転生
ピチョン。
そんな静かな水滴の落ちる音が響き、その空間内で幾度にも木霊する。
「......んぅ?」
その自分が寝ているであろう場所に違和感を感じ、手で確認する。
本当ならば、ふわふわで弾力性のあるベットの感触が帰ってくる筈なのだが........
どこを触ってもゴツゴツと凹凸を繰り返す感触。妙にひんやりと冷えているその凹凸の数々。
それになにやらいつもの俺の部屋の明かりと違う。
辺りは本当に真っ暗なのだろうか。目を瞑っている状態からは何も明かりが照ってこない。
やはり変だと感じて俺は瞼を開く。
やはり目を開けた時と瞑った時とが同じ程度の漆黒が俺を覆っていた。
つまりは暗くて何も見えなかったのだ。
上半身を起こし再度辺りを見回す
そんな中の俺の第一声は........
「どこ。ここ?」
まぁ仕方がない。いきなり目を覚ましたらここにいたのだからそう言う以外に言葉を出すのは中学か高校くらいに読んだ小説の主人公程度だろう。
ええっと......これはドッキリか?
そういう小さな事しか考えられない自分が恥ずかしい。
駄目だ。一旦頭を冷やせ俺!!
そう無理やり思い込ませ俺は少し口を閉じて頭の中で記憶を模索する。
.........思い出した。
俺は確か公園にいたはずだ。家には帰っていない........筈。
そこで上からの落下物にいち早く俺が勘付いてベビーカーを押して........
俺は下敷きになった筈だ。
なら何故自分は怪我がないのだろうか。
自分で見れるところを全て見て体をまさぐるが特に痛みはないし血の跡も、手術の結果もない。
今は科学の力が発展し、手術でも怪我が跡形もなく消えることも可能ではある。
だがそうなれば何故自分がこんな暗い場所に寝ていたのが説明できない。
.........これは夢か?
だが勿論、頬を引っ張っても痛いだけだ。
.......けど俺、生きてるよな。
改めて確認。やはり生きてる。
じゃああれはなんだったんだ?
そう考えたがすぐに首を振る。
そんな事は後回しだ。今はここが何処かを知らなくちゃな。
そう思うが、
俺は溜息をして、ふとあたりを見渡す。
どうやら俺の目が暗い場所に慣れたようで少しは見えようになった。
辺りには様々な色を発光する物がいくつも見え、それでここは自分の部屋ではないのだと嫌でも信用できた。
上半身を起こした状態から俺は立ち上がる。
何か足に力が入らないし何かと違和感を感じるが、まぁそれほど問題という訳でもない。
立ち上がりもう一度辺りを見回すが周りに広がるのは、暗い中にポッカリと空いた穴と発光する物がいくつか埋まっている壁だけだった。
足の感触やこの手触りで俺は中学校の時のVR型教科書で触れた物を思い出す。
これは......岩?
しかもかなり硬く、大きい事もよく分かる。
つまりこの壁全てが岩だろうか。だとすれば俺は今岩の間にいる訳か。
そこまで考察し、ふと 発光している一つのものに寄る。
それは淡い色に輝く宝石だった。
触れると、岩とは違う硬さと冷たさがありなんともいえない感触だった。
しかもその宝石の色は数秒後に赤茶色に染まり、数秒後に綺麗なエメラルドグリーンへと染め変わった。
.........変な石だな.....
そうぼやきながらその宝石をチョンチョンとつつく俺。
何度かつついていると宝石は ぽろっ とそのはまっていたところから転がり落ち、俺の手元に乗った。
どうやらそこまで深くに埋まっていた訳ではなかったらしい。
それを確認すると俺は自分の太ももへと手を伸ばす。
理由としてはこの珍しい宝石が欲しくてそれを入れる袋がポケットにあるか探そうとしているだけだ。
俺の家の近くにこのような自然を満喫できるような場所はない。きっとすごく遠い場所か、VRの世界かもしれない。が、きっといつか家に帰れるだろう。
その時には屑河達にもこの石を持って行ってやろう。
そう考えて俺はこの宝石達を入れるための袋がないか、ポケットに手を入れようとして.......
「ん?」
声を漏らし俺は宝石に向けていた視線を足へと伸ばした手元を見る。
「あれ?」
ポケットがない。
俺の視界にはそんな情報があった。
「あれ? 確かこの辺にポケットなかったっけな......」
そう言い服の所々に手を当てて、ポケットがどこにも付いていないことを認める。
だが、俺が来ていた服にはポケットが数個あったはずだ。
俺はふと自分の着ている服に今更かのように気付く。
「へ?」
俺が着ている服は元々俺が着ているものとは完全に別の代物だった。
茶色で下半身の太もも辺りまで伸びているローブに取り外しが可能なフード。下はズボンも靴も何も履いていなかった。
なんでこんな格好してるんだ!?
そう思い近くを探してみるが自分の服は見つからなかった。
じゃあ俺。この状態で寝てたのか.......風邪とかひいてないよな?
そう思いつつ俺はさっきまでの違和感にも気付く。
手を一度伸ばし、確認。今度はジャンプしてみる。確認。最後に自分の真下を見てみる。確認。
ええっと。俺。身長縮んでない?
質問が空回りするが俺は気にせずに身体を再度見渡す。
や、やっぱり縮んでるし........
本当にその通りだった。手は昔より細く、短くなり、それは足も同様。
体の方に手を当てると少しはあった筋肉の硬さが消えとても柔らかい。
そして第2の違和感に俺は気付く。
そおっと自分の背中に垂れている物に手を触れる。
掴んだそれを自分の前に持っていく。
「........え?」
他人から見ると変な感じだろうが、自分はもっと変な感じになっていた。
「な、なんでこんなに髪長いの?」
そう。俺の頭から垂れている髪がとても長かった。しかも髪全てが水色に染め上がっていた。まるで元の地毛が水色だったかのように。
.........状況を整理しよう。
俺は死んだであろう記憶を持っている。そしてこの縮んだであろう身体と長い地毛の色が違う髪。
これから想像できるのは..........
俺。生まれ変わったの?
そんな発想しか出来なかった。
いや。でも鏡とかで見たわけじゃないから、と思った時に丁度鏡のような岩を見つけた。
こんなタイミングで見つけるとか.........運が良いのか悪いのか.....
そう思い俺は鏡状の岩を覗き込む。
そこには身長が小さく、足まで届きそうなロングの水色の髪を垂らし、そても可愛らしい美少女......の俺が立っていた。
.........マジ?
今はこんな状況だが、ここから一度外に出てもう一度よく考えよう。
こんなとこにいて風邪とか引いたらこの体が持ちそうにないしな........下履いてないし。
そんな理由もあり俺は素足でそのゴツゴツとした穴の隙間を通っていく。
決してリアルではないだろうという希望を信じて.........
いくらかした時にはここが洞窟だということも理解でき、俺のローブの取り外したフードに入れた宝石もなかなかの重さになっていた。ぶっちゃけ もう少しで持てなくなりそう。
そう思考していると。
「あ。」
一つの輝きが見えた。
それは今までの宝石じゃなくてもっと明るく眩しかった。
外か?
きっとそうだろう。そう信じて俺は残りの洞窟の地面を走り抜ける。と
「ギャゴガガガガガガ!!!!!!!!」
「うわっ!?」
そんな雄叫びを間近で聞き一瞬気絶しかけた。
倒れこみ俺はすぐさまその原因の方へと目を向ける。と
「ギャゴガ?」
ライオンのような形をした巨大な生き物が俺を見つめていた。
あっ 俺の人生終わった。
そう感じさせる恐怖と疎外感を両方受ける俺。
どうせならこの体をもう少し見とけばよかったなぁ。
寂しい感情を漏らし、この世の未練をぼやいた。その時。
《了解)ご主人様の未練のための邪魔者を確認。排除します。》
「え?」
どこからか聞こえた声に俺はすぐに辺りを見渡す。そこには密集した木々しかなく、人の姿は確認できなかった。
そして
「!?」
俺の体が勝手に動いた。
俺の足が勝手に曲がり俺の体勢が低くなる。
「!!」
直後、足が伸びきり、溜めたその勢いで俺はジャンプ以上の跳躍を行う。
「ゴガァ!?」
そう驚嘆の声を漏らす生物に裁きを下すかのように、その生物の首を何かが締め上げる。
「ゴゴガァ!? グ...グゲェ!?」
その何かはその生物の首を更に締め上げる。まるでその生き物を絞め殺すかのように、
「グゲェ!?....グ..............ゲゴォ...............」
次の瞬間に俺の跳躍は止まりそのままゆったりと俺の体が沈む。
そして地面に足がついた時にはその生物は白目を剥き、口から泡を噴き出していた。
.............酷い。
そう思い俺は我に帰る。
「ってかなんださっきの!? 俺何もしてないぞ!?」
街中で言うと変態みたいに聞こえるが事実。俺は指先一つ動かそうと考えていなかった。
本当に死を覚悟していたはずなのに、変な声が聞こえた直後。体が一人でに動いた。
さっきの声が原因か?
《肯定)スキル【案内】により、ご主人様の身体を操作させておりました。》
来た!!変な声!!
ってかスキル?がーどなー?ってなんだ?
《回答)スキルとはこの世界に存在する生物が与えられる事を許された技、 いわゆる技術というものです。》
技術? まぁいいや。それでその技術っていうやつで俺の体が動いたわけね。
にしてもお前は誰?なんか声の質から女の人の声なんだけど......
《回答)私はスキル名【案内】という貴方様のスキルです。因みにこの声は貴方様にしか聞こえない物なのでご注意を。》
お、おおぅ。一応注意はしとくよ。
で。お前がスキルなのか。技術とかいう割には人間みたいな機能だな。
《肯定)そのような物なので。》
あ。はい。まぁそうだよね。人間に「なんでお前喋れるの?」って言ってるようなもんなんだろうな。
状況を整理しようか。
《肯定》




