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異世界ふとん至上主義!  作者: 一人記
第二章

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第百五十一話『真理の追求』

 

 目の前にて、国主様と対峙するイヴさん。


 しかし、決して私を庇うわけでもなく、

 ただ失望したように国主様に語りかけるイヴさんの様子を見て。




「イヴさん、なんで......貴女が......」



 私は、状況が理解できず。


 しかし、言葉を失いながらも、今何が起きているか把握しようとしてイヴさんに話し掛ける。


「はぁ、なんで貴方がって......」


「......この状況と私たちの話を聞けば、貴方なら大体は解るでしょう?ながみちゃんは頭が回る方だし。

 貴方が今、理解出来ていないのは、貴方が只理解したくないと思ってるからよ。ながみちゃん。」


 だが、帰ってくる言葉は辛辣だった。

 いや、辛辣と言うよりも、覚悟を決めて話しているというのが正しいのかもしれない。


 しかし、だ。

 この状況とイヴさんの言葉。


 そして国主様の『裏切ったな?!』という発言と、周囲にいた信徒達の行動&言動。


 その全てを理解して咀嚼して、認めてしまったら。



「......」



 私は、イヴさんを......



「へぇー、ナルホドねー。

 じゃあ、紫サンが仕組んでたんだ?最初っから。」


「ッ......!」



 しかし、そんな時だった。

 私が悩んでいる間に、何処かからふらっと出てきたフラリアさんが呟く。


 そして、何時になく細く尖らせた目で、瞳で。

 しかしいつも通りのあっけらかんとした態度を崩すことも無く、そう言い切ってみせたのだ。


 その言葉を聞いて、私は思わず動揺する。



 ───そう、イヴさんが仕組んでいた。



 ......私はそれを。

 心のどこかでは理解していた筈だ。


 しかし、認めたくなかった。

 ここまで私のことを助けてくれたイヴさんが、今回の事件の黒幕だなんて......。


 いや、明確には共犯者とかかもしれないが。

 とにかくそれに類する者だったなんて、考えたくもなかったのだ。


 だからこそ、私は少しの"違和感"にも見て見ぬふりをしていたのだが───


「えぇ、そうね。フラリアちゃん。

 今回の件、私はお父様達の全ての計画を知った上で、その行動を黙認して協力したわ。


 ながみちゃんが裁判に至るように。

 その動向を信徒達に見張らせて、良いタイミングでフィリオン家の恫喝現場に居合わせるように仕組んだのも私。


 ......そして、貴族たちの作戦が上手く回るように。

 ながみちゃんに声を掛けて、影で根回しをして調整してたのも、大体私だったわね。」


 ───まさか、その肝心の作戦が、あんな雑な作戦だとは思わなかったけど。


 だからこそ、そう言って開き直るようにして淡々と呟くイヴさんの表情を見て、静かに息を飲むしかなかった。


「へぇえ......じゃあ、あの信徒とかいう奴らの元締めも、紫サンだったワケね。」


「そうね。紫の学生寮生とか、その卒業生なんかが所属してる私直属の下部組織ね。

 中には、貴族たちの子飼いも居るみたいだけど......そういう子達は今日は連れてきてないし。」



「......だから、アーレントお父様の命令は。

 たぶん訊かないわよ?そんなに声を掛けてもね。」




『おい!おい!?待てッ!?信徒共よッ!??

 あの学寮長を、いや、アイツらを殺せッ!!聞いているのか、おいッ───!??』


 去って行った信徒達。

 そんな彼らに向け遠くの方で喚いている国主様......そんな哀れな男の背中を見つめ、イヴさんはただ淡々と呟く。


 ......なるほど、道化だったわけだ。


 あの国主様も、私も、フラリアさんも、イヴさんの手の平の上で踊らされていたと。



「否定......しないんですね、イヴさん。」


「えぇ。本当のことだからね。

 これ以上取り繕っても、いずれバレるし。」



 ───そうだ。簡単な話だ。

 思えば、イヴさんの居る所には、大体は信徒の人間が一人は存在していた。


 入国審査の時も、第一次試験の時も、二次試験終了後の話し合いの時だって。


 必ず近くに信徒の存在があった。



 そして、私の学寮長としての情報を一番握っているのは、

 最も近くで学寮長として仕事を教えてくれていたイヴさんただ1人だ。



 私と全く接点のなかった貴族達が、一体どこからわたしの情報を仕入れていたのか。



 私の学寮の場所だとか、学園からどのルートで帰るだとか、誰と一緒に居るだとか、受けてる講義だとか。



 考えてみれば。


 イヴさんぐらいにしか話していなかったのだから。


 誰がどうやって誘導したかなんて、

 ちょっと頭を回せば簡単に分かる話であったのだ。




 ......でも、だからこそ思う。




「イヴさん、なんでそんな事を......?

 私の事、何度も何度も助けてくれたのに、どうして今更裁判なんて......」




 もっと、早めに殺してしまえば良かったのに。


 そのタイミングは、

 イヴさんならば幾らでもあった筈だ。




 しかし───





「......そんなの、簡単でしょう?

 国の利益(ため)になるからよ。ながみちゃん。」




 その私の疑問を聞いて。

 イヴさんは少し間を開けた後。


 私に対し、その綺麗な紫の瞳を合わせながら当然であると言う様にして、そう呟いたのだ。




 その言葉を聞いて、思う。




 ───あぁ、そうだ。


 この人は、この国の役人(こういうひと)なのだ。




 私の友人とか、命の恩人とか、アンリさんとの縁とかそういうものの以前に。



 この人は、"五賢の紫"として。


 この国の歯車として生きているのだった。




「......貴方のスキル。

 "翻訳能力"と"魔力循環"に、そして"物質の召喚"。

 それは魔導学園の役人として、とてもじゃないけど見過ごすことの出来ない能力だった。


 第二次試験が終わった時点で、

 貴方をこの国に囲み込むことは決定していたのよ。


 でも、その方針だけが定まっていなかった。

 学寮長として国に囲い込むのか、それとも生徒として処理して、順当に囲い込むか。


 または───」





「......犯罪者に落として、奴隷として扱うか。」





「幾つもの案が、私達上位の貴族たちの間で話し合われていた。まぁ、当然よね。

 ここで貴方を逃がすと、この国の権威が脅かされる危険性があるんだから......慎重にもなるわよ。」



 "古代魔導語を扱える他国の人間なんてね。

 他国にいても、百害あって一利なしだから。"


 だからこそ、そう呟いて。

 淡々と説明してくれるイヴさんの言葉を、私はぐっと口をつぐみながら聞くことしかできない。


 そんな私に、イヴさんは世間話でもするかのように、いつも通りの口調で話を続けていく。



「そこで、私は取り敢えず、貴方のことを学寮長として囲い込んだ。一番安定の策ね。

 この国から逃げられなくしてから、ゆっくりと方針を決めることにしたのよ。

 学寮長として経過を観察しながら、行動や思想をみて、どう扱うべきかを考えることにしたの。」


「ふーん。じゃあカナちゃんは、

 結果として貴族様方のお眼鏡に叶わなかったと......それで処刑されることになったんだ?」


「いや、違うわね。叶い過ぎたのよ。

 新学寮長挨拶の時の貴方の公演、壇上での様子。

 そして、それを加味した上で、魔力循環系のスキル持ちということの判明。


 ......まぁ、つまりは怖がられたのよね。


 古参貴族連中的に、これ以上五賢の席に、貴族身分以外の人間を入れたくなかったから。」




「───だから、早めに潰して国で飼い殺してしまおうって。

 お父様に続く、"落ち目の貴族たち"が、定期会議でそう提案してきたのよ。

 馬鹿馬鹿しいわよね。とっても。

 地位と名誉のために、将来有望な子を潰そうってね。」




  淡々とした口調で。


 しかし、とても冷めた瞳で、イヴさんは呟く。



 その瞳の奥に、何が浮かんでいるのかは分からない。


 だが、その瞳の先に映っているのが、

 傍聴席の貴族達や何やら叫んでいる国主様の方に向いていることだけは分かった。



 だからこそ、私はそこに希望を見出して───



「っ、それなら!

 そんな貴族たちになんて協力しなければ───!」



 イヴさんに向けて。


 私は心の底から手を差し伸ばすようにして、ばっと顔を上げて声を吐き出したのだが。



「でもね、ながみちゃん。

 今更、そんなことはどうでも良いのよ。

 だって、私も元を辿れば貴方を利用しようと思って生かしていたんだから。


 お父様のせいでちょっと計画は狂ったけど、私も貴方を飼い殺そうとしていた点では一緒だったから。」



「......え?イヴさん、何を言って......?」




 しかし、唐突に呟かれたそんなイヴさんの言葉に、私は困惑して声を漏らして。




「私はね?ながみちゃん。

 貴方の事を、初めて会った時から、入国審査のあの時から、ずっとずっと利用するつもりでいたの。」




「......いや、私が利用しなければならなかった。


 絶対に、確実に。


 だって、真理の魔女様である私だけが......

 貴方の抱え込んでいる、"真の価値"というものを理解していたから。」




 そして、イヴさんが静かに語るその話を。




「───だって、私が貴方を使えなければ。

 この国が、いや、この世界が破滅に向かうことを、私は理解してしまっていたから。」




「は......?」




 その、私に合わせていた、紫色の瞳で。





「だって、この私の瞳で───」





 何処か、疲れた様子を見せる、その紫眼で。





「───貴方の進む先の未来が。

 私のこの母譲りの"未来を見通す瞳"で、この世界を希望にも破滅にも導く物だと視てしまったから。」





 ......突如として。



 血に染まったような"赤色"に変わっていく瞳で、私の事を見つめるイヴさんに。




 私は唖然とし気圧されながら───。








「だから、私は貴方のことを。

 魔導学園の"真理を見通す魔女"として、"五賢の紫"として、生かす訳にも殺す訳にもいかなかったのよ。


 ......解るかしら、ながみちゃん?」





 そして、その何処か覚悟の決まった様な、真っ赤な色の瞳で私は問われるのだ。





「だからね、ながみちゃん?



 はっきりと、今ここで答えて頂戴。

 

 

 ───貴方は何者なの?



 英雄なの?悪魔なの?

 それとも、それ以外の何か?




 ......本当ならば、この裁判が終わった後に。


 首輪をつけた後に聞こうと思っていたけれど、もはやそれも叶わないから。






 だから、その答えによっては......







 今ここで、私が貴方の事を殺すから。


 慎重に、本当の事だけを、答えて頂戴な───?」






 そう言って、五賢の紫。


 私の友人であった筈のイヴ・マギアさんは、

 私に向けてその何処かから取り出した大きな黒杖を、差し構えたのだった───。





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