表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、悪役騎士団長に転生する。  作者: 酒本アズサ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

280/281

280.黄鱗帝国過去編1

今回からしばらく五代前の過去編となります。

「父が……急に倒れたかと思ったら息をしていなくて……うぅ……、お父様……」



 両手で顔を覆う蘭を見て、馬車の中から立派な身なりをした男が降りてきた。



(わたし)はこの黄鱗帝国の東宮、黄延景(ホァン・イェンジィン)である。遺体をそなたが運んだり、ここに放置するわけにもいかんだろう。手の者に手伝わせよう、ここで弔ってやるとよい」



「ありがとうございます」


 

 延景(イェンジィン)はすぐに護衛達に遺体を埋葬するよう命じ、蘭の本来の身体は街道から少し離れた木の根元に埋められ、蘭はその様子をただ、眺めている。

 その様子を、延景(イェンジィン)達は父を亡くしたショックで呆然としていると勘違いした。



「ここではまともな墓を造ってやれないが、せめて墓碑(ぼひ)を後で運ばせよう。何と彫る?」



「墓碑……ですか?」



「ああ、墓碑は墓に眠っている人物がいかに優れた人物だったかを周知するための物だ。エルフであり、そなたのような娘に慕われた父親であれば立派な御仁であったのだろう?」



 延景(イェンジィン)の言葉を聞き、蘭は自嘲めいた笑みを浮かべる。



「いえ、もしもエルフの墓だとわかれば、父の遺体を悪用する者がいないとも限りません。このまま静かに眠らせてあげてください」



(どうせエルフだという以外に特筆すべき身体ではないのだから、墓碑に刻むような言葉などないし)



「そうか……。して、そなたはこれからどうするのだ?」



「私は……これからどうすればいいのでしょうか……」



「……あてがないのなら、(わたし)と共に来るか? 地方の視察を終えて、これから都に戻るところなのだ。エルフであれば龍力が使えるのであろう? 城でいくらでも仕事はあるはずだ。何なら私の友と言えば、客人扱いでいつまでもいられるぞ」



「龍力?」



 耳慣れない言葉に首を傾げる蘭。

 そんな蘭の様子に、延景(イェンジィン)は目を瞬かせた。



「龍力を持つ者は魔法という術を使えるのであろう? 残念ながら(わたし)にはその力が備わっていなかったが……」



 絶望の淵に足をかけたような、諦めたような自嘲の笑みを浮かべる延景(イェンジィン)に、蘭はこれまでの自分の姿が重なり目を逸らす。



「龍力というのは私達の言う魔力の事ですね。今回お助けいただいたお礼に、私があなた様の龍力となりましょう。友とは助け合うものでしょう? 見たところ、皆さんお疲れのようですから……『範囲治癒(レンジヒール)』」



 蘭が展開した治癒魔法は、百人以上いる行列の全員の疲れを癒した。



(素晴らしい! 以前の身体であれば、こんな広範囲の治癒魔法を使えば魔力切れになるところだが、この身体はまるで無尽蔵の魔力のように感じる!)



 蘭は高笑いしたいのをこらえ、代わりに穏やかな微笑みを浮かべた。

 行列のあちこちから、痛くない、身体が楽になったと驚きの声が上がっている。

 もちろん延景(イェンジィン)も例外ではない。



「凄いな! ずっと馬車に乗っていたせいで痛かった腰と尻が楽になった!」



「東宮だけではありませんよ! 恐らく全員が同じ状態になってます! このような大規模な術は見た事がありません! それどころか、文献にも載っていないのでは!?」



 最初に蘭に声をかけた護衛が、興奮しながら延景(イェンジィン)に訴えた。

 事実、人族の魔力とエルフの魔力では比べる事すら馬鹿馬鹿しい差がある。

 しかも以前の身体でもそうなのだ、今の蘭の身体は他のエルフと比べてもかなりの魔力量のため、人族の歴史にそのような人物がいないのは当然だった。



「ふ、はははは! こんなところでこのような友ができるとはな! まるで金の蘭でも見つけた気分だ! 新たな友よ、そなたの名を教えてくれ!」



 満面の笑みで手を差し出す延景(イェンジィン)

 そんな延景(イェンジィン)に、蘭は小さく笑った。



「私の名前は蘭です。偽名ではありませんよ。生まれてからずっとこの名前ですから」



 そう返して、延景(イェンジィン)の手に、蘭はそっと自分の手を重ねる。



「なんと! まるで運命のようだな。では一緒に城に帰ろう(・・・)か。(わたし)の馬車に一緒に乗るといい。蘭の事を色々と聞かせてくれ。実はエルフを見たのは初めてでな、実在していたのだと今日知ったところだ」



 そう話しながら延景(イェンジィン)は蘭を馬車へとエスコートした。

 延景(イェンジィン)は蘭を隣に座らせ、移動中色々と質問をぶつける。

 蘭も状況を把握しようと、黄鱗帝国内の情勢や、延景(イェンジィン)の立ち位置など、遠慮なく聞き出す。



「この黄鱗帝国は皇帝である父が治めている。(わたし)は皇后唯一の皇子で、同腹の兄弟は妹が二人。父の側室は四十人ほどいて」



「四十人!? 何だその数は!?」



 エルフで同時に相手を作るという話は聞いた事もなかった蘭は、驚きのあまり素で返してしまった。

 まずいと思って延景(イェンジィン)を見るが、意外にも面白いものを見たという表情だ。



「ほぅ、蘭は本来そのような話し方をしているのか。普通に話して構わんぞ。何せ(わたし)の友なのだからな!」



「で、ですが、東宮という立場の方にそのような口の利き方をすれば、周りの者が黙っていないのでは?」



「う~ん、確かに……。よし! では二人だけの時は楽に話すがよい。(わたし)が許す」



 他人に思えない延景(イェンジィン)の屈託のない笑顔に、蘭は凝り固まった心がほんの少しほぐれた気がした。

お兄ちゃん成分が不足する前に戻す予定ですので!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ