第001話 転生
初投稿作品です
激しい衝撃と共に、俺の視界は歪んだ。
次の瞬間、俺は自分の体を真上から見下ろす事になっていた。
アスファルトに広がる鮮血。
ひしゃげたトラックのフロント部分。
野次馬の悲鳴があたりを包む。
「ああ、俺は死んだのか。まさか小説の世界のような死に方で逝くとはな」
自分の遺体を眺めながら、呆然と呟く。
「ええ、実に見事な死に様でしたね、神道飛河様」
突然背後から声をかけられ、飛び上がるように振り返る。
そこには、仕立ての良いスーツを着た男性が立っていた。
「ど、どちらさまですか?」
「お迎えに来た者、とでも言いますか、案内人とでも思って下さい。さて、時間が余り無いので話を進めさせて頂きますね。これから貴方様の『転生先』を決める為の、厳正なる抽選を行います」
そう言いながら男はなんの変哲もない四角い箱を差し出してきた。
上部に丸い穴が開いている、ボックスくじのようだった。
「これは?」
「中に入っているものを一つ引いて下さい。それが貴方様の次の運命を左右します、さあどうぞ」
運命と言われ腰が引けたが、覚悟を決めて箱の中へ手を突っ込む。
中には球形や方形、板状や棒状など様々な形のものが入っているようだ。
俺はその中から板状のものを選び、引き抜いた。
どうやら木板のようで、スマホよりは少し大きい、肌触りの良い板だ。
「はい、確認しました。おめでとうございます。それでは担当の者に連絡し、貴方様をそちらへお送り致します。その木板はそのままお持ちください。それでは、ご冥福をお祈り申し上げます」
男が丁寧に一礼した瞬間、突然俺の視界は切り替わった。
さっきまでの喧騒が消え、重厚な静寂が俺を包む。
気が付くと、俺は見知らぬ扉の前に立っていた。
扉に近づくと、目の前の扉は音もなく、自動で開く。
「失礼します」
一声かけ、俺は中に入った。
そこにはアンティークな調度品があるかと思えば、SFを思わせるような機械が並ぶ部屋だった。
まるで正反対な時代の融合だったが、不思議なほど美しく調和している。
その部屋の中央。
立派なソファーに、ちょこんと腰かけている人物がいた。
どう見ても少年に見えるが、死後の世界だ、見た目以上の年齢に違いない。
「よく来たね、とりあえずはそっちに座って」
少年に促され、おれは向かい側のソファーに腰を掛けた。
「僕が君の転生担当者だよ、神道飛河君だね」
「はい、そうです。宜しくお願いします」
「ここに人が来るなんて何年ぶりだろう。大体の人は、生まれた世界の同じ種族に転生するから、なかなか僕は担当にはならないんだよね」
「え、そうなのですか」
生まれた世界(地球)の同じ種族(人間)にはなれないって事か!?
動物とか、生き物でもないとか、そういうのか?
「ああ、僕は異世界転生の担当なんだよ」
「異世界!?」
俺は思わず叫んでしまった。
「す、すみません」
「気にしなくていいよ。最近は流行っていて説明が楽でいいし。そのかわり昔の人には説明が面倒だったんだよ」
「ありがとうございます」
「じゃあ、簡単に説明だけはしておくね。君が転生する予定の場所は、『グリュイ』と呼ばれる異世界。魔法文明が主となる世界だね。そこに記憶を維持したまま転生して貰う。体はこちらで用意するので、身内などはいない事になる」
「魔法があるのですか!」
「そうだね、そして君にはギフトと呼ばれる能力を一つと、最初に必要となるであろうアイテムを一式、それぞれランダムに与えるので、それらを持って異世界での新しい人生を楽しんでくれ」
「使命とかは無いのですか?」
「無いね。それじゃあ、説明は大丈夫そうだし、手続きを済ませようか」
そういって彼は周りにある機械の一つを指さした。
「そこにある機械に、君が引いて持ってきた木板を置いて」
指示された場所に移動して見てみると、そこには木板サイズの窪みと、ボタンが一つあるだけのシンプルな機械?があった。
「そこの窪みに木板を置いて、ボタンを押してくれ」
指示された通りにやってみる。
木板は気持ちが良いほどぴったりと嵌る。
そして、ボタンを押すと、木板に文字列が表示され、高速で切り替わっていた。
高速で表示される文字列にはとんでもないチートっぽい名前が何度か読み取れた。
これって、とんでもない能力が手に入るのか、俺の期待はどんどんと膨れ上がっていた。
「好きなタイミングで、もう一度ボタンを押せば止まるよ」
少年の言葉を聞いてボタンに手をかける、そしてここだというタイミングで、俺はボタンを押した。
その瞬間、切り替わっていた文字がピタリと止まった。
「乗物召喚+旅人セット?」
「へぇ、そっち系か」
俺の呟きに、少年が答えた。
「それは戦闘向きの能力じゃあないね。どっちかと言えば、生活向きの移動特化能力だ。魔物からの襲撃にも耐えられるはずだから、折角だし異世界を旅してみるのもいいかもね」
「いい能力ですね」
戦闘で命のやり取りをするより、のんびり旅をする方が俺の性には合っている。
「って、魔物、いるんですか?」
「いるよ、でも言った通り、そのギフトなら大丈夫、倒せなくても逃げられるさ」
「なるほど」
「納得してくれたところで、その木板を外してくれ、それは君の行く世界では、全員が持つ身分証になるから」
そう言われて木板を機械から取り出す。
木板にはさっきまでと違い、身分証のような表示がされていた。
それをのんびりと読む暇もなく、少年が声を掛けてきた。
「準備は終わった。ああ、最初の出会いは大切にするといいよ。それじゃあ神道飛河君、新しい世界を楽しんでおいで!」
少年がそう言いながら手を叩く、すると俺の足元から眩い光が溢れだし、俺の視界を真っ白に染め上げた。
こうして、俺の異世界の旅が始まったのだ。
2話・3話は説明回なので同日にアップします




