第45話『夏空の下で』
「……スイカ割り、ねえ」
夏の定番っちゃ定番と言われているかもしれないが、実際にやっているところなんて見たことがない。
アニメやゲームなんかではよく見る光景かもしれないが、やはり現実のこととなると少しばかり非現実的なのかもしれない。
「ゲームとかでよくやっていることを現実でもやってみたくなったの」
「それならビーチバレーとかでも良かったんじゃないか?」
「や、私も最初はその気でいたんだけどネットとポールが無かったから無理だった」
「なるほどな」
「候補としては、ビーチバレー、遠泳、スイカ割りだった」
「……二つ目、嫌だな。ハルカ、長距離は……泳げない」
「わたしもです。短距離型なのど長距離はちょっと……」
「という人もきっといると思ったからスイカ割りにしたの。みんなで楽しめそうなことしないと損でしょ」
「さすがつもりちゃん! みんなのこと考えてるね」
「まぁこれくらいは普通ですよ」
こうして雪原が俺たちを引っ張ってくれるから、みんな楽しめているんだなと思った。率先して何か提案してくれる人がいるのといないのとじゃ全然違う。
「つもりちゃん、一つ聞いておきたいんだが」
地面に突き刺さっている木刀を引き抜き、反町は雪原を見る。
「木刀じゃなくて……普通の棒とかは無かったのか?」
「あった」
あったのかよ。
「ならなんでこっちをチョイスした!? 普通に棒で良かっただろ!?」
「えっ? スパッといけそうだから」
雪原は反町の目から少し上に視線を上げた。
「待てつもりちゃん。今なんで俺の頭を見た」
「え?」
「えっ?」
「かち割れそうだから?」
「あれ、スパッとじゃないのか? いやそんなことはどうでもいい。割るのはスイカだよな? 俺の頭をかち割る気じゃないよな?」
「……」
「頼むよ、答えてくれよ。俺は下手しなくても頭かち割られるのか?」
反町の声は震えていた。
雪原ならやりかねない。そう思ってしまうのだから仕方ない。
「スイカ割りはまた後でね。とりあえず今は海で遊びましょ。せっかく来たんだからまずは泳がないと」
「あ、泳ぐ前にサンオイル塗らないとね。日焼けは女の子の大敵だよ!」
じゃーん! と、榊先輩はどこに隠し持っていたのか分からないサンオイルを取り出した。
「一人で塗るのは大変ですし塗るの手伝いますよ。向こう行きましょう、夜乃先輩」
十堂は榊先輩の手を引いてレジャーシートのところへ向かっていった。
俺はあまり焼けない体質だからそのままでも何の問題もない。とりあえず泳ぐ前に準備運動だけはしておいたほうがいいだろう。
「……浅川くん、ちょっと」
屈伸をしようとしたところでぽんぽんと肩を叩かれる。
振り返ると白い小さなボトルを持った古宮が立っていた。小さな手に握られているのはサンオイル……のように見える。ああ、この後の展開か読めたような気がした。いや、気がしたなんてただの逃げだ。展開は完全に読めてしまった。
「……サンオイル、塗って」
うん。ですよね。
「古宮……そういうのは女子同士でやろうな? ネタで言ってるってことを俺は切に願ってるぞ?」
「……残念。本気」
「……」
さて、これは困った。
ちらりと視線を横にずらす。
「……」
ぐっとガッツポーズを作る榊先輩と反町。ニヤニヤとしながら俺と古宮を見ている雪原。そしていつも通り無表情に俺を見ている十堂。
裏切り者四人にはあとで罰を受けてもらわないといけないようだ。
「……はぁ、分かったよ」
助けを求めるだけ無駄と判断し、俺はしぶしぶ古宮の手の中にあるサンオイルを取った。
同時におお。と、外野から小さな歓声と拍手があがる。古宮は少し嬉しそうにはにかみながらサンオイルを持つ俺の手を引っ張る。
そのままレジャーシートのところまでやってくると、古宮はそこに寝そべった。
「……じゃあ、よろしくね、浅川くん」
「はいはい。分かりましたよ姫様。楽になってくださいませ」
「……うむ、苦しゅうない。そなたに、任せるぞよ」
ぐだぐだな時代劇のような会話に苦笑しながらサンオイルの蓋を取り、手にとろっとした透明な液を垂らす。
サンオイルは出してからすぐに塗ると冷たくてびっくりしてしまう。だから手で慣らしてから塗ってあげたほうがいい。
「んじゃ塗るぞ」
十分に手で慣らしてから古宮の背中にサンオイルを塗り始める。
こうして見て分かったのだが、古宮はかなりきめ細かい綺麗な肌をしていて、思わず感嘆の息が漏れてしまう。しかもどこを触っても柔らかい。結菜もそうだったが、女の子というものはみんなこうなのだろうか。
「……浅川くん、塗るの……上手いね。やったこと、あるの?」
心地よさそうに目を細めた古宮が俺を見る。
「いや、初めて」
「……サンオイルのことも、分かってたし……ハルカ、てっきり、他の人にも……やってると、思ったよ」
「残念ながら本当に古宮が初めてだな」
てかふと思ったんだが……こんなとこ結菜に見られたら終わるよな。
「……そっか。浅川くんの、初めて……また、貰っちゃった」
「……なんか言ったか?」
「……ううん、何も」
「そうか」
背中全体を塗り終えたところで今度は足の方に移る。
「……ッ」
ピクッと古宮の身体が小さく跳ねる。
「……くすぐったいよ」
「悪い悪い」
謝りながらも俺は手を止めない。
動かす度にピクピクと動くから見ていて面白い。特に太もものあたりに触れると反応が大きく、好奇心がそそる。
「……くっ、んっ浅川、くん……。はぁ、くすぐっ……たいよッ」
古宮は笑うのを必死に堪えている。
「ほらほら、我慢するのは良くない。声出せって」
「……い、や……だよっ。うぅ……はぁ、だって、恥ずか、しい……もん」
「大丈夫だって。少しくらい声出したってこんなにも周りが騒がしいんだ。聞こえやしないって」
「……それ、でも、だよ……! んあッ、くぅ……」
声を必死に抑えようとしているが、艶めいた声が少しずつ漏れ始めていた。
「……も、もう……無理ッ……あぁ、だ、ダメ……浅川、くん……ハルカ、もう、我慢……はぁはぁ、出来ない、よ……ッ」
「ここまできてやめるわけないだろ。覚悟しろ」
「……ダメ、だって……ンんッ! お、お願い……はぅ、んッ……浅川、くんッ! ハルカ、も、もう……ダメぇ! ダメ、だよッ、はぁぁ、浅川くん……ッ」
古宮はもう我慢の限界のようだった。
このまま最後まで決めてしまおう。
そう思った瞬間だった。
「ふふふふ二人ともいい加減にしなさいッ!!」
「グハッ」
後頭部に鈍い衝撃が走る。
ヒリヒリとする頭をさすりながら振り返ると、そこには顔をゆでダコのように真っ赤にした榊先輩がわなわなと震えていた。
「ば、ば、ばッ、バカバカバカッ!! 公共の場で何やってるの二人とも!!」
「えっ?」
「……え」
俺と古宮は目を合わせて首を傾げる。
「サンオイル塗ってるだけですけど……何か問題が?」
「ダウトッ!!」
「本当なんですけど!? てか見てたんだから分かりますよね!?」
「見てたよ!! バカッ!!」
ボカっともう一発殴られる。
理不尽だ。訴えてやる。
「……浅川くん、前も……やる?」
「そりゃ体全体に塗らないと意味無いしな」
「……うん、いいよ」
「遥香ちゃん!!? ダメに決まってるでしょ!!?」
「……なんで?」
真顔で聞き返す古宮に榊先輩は戸惑う。
「なんで!? なんでってそりゃ……遥香ちゃんだって女の子なんだから……その、えと……」
「ぷっ」
耐えきれず噴き出してしまう。
「……あははっ」
釣られて古宮も笑う。
「榊先輩、冗談に決まってるじゃないですか。さすがに前はやりませんよ」
「……そう、ですよ。ハルカ、痴女じゃ、ないです」
「あ、安心したよ……。今年一番安心したような気がするよ」
榊先輩は心の底から安心したようで、ホッと胸を撫で下ろしていた。
何気なく雪原たちの方を見ると、雪原と反町は腹を抱えて大爆笑していたのだが、十堂の姿がなかった。
「雪原、十堂はどうした?」
「恋歌なら見ていられないって言ってどっか行ったよ」
「ああ、なるほど」
十堂は恥ずかしいことは苦手みたいだからな。
「あの子、あんな表情するんだ。びっくりした。普段は考えてることは相変わらず分からないけど、ああいう時だけは私でも分かる」
「俺も俺も。恥ずかしがってることだけは分かるようになった」
「そりゃ良かったな?」
話をそこできって古宮の方へ向き直り、サンオイルを手渡す。
「……背中、ありがと。でも、くすぐったかった」
「ちょっとしたいたずらごころだ。悪く思わないでくれ」
「……別に、怒っては……ないよ?」
話しながら古宮は自分でサンオイルを塗り始める。
「……けど、くすぐったかった」
「俺にどうしろと」
「……前も、塗って?」
「それをした瞬間俺はこの世から抹消されてしまうだろう。俺はまだ死にたくないからそれだけは遠慮したい」
「……えー」
「別のことなら何かしらしてやるからさ。俺に出来る範囲でな」
「……んー、じゃあ……どうしよ」
サンオイルを塗る手を止めて古宮はキョロキョロとあたりを見渡す。
やがてアメジスト色の瞳がある一点を見つめて止まり、そこに向かって指をさす。
すらっとした指先を追って瞳を動かすと、『氷』と大きく書かれた看板があった。
要するにカキ氷を奢ってくれということだろう。
「何味が食いたいんだ?」
「……見てから、決める。ちょっと、待ってて」
止まっていた手を動かして体全体を塗り終えると、お待たせ。と、足早にカキ氷の露店に向かい始める。
「そんな焦らんでもカキ氷は逃げないぞ」
「……こういうのは、気分の、問題。浅川くんも、急いで」
マイペースで歩いていた俺の手を古宮はパシッと掴むと駆け足になる。
海に来る前とは逆の立場だ。
「らっしゃい!」
日焼けで真っ黒になったおじさんが店主の露天の前に着くと古宮は台の上に置いてあるメニューを中腰になって眺め始める。
「……」
お尻が突き出すような形になっていて妙に色っぽく見えてしまう。
俺はなるべくそちらを見ないようにしてメニューを覗き込んだ。
「俺はメロンにしようかな。古宮はどうする」
「……ハルカは、イチゴが……いいな」
「おっけ。――すいません、メロンとイチゴ一つずつください」
「あいよ! ちょっと待ってろ兄ちゃん!」
威勢のいい声と共にかき氷器に古宮の顔くらいの大きさの氷をぶち込んだ。
ゴリゴリと機械の上についてるハンドルを回すと、粉雪のようにサラサラとした氷が山を作り始める。
あっという間に二つの山を作り終えると、店主はそれぞれにシロップをかける。それで終わりかと思いきや、シロップの隣に置いてあった練乳を古宮のカキ氷のほうにかけた。
「お待ち! 練乳はサービスだ。いい彼女だな兄ちゃん。大事にしろよ!」
「え? あ、ああ。ありがとうございます」
そうか、傍から見れば俺たちはそういう風に見えてしまうのか。
「……ん?」
そんなことを考えていると店主が小さく手招きして俺を呼んだ。
近くまでいくと顔を寄せて、古宮のほうを見ながらこっそり耳打ちしてくる。
「……兄ちゃん、彼女のケツばっかり追ってちゃダメだぜ?」
「……」
見られていたのか。
「がはは! まぁそれもまた青春ってもんだ! ほら!溶けないうちに食いな!」
カキ氷を渡した後、笑顔で俺たちを見送る店主に背を向けて俺と古宮は店をあとにした。
「……彼女、だって。ハルカ達、恋人に……見えるの、かな?」
「まぁ見えるかもな」
パクッと氷を食べる。
メロン味のシロップの甘さのあとにキーンとくるこの冷たさ。頭が痛くなる感じが実に夏って感じがする。
「……メロン、ハルカも、食べたいな」
「いいぜ」
氷をすくって古宮の口へ持っていく。
自然にこんなことしているから恋人のように思われてしまうのかもしれないなと、ふと思う。
「……浅川くん、はい」
お返しにと、古宮は自分のカキ氷をすくって俺の口へ入れた。
イチゴと練乳の甘さがマッチしていてとても美味しい。
「……関節キス、だね」
「関節キスはキスのうちに入らないと思うんだ。だから俺はそこまで気にしない」
「……つまんないの」
からかうつもりだったらしい古宮は拗ねたように頬を膨らませた。
お餅のようにふっくらと柔らかそうな頬に触ってみたい衝動に駆られたが、なんとか耐え抜き話題を振る。
「あとでやるスイカ割り、普通だといいな」
「……つもりちゃんが、発案の時点で……普通では、無いと……思うよ」
「うん。だよね。分かってた」
「……被害に、あうのは……反町くん、かな。頭、ぼーん」
「嫌な効果音だな……。破裂というより爆発だ」
「……お葬式の、準備……しない……と?」
「古宮?」
ピタリと古宮の動きが止まる。
目を見開いて何かを見ているようだった。
「……は?」
そこに視線を移した俺は真顔になった。
あまりにも異常な光景に危うくカキ氷を落としそうになってしまう。
なにがどうしてこうなった?
「隼人ぉ、遥香ちゃーん……助けてくれ……俺まだ死にたくないんだよ……」
「隼人くん、遥香ちゃん……先輩を、可哀想な先輩を、どうか……どうか助けてぇ……」
砂浜に頭だけ出している反町と榊先輩。
一言で言ってしまえば……埋まっている。
「あ、おかえり。二人とも」
「……つもりちゃん、何してるの」
スコップを持って何やらやり遂げたと言わんばかりの清々しい表情を浮かべている雪原に古宮が問いかける。
「何って……どっからどう見てもスイカ割りの準備だけど」
「……どっから、どう見ても……そうには、見えないよ?」
同感だ。と、俺は頷く。
雪原はスイカを持って二人の間に立つ。
「まず二人の頭の間にスイカを置きます」
「「ひぃぃ」」
ボスンと、落とされたスイカが沈む。
顔の真横に軽く5kg以上はある物を落とされるなんて恐怖以外の何物でもないだろう。
「そして――恋歌! ちょっと来て!」
「?」
少し離れた位置で砂浜にいた小さなカニと遊んでいた十堂を呼ぶ。
砂浜に足を取られながらもこちらにたどり着いた十堂に雪原は海の家で借りてきた例の物を渡した。
「……何故わたしに木刀を?」
「カチ割って欲しいから」
視線を下に向けた十堂は一瞬考え込んだ後、もう一度雪原を見た。
「あの、つもり先輩。わたしはどっちの頭をカチ割ればいいんですか?」
「「ちょ」」
埋められている二人の声がハモった。
「基本的にはスイカをお願い。んで、恋歌には目隠しさせるから浅川と遥香でスイカまで導いてあげて。ちゃんと指示しないと割るのはスイカじゃなくて二人のどっちかになっちゃうから」
「……ハルカ達、責任重大……だね」
「確かに。反町を助けるか榊先輩を助けるか……。うーん、悩むな」
「おい隼人!? スイカを割って二人とも助けるって選択肢はお前の中に無いのか!?」
「え? 無いけど」
「隼人くんの鬼ーーーーー!!」
「いやぁ、照れるなぁ」
「褒めてないよ!!」
二つの頭が砂から必死に抜け出そうとしているがビクともしない。
「……つもりちゃんは、何するの?」
「私? 私は発案者だから観戦」
「普通発案者って積極的に参加するもんだよな?」
「見てた方が面白そうじゃん。それと――恋歌の運動神経がどんなものか知っておきたくてね」
「スイカ割りで運動神経が測れるものなのか……?」
「細かいことは気にしない主義。恋歌、準備よろしく。後ろの方に線引いてあるからそこまで移動して。あ、これ目隠し」
「分かりました――って、アイマスクじゃないですか。まぁいいですけど」
木刀を引きずりながら歩く十堂。
周りの人間がギョッとして十堂を見ていた。
「つもり先輩。この線ですかー?」
「そうそれー」
雪原の引いた線はスイカから15mほど離れたところに引かれていた。
近いとも遠いとも言える絶妙な距離である。
「アイマスク付けたらスタートねー」
「了解ですー」
返事をして十堂はアイマスクを付ける。
そして片手で持っていた木刀を両手に持ち直し、ゆっくりとその剣先を下げ――脇構えのスタンスを取る。さらに腰を低く下げ、右足を一歩後ろに下げた。
「……え、ちょ? なんで恋歌ちゃんあんなマジな構え取ってるんですかね夜乃先輩」
「だだだ大丈夫だよ優誠くん!! 脇構えはカウンター狙いの構えだから何の心配もないよ!!」
「――違いますよ、先輩方」
ダラダラと冷や汗を流す反町と榊先輩に十堂は告げる。
「これは恋歌流抜刀術三式――月光の構えです」
「何それかっこいい。でも恋歌流ってなに」
「たった今考えました。ちなみに月光は――」
グッと引いた右足に力が込められる。
「またの名を――水平切りと言います」
「待って恋歌ちゃん!? それ誰か一人どころかまとめてズバンだよな!!?」
「いやぁぁ!! 私まだ死にたくないぃぃ!! 誰かだずげでぇぇぇ……」
ぎゃーぎゃー叫ぶ反町とマジ泣きの榊先輩。
傍から見れば生首が喚いているようにしか見てないんだろうなぁと思いながら十堂を見る。
「隼人先輩、遥香先輩――指示を」
「えーっと、とりあえず真っ直ぐ」
「了解です……!」
地面を蹴った。
砂に足を取られるかと思いきや、そこはきちんと調整していたのだろう。完璧と言えるスタートダッシュを決めた。
「てか走るのかよ」
「……恋歌ちゃん、そのまま……そのまま」
スイカとの距離がどんどん縮まっていく。
あと2mちょいというところで、カッと古宮の目が開かれた。
「……跳躍しつつ、木刀、振り上げて。そして――」
言われるがままに大きく跳躍して木刀を振り上げる十堂。
ていうか砂浜でよくそこまでジャンプできるな……。
「……やっちゃえ、恋歌ちゃん」
「了解です――はぁぁぁぁぁあああああ!!!」
※あくまでただのスイカ割りです。
木刀が振り下ろされると同時に、固い何かが割れる音と共に赤い汁が飛び散る。
「……またつまらぬものを割ってしまった」
十堂はそんなセリフと共に木刀に付着した赤い液体を振り払った。
※ただのスイカ割りです。流血シーンではありません。
「すごいね恋歌。スイカ綺麗に六等分に割れてる。で、横の二人は何で呆然としてるの?」
分かりきっているだろうに呑気に笑う雪原。
「それに二人をカチ割るなんて恋歌がわざとやらない限り有り得ないから」
「……どういう、こと?」
古宮は首を傾げる。
「これですよ、遥香先輩」
「……アイマスク?」
「付けてみれば分かります」
「……?」
訝しげに首を傾げながらアイマスクを付ける古宮。その瞬間、あっ……と声を上げた。
「……これ、透けてるんだ。ほら、浅川くんも、見てみなよ」
手渡されたアイマスクを付けて納得する。
確かに十堂がわざと間違えない限り二人が犠牲になることはない。
「ほら、いつまでそうしてるつもり? スイカ食べたくないの?」
「……つもりちゃん、まず、そこから……出して、あげないと」
「仕方ないなぁ。浅川、手伝って」
「あいよ」
それから雪原と協力して二人を掘り起こし、十堂が六等分してくれたスイカをのんびりと食べたのだった。
海でスイカ割り――悪くはなかった。
楽しいと時間が過ぎるのは早いもんだ。気づけば夕方になっていて俺たちは片付けをしてホテルへと足を向けていた。
to be continued
心音です、こんばんは。
今回のお話は何故かやたら長くなりました。
遥香にサンオイルを塗るシーンはちょいとエロかったですね。一応18禁のお話も書いているのでたまーにああいう表現も書くかもしれません。
さて、メインのスイカ割りは如何でしたか?サンオイルの後だったのでちょっと印象は薄いかもしれませんね。
それでは次のお話でお会いしましょう。
あ、ちなみに次回は夜の海のお話になる予定です。お楽しみに。




