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プロローグ

勇者と呼ばれていた、十年。

全属性のチートを持って、最強と呼ばれた、十年。


金属の砕ける音がして、十年使い込んだ剣が、俺の手の中で粉になった。


右腕は、肘から下がなかった。

痛みは、もう感じない。魔力も尽きていた。

それでも、立っていた。


「……お前も、限界か」


魔王が、片膝をついた。

鎧は砕け、翼は焼け落ち、目から光が消えかけていた。


十年だった。


凛は俺を庇って斬り伏せられた。

雪乃は自分の魔法陣ごと、声も残さず消えた。

美月は最後の回復を俺に注ぎ込んで、微笑んで瞼を閉じた。

——真白の、槍を構えたまま振り返らない背中も。玲が消えた、あの前夜の空気も。

全部、覚えている。一秒も、一語も。


「……もし、あの日に戻れたら」


折れた剣の柄を握ったまま、最後の一歩を踏み出す。


「俺は、誰も、死なせない」


左手を、魔王の胸に当てる。

全属性、すべての魔力。残りかすまで、ひとつ残らず、この一撃に。


魔王が、何か言いかけた。聞こえなかった。


世界が、白く弾けた。

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