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第5話 王子様は(仮)旦那様



 それからもフィアナと失恋相手のジルフォード王子との親交は続いた。

 国の利益にも結び付く事だ。我が儘で放り出せるものでもないだろう。

 それでなくとも純粋に商いが楽しみである彼女だから、やめられるものではなかったのだろう。

 その日も来訪したジルフォードを楽しげに談笑していた。


 今日も守銭奴な王女は、夫に振り向いてくれない。

 だが良いのだ。

 これで。


 来訪者が待つ部屋へとフィアナを送り届けた後は、速やかに退散。

 楽しげに談笑し始める二人を背後に部屋を退出した。






「君は彼の事をどう思ってるんだい?」

「ふぇ?」


 ジルフォードからの急な問いかけに私……フィアナは、間抜けな声を出してしまった。

 今まで真面目な話をしていたと言うのに、いきなり恋バナになって驚いてしまったのだ。


「彼、と言いますと私の旦那様の事ですか?」

「他に誰がいるんだい? 健気な方じゃないか。君の為に色々してくれるんだろう?」

「そう、ですね最初は嫌いでしたけど」


 正直を言えば嫌いだった。いきなり庶民から王宮の姫になれ、王子の嫁になれと言われた時はふざけるなと思ったし、部屋の中で大人しうしていろと言われた事にも腹が立った。


 だが、時が経って冷静になって来ると、彼の優しさも見えるようになってきたのだ。


「鳩は夜目が効きますし、人よりもよっぽど気配に敏感ですから」

「?」


 思い出すのは、王宮のテラスでらしくもなく本音をこぼした時の事。

 あの時、鳩の視線が自分の背後を伺っていた事に気が付いたフィアナは誰かに聞かれてしまっている可能性を考えた。


 きっと翌日は、彼に話が行って怒られるなリ何なりするだろうと思っていたのに。


 けれど、やってきた彼はフィアナをジルフォードへと引き合わせた。


 恋が叶わぬ夢へと終わってしまった時も、泣いて良いと言ってくれた。


「そんなに嫌いじゃないです。今は」


 変わった人だなと思っている。


 文句を言いながらも自分の内職を手伝ってくれるし、彼は他の者とは違ってフィアナの趣味や生きがいを否定せずに、ただ危ないからとか王宮の者達から嫌われるからとか、そう言う理由で注意しに来ていたのだ。


「むしろ、良い人だと思いますわね」


 怒りながらでも、戯れに城下で手に入れた戦利品をプレゼントすれば、喜ばれるくらいで……。


 そんなこちらの表情を見た、ジルフォードは苦笑を漏らした。


「良かった。心配は要らないようだ。元気を失くしていたらどうしようかと思ったんだけどね」

「なぜですか?」

「ああ、何でもない。秘密秘密」


 楽しげに、そして嬉しげに笑うジルフォードはひょっとしたらこちらの恋心に気づいていたのかもしれないが、問い詰めたところで分かるはずもない。そもそも、無理に問おうとも思わない。その必要もないだろう。

 これでいいのだ。


 旦那様となったあの人……彼は、自分には何もないと思っているような雰囲気があるがそんな事はない。

 だって、自分は何もないはずの人のその優しさで救われたのだから。


「ジルフォード様、男の人が好みそうな良い贈り物がないか教えて下さらない? ちょっと色々あったので旦那様にお礼がしたいのです」


 きっと、今度は怒らずに受け取ってくれるだろう。

 その時の表情を思い浮かべる自分の心境は割と悪いものではない。


「王族の方が驚く様な、とびきりの品をプレゼントして差し上げたいんです」


 今はまだ全面的には認められない(仮)旦那様だけれども、いつかその一歩を超える日が来るような気がして、フィアナはそんな提案をしていた。




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