いして~。」


なんて言ってるけど顔はにへらっと笑ってる。

私は職員さんに向き直って


「そうそう、どこかいい宿ってありますか? 従魔対応で、女性が安心して泊まれる安全な処。」


と聞いてみる。

リズさんたちと同じ宿ってのも考えたんだけどくーちゃんが居るからね。

お値段とかの問題ではないのよ、私の心の安全が大事なの。

くーちゃんにちょっかい出すおバカさんが居ないとも限らないしね。

くーちゃんの安全が!じゃなくて襲った人間の方の安全が ね……。

理想を言うなら綺麗で清潔なシーツとお風呂と美味しい料理があれば言う事なしね。

ま、それは高望みが過ぎるって物だけどさ。


「それならいいお宿がありますよ。 元冒険者の女性がやっている宿なんですけど、綺麗で安心・安全、ちょっとお高いんですけど女性専用ってのがウケてて人気のお宿ですね。」


あら、そんないいとこがあるんだ。 じゃ、そこにしようかしら。

ちょっと高いって言ってたけど1泊どれくらいなのかな。

ま、行けば分かるか。 それに明日はお金も入ってくるし。

私は明日にはお大尽さまですもの。


「そう、じゃ そこにするわね。 ありがとう。」


職員さんにお礼を言って冒険者ギルドを出てそのお宿に向かった。

リズさんたちは護衛依頼で付いて来た商人が手配した、もう少し安い普通の宿に泊まっているんだって。

領都への帰還予定日は何事もなければ3日後だから、それまでは予定が空いてるので明日の午後からお買い物に付き合ってくれる事になった。

明日のお昼前に宿まで迎えに来てくれる事になり、それまでゆっくりと休んでいるといいよと。


「ここがその宿屋ね、じゃ 私たちはこれで。 明日のお昼前に迎えに来るからね。」


リズさんたちと別れて私は職員さんお薦めの宿のドアを開け中に入っていった。


「いらっしゃい!」


さぁ、異世界のお宿の実力とやらを見せて貰おうか。





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