263.
「あ、な~んだ、ジェスじゃねぇか。曲者って言うから慌てたのによ」
「え? 知っているのか!?」
ジェスを見てあっさりとした態度のシモンに、烈陽は二人を交互に見る。
「烈陽、雪瑤、ここに曲者はいない。峻耀にはもう言ったが、このジェスは俺の従魔だ。人化の術を使っているから人族にしか見えないかもしれないが、魔物だ。ただ、何の魔物かは黙秘させてもらう」
説明しながら、俺はシモンに余計な事は言うなと、目で警告した。
さすがにわかったのか、シモンは高速でコクコクと頷いている。
「従魔だって!? という事はジュスタンは龍力を持っているのか!?」
「……まぁ、藍之介に比べたら笑ってしまうくらい僅かなものだが」
直球の烈陽の問いに、ヘタに隠しても後でバレた時が面倒だと思い、答えた。
事前に聞いてなければ、龍力って何かわからなかったぞ。
その途端になぜか雪瑤と烈陽が尊敬の眼差しで俺を見ている気がする。
「ジュスタンも龍力があるのか……、我もわずかながらあるのだ。同じだな」
もう一人いた。
龍力が魔力と同じなのは聞いたが、この反応を見る限り本当に保持者が少ないんだな。
峻耀龍力持ちなのは、皇族だからこそなのか。
「それにしてもさぁ……。団長、今の状態……ククッ、他の団員にも見せてやりてぇ~!」
そう言って腹を抱えて笑い出したシモンのせいで、二人も両膝にジェスと峻耀を座らせている俺の姿を認識したらしい。
明らかに笑いを堪えている顔でそっと目を逸らした。
やめろ藍之介、微笑ましそうに見守るな。
「シモン……貴様その口を縫い付けられたいか」
「や、やだなぁ、冗談だって、冗談!」
「フッ、俺も冗談だ」
ニヤリと笑うと、峻耀の身体から力が抜けたのがわかった。
もしかして本気にしてしまったのかもしれない。
「嘘だ……、さっきの目は半分以上本気だった……」
ボソボソとくだらない事を言っているシモンを放置して、峻耀の顔を覗き込む。
「東宮、騒がせて申し訳ない。だが、誤解は解けただろうから、今夜はもう休むといい『清浄』」
「おお、清拭をした後のように気持ちがいいな!」
魔力持ちなのはバレたのだから、このくらいは問題ないだろう。
清浄魔法を初めてかけられたせいか、峻耀はさっぱりとした首元や腕をペタペタと触っている。
「何て便利な……!」
雪瑤から心の声が漏れた。
わかる。世話をする立場からすれば、清浄魔法は真っ先に欲しい魔法だからな。
峻耀を台の上に座らせ、ジェスを床に下す。
「雪瑤、後は頼んだ。俺達は部屋に戻る。東宮、おやすみ、よい夢を」
いつものようにジェスと手を繋いで部屋を出て行こうとしたら、峻耀から待ったがかかった。
「待て、ジェスはどこに連れて行くのだ」
「ボクはジュスタンと一緒に寝るよ」
「一緒に!? そなた先ほど十一歳になったと申したではないか!」
「だって、いつもそうしてるし……、ね?」
ジェスは俺を見上げてコテリと首を傾げた。
「そうだな。今からジェスの寝台を準備してもらうわけにはいかないだろうし、それが一番だろう」
「ならぬ! 二人で寝るには寝台が狭いではないか! ……よし、我の寝台は大人が三人寝たとて問題ないほど広い、ここで寝るがよい」
名案とばかりに峻耀はドヤ顔をしているが、雪瑤と烈陽は複雑そうな顔をしている。
当然だ。半月以上一緒に行動した俺の事は信用しているとは思うが、いきなり現れたジェスの事はまだ警戒しているだろう。
しかも三人を強調したという事は、俺とジェスの二人に一緒に寝ろと言っているのだ。
「ですが東宮……」
「これはもう決定事項だ!」
諫めようとしたであろう、烈陽の言葉をさえぎり、峻耀はピシャリと言った。
そうか、決定事項か。
これで寝返りが許されない夜を過ごす事が決定したという事だな。
ニヤニヤと笑い顔を隠そうともせず部屋を出て行くシモンを睨みつけ、俺が峻耀の部屋で寝るから雪瑤も峻耀を着替えさせると、早々に隣室に下がった。
俺とジェスは各自で清浄魔法をかけ、パジャマに着替える。
着替えている最中、先にベッドに入っている峻耀からの視線が向けられていたのは気付いていた。
何がそんなに珍しいのか……いや、実際珍しいのだろう。
烈陽達も峻耀の前ではキッチリした格好をしているからな。
「ジュスタンは立派な体躯をしているのだな! 我とは全然違う!」
早く隣に来いとばかりに、ベッドの真ん中に寝転んでいる峻耀が自分の横のスペースをぺふぺふと叩いた。
「それはそうだろう。これでも騎士団長をするくらいには鍛えているからな」
俺が峻耀の隣に寝転ぶと、その横にジェスが入り込む。
峻耀の隣の方が広いが、落ちない程度には余裕があるからいいか。
やはり寝返り禁止の夜になりそうだ。
こうして二人に挟まれていると、末の双子を寝かしつけしていた時を思い出す。
最初は誰かと一緒に寝るのが初めてだと、興奮しながらも俺のパジャマが珍しいだの、次から藍之介ではなくジェスと俺が馬車に乗るよう言っていたが、いつの間にか左右から寝息だけが聞こえるようになった。
今夜は満月だからか、闇に慣れた目には結構室内がハッキリ見える。
寝返りが打てないのがつらくなり、そっと二人の間から抜け出した。
すると二人とも隣にあった体温が消えたせいか、もぞもぞと動き出し、峻耀とジェスがくっついて満足そうに眠っている。
今とてもスマホが欲しい!
あれば写真を撮って明日二人に見せてやれるのに!
エルドラシア王国でアリアに渡した、ほしい魔導具リストの中には、写真、録音、録画の提案を書いてはいるが、いつになったら手に入るのだろうか。
そんな事を思いながら、俺は二人の足元にある広々としたスペースで眠りについた。
本日4巻の発売日となっております!
3万字以上加筆されているのでお楽しみに!
小田急線に乗られる方は、ドア周辺のステッカーをチェックしてみてください。
来月の7日までに……( *´艸`)




