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転生時に貰ったギフトで異世界をのんびり旅します  作者: きさらぎみな


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第013話 資料室と辺境伯

 昨日同様、鼻と口を布で覆い、冒険者ギルドに向かって街中を歩く。

 道順は記録できているが、昨日とは反対に進む為に少し迷いそうになる。


 なんとか冒険者ギルドに辿り着き、建物の中へと入る。

 受付は事務作業で忙しそうにしているが、冒険者の姿は殆ど見えない。

 やはりこの世界の基準からしたら、俺の行動は遅すぎたようだ。


 周囲の店の冷やかしに行こうと思っていたが、ここには資料室があるという事を思い出した。

 受付に行き、資料室の場所と使い方を聞く。

 資料室は2階にあり、中に担当者はいるが、断る事なく自由に閲覧していいようだ。

 貸し出しはしておらず、勝手な持ち出しは禁止との事。

 お礼を言って、2階への階段を上る。


 2階の廊下は吹き抜けの回廊になっていて、1階のロビーフロアが見下ろせる。

 奥に進んだ先、廊下は少し暗いが、周囲が静かな場所に資料室はあった。

 部屋の中は、資料の保存の為なのか、灯りの節約なのか、読書をするには少し薄暗く感じる。

 入り口近くに座って作業をしていた職員に軽く会釈をし、資料を探し始める。


 本や紙が高いのか、日本で想像する資料室よりは閲覧できるものは少ない。

 それでも全部読むとすれば数日がかりだろう。


 羊皮紙を何枚も重ねて紐で綴った本や、薄く削られた木板を綴った本など、様々な本がある。

 背表紙などはない為、1ページ目の内容で、書かれている事を判断する必要がありそうだ。

 ばらけやすそうな本もあり、一冊ずつの確認だけで結構神経を使う。



 周辺の魔物・魔獣についての資料を見つけたので、これを読むことにする。

 ちなみに書かれている事は普通に理解できる、この体を与えたくれた少年には感謝しかない。


 領都の周辺には、南東、南西、北に森がある。

 大河を渡った先にある南東の森はアイアン以下の冒険者向け狩場。

 素手や棍棒を持ったゴブリンやコボルドなどの魔物、兎系や狼系の魔獣が出る。


 俺が最初に居た場所、街道を進んでいた際に左手側にあったのが南西の森、ダマスカス以下冒険者向け。

 猪系や鹿系などの中型の魔獣や、少し奥に行くと武器を持ったゴブリンやオークなどの魔物が出る。


 北の森はシルバー以上推奨の高難易度な狩場。

 上位とされる魔物や、蛇系や猿系など厄介な魔獣や、大型化した魔獣が多い。

 そして北の森の先にある山脈は、森の魔物が可愛く見えるレベルの魔境なので、絶対に近付くなと書かれていた。


 それと北東の雪原には氷山があり、その麓にはダンジョンがある。

 ダンジョンまでは領都から歩いて7日程度かかる上、半分は雪の上を行動する事になる。

 雪原にいる魔獣は強さもあるが見つけ辛いので注意が必要との事。

 そしてダンジョンは氷の迷宮と言われ、奥へ進むにつれ、敵の強さもさることながら、寒さもまた増していく。

 動きを損なわない寒さ対策が必須のダンジョンだ。



 安全が確保されるのならダンジョンも行ってみたい。

 読んだ資料を片付け、次に興味をそそられそうなものを探す。

 次に見つけた資料は魔物や魔獣の生体についてだった。


 魔物とは瘴気溜まりから生まれた存在。

 肉体を持っているように見えるが、実際は全て瘴気で構成されている。

 討伐後、プレートを一部でも透過させると肉体全てがポイントへと変換され消滅し、淀んだ魔石が残る。


 魔獣とは周囲の瘴気によって変異した動物や昆虫などの総称である。

 元の動物よりも狂暴化し、長命になり、成長が早く、巨大化しやすい、繁殖力が強まり、多産になりやすくなる。

 討伐後、プレートを一部でも透過させる事で、体内の瘴気を全て吸収しポイントに変換できる。

 瘴気がなくなれば通常の動物のように、その肉や皮など様々な部位が活用できるが、魔石は持っていない。


 ダンジョン内に存在する魔物は、全てダンジョンが生み出した存在。

 外にいる魔物とは違い、魔力で構成されている。

 討伐後、即座に消滅し、一つの属性に偏った魔石と、アイテムなどがその場に残される。



 魔物は不思議生物のようだ。

 その後、周辺の植物に関する資料や、この世界の伝承などを読むことができた。


 体感で2時間以上は経ったと思う、正午まではあと30分ぐらいだろう。

 午後の予定の前に、腹を満たそうと思い、資料室から退出する。

 ロビーフロアまで戻り、酒場に近い出口へ向かう。

 ギルドの敷地内には1階が酒場になっている建物がある。

 この建物の上は新人冒険者などが利用できる格安宿舎となっている。

 ただし、雑魚寝部屋しかないらしく、俺の選択肢からは外された。


 酒場に到着し、中に入る。

 朝から夜まで酒も食事も提供しているらしい。

 昼食をとる文化がないのか、日本と同じで正午を過ぎてから食べるのか、人は殆どいなかった。

 給仕の人に聞くと銅貨8枚で日替わりがあるらしい。

 小銀貨1枚を渡し、席で待つ。

 使い勝手のいい小銀貨が残り1枚となり、その上は小金貨しかない為、どこかで両替できないだろうか。

 肉が焼けた良い匂いと共に食事が届く。

 今日の日替わりは黒パンとスープとボアのステーキらしい。

 お釣りも受け取り、さっそくフォークを手に持つ。

 ステーキはナイフを使わなくてもいいように既に切り分けられていた。

 その一切れを口に運び、咀嚼すれば肉のうまみを感じられる一品だ。

 塩味だけだが、それがうまさを引き出しているようだ。

 スープは宿と違い、具が少なかったが不味くはない。

 黒パンとスープと共に食べきり、満足の昼食だった。


 昼食も終わり、待ち合わせ時間も曖昧なため、ロビーで待つことにした。

 椅子に座って暫くのんびりしていると、カエラさんが近づいて来た。


「こんにちは、ヒュウガさん」

「カエラさん、こんにちは」

「少々お早いようですが、もしよろしければギルドマスターの部屋へご案内致します」

「ギルドマスターの部屋ですか?」

「ええ、そこで少し話し合いをさせて頂きたいそうです」

「わかりました、案内お願いします」

「はい、ではこちらへ」


 案内に従い、昨日と同じ部屋の前に辿り着く。

 カエラさんが扉をノックし、返事があった後、ゆっくりと開く。

 中に促され、俺は二度目のギルドマスターの部屋に入っていく。


「おう、ヒュウガ、よくきた」

「ギルドマスター、おつかれさまです」

「聞いたと思うが、少し話しておきたい事がある、大丈夫か?」

「ええ、ここに来る以外に予定はなかったので大丈夫です」

「よし、それじゃあちょっと移動するぞ、こっちの部屋だ」


 ギルドマスターはそう言って、執務室と続いている別の部屋へと進んで行った。

 自身の執務室内にあるというのに、ギルドマスターはわざわざノックをしてから扉を開けた。

 その部屋は冒険者ギルドとうイメージからしたら少々豪華な部屋で、高そうな敷物が広がる、応接室か何かのようだ。

 中に入ると、やはりそこには先客がいた。

 ソファーに座る20代後半ぐらいの気品を感じさせる偉丈夫と、後ろに控えるように立っている眼光鋭い男だ。

 偉丈夫は全てを見透かすような視線をこちらに向けており、ただ睨まれるよりも恐怖を感じる。


「突っ立てないでそこに座れ」

「あ、はい」


 ギルドマスターに促され、俺は偉丈夫の正面にあるソファーへ向かう。

 昨日の話し合いの後のことや、俺がここに呼ばれた事、そして偉丈夫の雰囲気。

 さすがに大体は察する事ができるが、そうだとしたら、ここに普通に座って良いのだろうか。

 そんな事を考えていると、俺の迷いを察してくれたのか男性の方から話しかけてくれた。


「やあ、初めまして。気づいているかもしれないが、ヴィルヘルム辺境伯の地位を仰せつかっている、ログナー・ヴィルヘルムだ。後ろに控えているのは護衛のダルガ。気にせずそこに座るといい」

「初めまして、ヒュウガと申します」


 俺はためらっていた足を完全に止め、丁寧にお辞儀をする。

 やはり予想通り、目の前の偉丈夫は辺境伯様だった。

 後ろの人は見た目通りに護衛だろう。

 これ以上立ったまま見下ろす形になるのも不敬にあたると思い、急いでソファーに座ることにした。


「君に関する報告を聞いたら、どうしても直接会ってみたくて、ここで待たせて貰っていた」

「お待たせしてしまったようで、申し訳ありません」

「こちらが勝手に待っていたんだ、気にしなくていい。それと言葉遣いとかも普段通りでいい、しっかりと話し合いが出来る事が重要だ」

「わかりました」


「早速だが本題に入ろう。ガルドからの報告では、馬車の不具合に気付ける能力、とてつもなく綺麗なトイレへ行くことが可能な能力、体や道具を一瞬で綺麗にする能力、まるで別人のように身綺麗になれる能力。君はこれらを使用でき、ギルドに協力する形でそれを商売にしようとしている。ただ、そのトイレのある場所で売っている飲み物が有用過ぎることで、扱いに困っている、という話だね?」

「はい、その通りです」

「その扱いを決める為に、こちらとしても先に確認をしたいことがある、その結果次第では、辺境伯家としては自由にしてくれて構わない」

「確認ですか?」

「ああ、ヒュウガとやら、君は他にも能力を隠している……よな?」

「えっ……」


 俺は突然の質問の内容に、言葉に詰まってしまった。

※ダンジョンの魔物が落とすアイテムは、肉体を構成していた魔力が変質して物質化したもの

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