ほ・こ・た・て【二本と一枚目】
「あそこも!ここも!あっちも!お・に・くがな〜い!!」
シルファが涙を流しながら絶叫する。
大きめの街に着いて食事を取ろうと思ったのだが、どこもかしこも肉が売切れなのだ。
「何でどうして…。」
露店の前でシルファが力なくへたり込む。
「さっさと立て、迷惑だ。」
「ヤダヤダヤダ!お肉食べた〜い。」
カサカサと地面を這ってクロに近づき足に縋りつくと号泣しながら懇願する。
「そんなこと言ってもない物は無いんだよ」
槍を持っていない方の手で必死にシルファを足から剥がそうとするがどうにも離れそうにない。
「すまないね。最近家畜が襲われるのが続いてて肉が品薄でね。」
頭に布を巻いた店主がシルファを見つつちょっと引き気味に話す。
「野盗ですか?」
ケインもシルファの行動に若干引きつつ店主に話しかける。
「それが動物らしくてね。」
店主は頭に手を当てながら困った顔をする。
「この辺りは熊が出ることがあるんだがこれほどの被害は初めてだ。」
「食い散らかされた仲間を見たせいか他の家畜も怯えちまって、卵やミルクも品薄状態だし参ったよ。」
「卵やミルクなんてどうでもいいからお・に・く〜。」
泣きながら懇願するシルファの頭にクロの鉄拳が問答無用で振り降ろされる。
「ご迷惑をおかけしました。」
クロは連れの非礼を店主に詫びると、頭に大きなタンコブができて気絶しているシルファをズルズルと引きずっていった。
第2話 肉が為に腹は鳴る
それからしばらくして【ひな鳥】の片隅にクロ達の姿があった。
テーブルに顔だけを乗せ放心状態のシルファの前にはほかほかと湯気を立てた美味しそうなロールキャベツが置かれている。
「お肉…。」
「挽き肉すら貴重なんですからこれで我慢してください。」
ケインはシルファを慰めつつロールキャベツを美味しそうに食べる。
「お肉…。」
「無いものはない。」
クロはとっくに食べ終わりのんびりエールを飲んでいる。
「お肉…。」
「お口に合いませんでしたか?」
心配そうな顔をした看板娘がおそるおそる声をかけてくる。
「いえいえ美味しいですよ。」
ケインはそう言うと自分が食べようと思っていたロールキャベツをシルファの口元へもっていく。
シルファはパクリと食べるがいつもの勢いはなく牛の咀嚼のようにのんびりモグモグし続ける。
それを見た看板娘は申し訳ないといった感じに縮こまってしまった。
「冒険者の方たちを労うためにも塊のお肉を提供したいところですが、ギルドの仕入れも危うくなってきてまして。そろそろベーコンとかソーセージのような長期保存ができる加工肉料理がメインになりそうで困っています。」
「そのレベルか…。」
看板娘の話を聞いてクロは困った顔をしながらエールを飲み干すと空のジョッキを軽く振りおかわりを頼む。
「すぐにお持ちしますね。」
看板娘は空のジョッキを受け取ると小走りにカウンターへ戻っていった。
看板娘の後ろ姿をぼんやりと見ていたクロだが、なんとなく目の前の2人に視線を戻す。
「お肉の味がする…。」
「もう一口どうぞ。」
そこにはケインがシルファにロールキャベツを食べさせ続ける光景が繰り広げられていた。
このままだと、この街にいる限り延々とこの光景を見なきゃいけないのか?という疑問符がクロの頭をよぎる。
「お待たせしました〜。」
看板娘が愛想よく持ってきたおかわりを受取りながらボソリと呟く。
「依頼受けるか…。」




