S3-10 喉乾いた。
観測者
[ようこそ、主婦転の世界へ。]
[これは、映像脚本型小説です。]
[投稿時間分析中です。]
「そわそわしてどうした」
ソファーに座る、
父さんの声は、穏やかだった。
直樹
「いや…実はさ」
「歌詞作ろうってフェルと約束してて」
「なかなか、アイディア浮かばなくて…」
大地
「休日くらい休めばいいだろうに」
「……」
「来週から初任務だろう」
「……へまするなよ」
視線を
合わせた。
直樹
「わかってるよ…」
肩を、
すくめる。
直樹
「その為には、歌詞が必要でしょう」
「……」
「ラファルサ不在で大丈夫なわけ?」
大地
「俺が行く…不満か?」
不敵に笑む。
直樹
「失礼しました」
軽く、
頭を下げた。
直樹
「母さんは?」
「朝からいないけど…」
大地
「休日出勤だ」
「ラファルサの分をやってもらってる」
「あのバカ…」
ため息。
大地
「なぜ、代わった」
直樹
《善意はたまに周囲に迷惑を掛ける…か…》
Guiar
[通信を受信。]
腕時計を、
覗き込んだ。
受信先が、
表示されている。
直樹
「フェルから?」
「応答して」
Guiar
[了解。]
直樹
「もっしー?どうしたん?」
フェル
[おう。直樹。]
[いまどこに居るんだよ。]
直樹
「…秘密」
フェル
[何でだよ。まあいいや。]
[お前いま暇だろう?俺の部屋に来て。]
直樹
「失礼だな。まぁ…」
「いや!暇じゃねーよ!」
フェル
[何?デート中?]
直樹
「ちげーよ!」
フェル
[いますぐ俺の部屋来い!]
[座標…いま送った。来いよ!]
直樹
「わかった。わかったってば」
Guiar
[通信終了。]
直樹
「父さん」
大地
「フェルのところ行くんだろ」
「俺はひとりで…」
「……」
「寂しくテレビでも見てるさ」
直樹
「父さん…」
大地
「気にするな。行ってこい」
直樹へ笑む。
親指を立てた。
直樹
「うん…」
拳を、
父へ差し出した。
そっと重なる。
直樹
「いってきます」
大地
「いってらっしゃい」
音もなく、
静かに基地へ転移した。
私室で、
制服へ着替える。
Guiar
[Dimilと会うのか。]
直樹
「嫌なの?」
Guiar
[嫌じゃないんだけど…。]
直樹
「じゃないけど?」
Guiar
[Doviraが…。]
直樹
「浮気ですね!!か…クフッ…」
Guiar
[笑い事じゃありません。]
直樹
「すまん。すまん」
「俺がギアルを護る」
身なりを整え、
部屋を出た。
Guiar
[信じてます。]
首の後ろを、
そっと撫でた。
Guiar
[……。]
ふっ
笑みを浮かべた。
直樹
「え。ここ?近」
座標を示すUI。
私室から、
そう離れていなかった。
直樹
《どう入ろう》
《待った?…キモいな》
《……》
スキャナーへ手をかざす。
直樹
「ピポピポピポ」
フェル
「………」
無言で、
向き合う。
沈黙。
フェル
「今の何」
直樹
「入店の音」
真顔で答えた。
フェルは、
吹き出した。
お腹を抱えて悶絶している。
直樹は、
耳まで熱くなった。
うつむき加減で頭を掻いた。
Guiar
[Dimil。こんにちは。]
Dimil
【…すっ…】
フェルの、
悶絶がさらに悪化した。
直樹は、
戸惑った。
落ち着くのを静かに待った。
フェル
「ごめん…ふぅっ…」
「涙出るほど笑ったの、めっちゃ久々」
直樹
「よかったな」
呼吸を整え、
涙を拭った。
フェル
「なぁ、今日は色々聞かせてもらうからな」
「ぜってー」
「逃さねーからな」
直樹
「え。じゃあ帰っていい?」
フェル
「逃がすか!」
直樹の、
腕を掴む。
逃げる気配はない。
直樹は、
フェル見つめるだけだった。
直樹
「今日は何?」
フェル
「歌詞一緒に作ろうって思って」
UIに浮かぶ、
メモ帳を開く。
フェル
「少しだけ書いたんだ」
「お前は?何か書けた?」
直樹
「全然…」
フェル
「全く書けないの?」
直樹
「そもそも、作詞なんてやったことないし」
2人は、
ベッドへ腰掛けた。
フェル
「教えてやろうか?」
直樹
「…え」
Guiar
[フェルは元歌手ですからね。]
直樹
「作詞は別の人に頼むもんじゃないの?」
フェル
「書けないわけじゃない」
「ただ…自信がない……」
直樹
「この間の、フェルの歌だろ?」
フェル
「歌詞は俺じゃない」
頬を、
赤らめている。
直樹
「格好よかったぜ!」
フェル
「よせよ…」
肩を叩かれた。
フェル
「書こう。時間がもったいない」
直樹
「思い出せないんだよな…」
「南戸中将が戦闘態勢に入った後から…」
フェル
「俺も…」
Guiar
[私もです。]
「「……」」
フェルから、
ファイルが転送されてきた。
UI内でファイルを開く。
直樹
「スゲー…」
静かに詞を、
発声した。
「“胸の奥から湧き上がる”」
「“その炎は火種となり”」
「“あなたへ燃え移るだろう”」
「“全身から闘志を燃やせ”」
「“戦場を燃やすのはやめよう”」
「“生きる循環を止めないで”」
直樹
「…え。これ熱くね!?」
フェル
「そうか?」
「……」
「その…続きが書けないんだよ」
「お前は護るバフだろ」
「だから…」
直樹
「 “護る” 詞を書けばいいってこと?」
フェル
「そう」
直樹
「何を書けばいいんだか…」
フェル
「来週から任務だろ」
「現場で護りたい気持ちを思い描けばいい」
「1行書いてみ」
直樹
「えー…じゃあ…」
「“迷わないで”」
フェル
「からの?」
直樹
「“その迷いは、直に消えてなくなるだろう”」
フェル
「……できてると思うが」
「……」
「整えてやろうか?」
「整える?」
「うん。例えば…」
「 “迷い” “の霧は” “直に晴れるだろう”」
直樹は、
一瞬、言葉を失う。
直樹
「…お前天才?」
フェル
「前奏は俺のと同じでいいとして」
「“胸の奥から湧き上がる”」
「“その炎は火種となり”」
「“あなたへ燃え移るだろう”」
「“迷いの霧は直に晴れるだろう”」
フェル
「どうだ?」
直樹
「冷房効きすぎてね?」
フェル
「暖房だが…」
直樹
「あ。季節違うんだった」
フェルは、
首を傾げた。
フェル
「ディミル。試しに曲刻んでみてよ」
旋律が流れ出した。
リズムを刻みながら。
口ずさむ。
「♪胸の奥から湧き上がる♪」
「♪その炎は火種となり♪」
「♪あなたへ燃え移るだろう♪」
「♪全身から闘志を燃やせ♪」
「♪戦場を燃やすのはやめよう♪」
「♪生きる循環を止めないで♪」
フェル
「ディミル。Stop!」
曲が、
静まる。
フェル
「こんな感じ」
「全身から〜の部分を、迷いの〜に変えればいいだけ」
直樹
「へぇ…」
「めっちゃ鳥肌立った」
フェル
「俺は全身から〜の後は…」
「“戦場を燃やすのはやめよう”」
「“生きる循環を止めないで”」
「にした」
「お前はどうする?」
直樹
「護る・労る感じでいいのか?」
フェル
「ああ」
直樹
「戦場ってさ…暑い中、喉乾くだろうな」
フェル
「…はい?」
直樹
「喉乾いたー…」
フェル
「そっちかよ」
「コーラでいいか?」
冷蔵庫から、
飲み物を取り出した。
直樹
「雫…か」
フェル
「ん」
缶コーラが、
頬に触れる。
直樹
「つめて!!」
「…」
受け取る。
直樹
「ありがとう」
フェル
「“葉に付いた雫は、喉の渇きを潤すだろう”」
直樹
「え?」
「お前…」
「魔法使い?」
フェル
「何バカなこと言ってんだ?」
――パカッ しゅわ〜
フェル
「かぁ〜」
直樹
「だってさ…」
――パカッ しゅわ〜
直樹
「呪文みたいだったぞ」
「……」
「くぅ〜」
フェル
「おっさんかお前」
視線が重なる。
フェル
「続き書こう」
直樹
「こっち見んな」
フェル
「こっちの台詞だ」
直樹
「♪こっち見て〜♪」
フェル
「……」
「ありだな」
Guiar
[こんな調子で、こいつらの歌詞が完成した。]
[Dimilの曲に合わせて2人は歌った。]
[何度も、歩調を合わせて、繰り返した。]
[私は…ただ聴いてるだけですよ。]
[部屋の外では隊員たちが大勢立ち止まってます。]
[聴き入っていたことは、2人には秘密ですよ。]
Next time
――本番。
観察者
[この何気ないやり取り。]
[……。]
[続きは明日…。]




