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恋と約束の交響曲  作者: 心音
共通ルート02
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第36話『夏休みの予定は?』


「結果発表ーーー!! いえーーーい!!」


オール明けでテンションがおかしくなった雪原がレモンスカッシュの入ったコップを片手に立ち上がった。


「……オール明けってあれだよな。雪原みたいになるか、古宮みたいになるのかの二択だよな。ふぁぁぁ……」


ちなみに古宮はテーブルに突っ伏して寝落ちている。

俺も当たり前のように後者だ。今だって油断したら三秒で寝れる自信がある。


「……あそこまでテンションが高いのも珍しいと思うぞ……。完全にキャラ崩壊してるし。あれ本当につもりちゃんかよ」


「残念ながらあれはつもりちゃんだよ……。肝試しの時と性格が違いすぎて怖い」


榊先輩はブルっと体を震わせる。


「感情のない瞳で、ガラスの鈍器みたいなの振りかざして私の真後ろの壁に思いっきり振り下ろすんだよ……。あまりの恐怖に悲鳴あげた後気絶しちゃったし……」


「……あの悲鳴、そういうことだったんですか」


「そういえば反町は古宮と一緒にいたみたいだが、組んでいたのか?」


「ん? いや……あれは組むというかなんというか……人質を――ぬいぐるみ質を取られていたせいで無理矢理みたいなもんだな」


反町はため息を吐きながら眠っている古宮に視線を移す。


「結局、ぬいぐるみ質は解放されることなく炎に包まれていったが……」


ああ……古宮は発火装置をそう使ったのか……。


「みんなうるさい!! 結果発表するからちょっと口閉じて」


「お前が一番うるせーよ」


「うるさい。バカでアホでドジでホモな反町は黙ってて」


「バカでアホでドジは認めるが、断じてホモじゃねーよ!!」


「男の人でドジ属性とか……誰得ですか」


「さり気なく恋歌ちゃん酷くね!?」


「とりあえずバカでアホな優誠くんが黙ってくれないと話が進まないみたいだから静かにしよ」


「夜乃先輩まで!!?」


「黙れホモ」


「だからホモじゃないって言ってるだろ!?」


「あ、あの……お客様?」


「お客様じゃねー……いや、お客様だ。てかすいません。うるさかったんですよねごめんなさい!!」


苦笑いを浮かべる店員さんに平謝りする反町。

店員さんが自分持ち場に戻ったところで反町は俺達の方へ向き直る。


「お前らのせいで怒られたじゃねーか……」


「自己責任。とりあえず、遥香寝てるけど結果発表しちゃうから」


コホンと、それっぽく咳払いを一つ。

雪原はスマホから卒業式の卒業証書授与の時に流れる音楽を流しながら手に持っていた丸められた紙を広げた。


「じゃん」


豆粒サイズの字が書かれていた。


「字ちっさ!? そもそも、わざわざ紙に書く必要あったのかよ」


紙の大きさのわりに書かれている字が小さくて読めなかった。


「気分の問題――って言いたいところだけど、眠さで頭のネジが飛んでるみたい。早いとこ寝かせて」


欠伸をしながら雪原はビシッと指を指す。


「一位は恋歌。はい、みんな拍手」


パチパチパチと手を叩く雪原。


「それっぽい音楽流しておきながら単調としすぎだろ。とりあえず恋歌ちゃんおめでとう!」


「おめでとう十堂。流石だな」


そう俺が言うと十堂は何か言いたそうな目でこちらを一瞬見たが、すぐに逸らした。

おそらく俺が十堂を外に移動させたことに気づいているのだろう。俺のぬいぐるみは十堂を寝かせたベンチのすぐ側に置いておいたから気づくのも当然といえば当然だ。

全員が十堂に「おめでとう」と声を掛け終えたタイミングで十堂は小さく頭を下げた。


「ありがとうございます」


「んじゃ、一位取った恋歌にはなにか一言貰おうかな」


右手をマイクのようにして十堂の前に差し出す。


「そうですね……。とりあえず、この手のイベントをやる時は次から絶対的な用心をしようと思います」


「やっぱり驚いたよねー。私も最初は死ぬほど驚いたもん」


榊先輩はうんうんと頷く。


「死ぬほどって……夜乃先輩それは大袈裟すぎじゃないですか?」


そう反町が言うと先輩は急に哀愁の漂う瞳で窓の外を見上げた。


「大袈裟……ね。ふふっ」


「な、なんか……急に夜乃先輩の雰囲気が変わりましたね……。何があったんですか」


恋歌が戸惑う。


「なんだっけかな……。確かその時のイベントは鬼ごっこで、榊先輩が逃げる側だったわけだが――」


「みなまで言わなくてもいいです。なんとなく想像がつきました」


「傷を抉るのもあれだしな」


笑いながらコーヒーを口に含む。

程よい苦味が口の中に広がる。いつもはミルクを一つ入れるのだが、今日は眠気を取るためにブラックにしている。


「んで、次最下位の発表だけど……みんな分かってるよね?」


「……」


全員無言で雪原から目を逸らした。


「逸らすな逸らすな。現実を受け止めて。この私が自分の負けを受け止めているんだから」


「なんか妙に説得力あるな……」


「つもりちゃんほとんど負け無しだったからねぇ」


基本的に雪原はスペックが高い。

勉強は出来るし、容姿だって申し分ない。

悪知恵だって人一倍働く。だからこの手のイベントは雪原は強いのだ。


「今回は特別に恋歌は二つ罰ゲーム決めていいってことにしよ。初参加初一位なんだから」


「あ、それは嬉しいです」


……何故だろうか。

一瞬十堂がこっちを見て笑ったような気がした。

気がしたってだけで、表情はいつも通りだったわけだが。


「……というか、こんなにも話し始めたのに遥香ちゃん起きる気配ないぞ」


「遥香は普段から早寝早起きだから、オール慣れはしてない。仕方ない」


レモンスカッシュを一気に煽る雪原。

バンっと置いたコップから水滴が飛ぶ。


「てことで恋歌、罰ゲーム決めていいよ」


「何でもいいんですよね?」


「人間に出来る範囲なら。あと金銭面は高額はダメ」


「金銭面は高額はダメ、ですか。なら――隼人先輩」


なぜこのタイミングで俺を呼ぶ。


「一つ目の罰ゲームはこの店隼人先輩の奢りってことにしましょう」


ピンポーン。

十堂がそう言った瞬間、店員を呼ぶためのベルが鳴った。

ディスプレイに表示されている番号は俺達のテーブルの卓番号。


「お待たせいたしました!ご注文は何でしょうか?」


「……ホットケーキのブルーベリーシロップかけ一つと、コーヒーのおかわり、お願い……します」


「古宮ぁぁぁぁぁあああああ!!! こういう時だけ起きるんじゃねぇぇぇぇぇえええええ!!!」


たまらず叫んでいた。


「わたしはサンドイッチと季節のサラダセットで、コーヒーのおかわりもお願いします」


「あ、じゃあ私もそれにするー。すいません、サンドイッチのもう一つで」


「俺は石焼きハンバーグ。ライスとスープつけてください」


「じゃあ……炙り明太子のスパゲッティ。あとレモンスカッシュ」


しかし、そんな俺の魂の叫びは次々に入る注文によって押し潰された。

こいつら遠慮ってものを知らないだろ絶対。


「そちらのお客様はどうなされますか?」


「あー……じゃあ俺も炙り明太子のスパゲッティで。コーヒーも下さい」


「かしこまりました。では失礼致します」


礼儀正しくペコリとお辞儀して店員は持ち場に戻っていった。


「これで昼ごはん代が浮きました。ありがとうございます、隼人先輩」


「なーに、当然のことよ。みんな食え食えー」


半ばやけくそになっていた。

こんな罰ゲームがあと一つきたら精神的に死んでしまう。

ため息を吐きながらテーブルに伏せる。


「では、二つ目ですが……これは罰ゲームというより希望ですね」


「希望?」


「はい。今年の夏休み、皆さんと海に行きたいです」


俺は顔を上げる。

十堂からこういった提案をするのは珍しい。

思っていることは他のみんなも同じだったのだろう。目をぱちくりさせていた。


「えと……何で黙り込むんですか? ダメでしたか?」


「ううん、そんなことない。むしろ嬉しかったよ」


雪原は嬉しそうに笑った。


「嬉しい、ですか?」


首を傾げる十堂。

そんな十堂の頭を雪原は撫でる。


「だって恋歌、今までこんなこと言い出してくれなかったじゃん。こっちが誘えばちゃんと来てくれるのはいいけど、たまには恋歌からも何か提案して欲しいって思ってたから」


「……」


頭を撫でてもらっている十堂は恥ずかしそうに俯き、小さな声で「ありがとうございます」と声を零した。


「夏休みは海に決まりだな」


「その前に期末テストが待ってるよ? まぁみんなそれほど心配してないけどね」


榊先輩も俺たちもテストは基本的に平気だ。


「先輩たちの成績を聞いた時耳を疑いましたよ。特に優誠先輩」


「やっぱ恋歌ちゃんさ、俺にだけあたり強いよな?」


「……気のせいです」


十堂はあからさまに視線を逸らした。

どっと笑いが起こる。

眠気なんていつの間にか吹っ飛んでしまっていた。


「今回はみんなで勉強会とかしてもいいね」


「お、いいな。けど、どこでやるんだ?」


「私の家。テスト期間中、親出張だからいない。だから泊まり込みで行けるよ」


雪原の家は大きいから六人くらい余裕で入る。

みんなで勉強会兼お泊まり会をするにはもってこいだったりする。


「みなさんに勉強教えておもらいたいです」


「……いいよ。国語系統なら、任せて」


古宮は親指を立ててグッドサインを作る。


「各教科の学年一位が揃ってるからな。十堂も目指せ学年一位だ」


「ぜ、善処します」


「私はオールマイティだから何でも聞いていいからね!」


榊先輩は腰に手を当ててえっへんと胸を張る。


「とりあえず皆さんがいれば心強いです。よろしくお願いします」


「了解ー」


話がちょうどまとまったタイミングで頼んだ料理が運ばれてくる。

美味しそうな匂いが食欲をそそる。


「よーし、俺の奢りだ。みんな食えー」


「ありがとうございます、先輩。ではいただきます」


昼時の喫茶店。

俺たちの明るい声が響いていた。



to be continued

心音です。私用でアップが一日遅れてしまいました。すいません。


さて、今回のお話は罰ゲームというよりは夏休みの予定ですね。もちろん海ですので水着回がございます。楽しみにしててください。

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