ダンジョン
誤字脱字あるかもしれません、ご了承ください。
「アミィ!もっと腰を捻りな!もう7匹追加で来るよ!」
「はいよー」
アイミスから激しい指示がとんできた。
今私達は都市から少し離れた魔道士が訓練によく使うダンジョンに潜っている、ある程度武、体、剣術の基礎が固まってきたので実戦で使い方を体に叩き込まされていた。
いつもは炎弾中心に攻撃を組み立てて行くのだが武術と体術を鍛えるために魔法の類は禁止されている、もちろん刻印魔法もだ。
今は野生の熊が魔素を帯びて進化し額に角が生えた角魔熊 の群れに囲まれていた。
「ホイッ!」
2mはあるであろう巨大な体躯から振り下ろされた鋭い爪を避け、軽々と地面に投げつけ衝撃音共に絶命させる。
「グワァァァア!!」
二匹三匹と次々と襲いかかってくる角魔熊 の鋭い攻撃はことごとく空を切る。
アミィの打ち込む拳が空気を割く炸裂音と共に次々と血飛沫が舞う。
「この階層の深さだと角魔熊 が一番強い、その群れを数十秒で全滅かい、D級の魔物とはいえ上出来じゃない」
「……( •´∀•` )ドヤァ」
「――その顔、ウザイから辞めな」
アイミスに久しぶりに褒められてよほど嬉しかったのか渾身のドヤ顔をアミィが披露していると戦闘を見ていた数人の冒険者達がざわつき始める。
「何あの子?強過ぎない?」
「見ない顔だな、どこから来たんだろ」
「あの子に指示出してる人、アイミス様じゃない?」
「え?ほんとに?そんな訳ないだろ!」
「でもほら!目の下の刻印!」
「ホントだ!」
「人気者だね、アイミス」
「……ここは人が多い、もう少し下まで潜るよ」
ダンジョンは深く潜れば潜るほど出現する魔物の強さも上がる、既にアミィ達はD級以下の魔物が出てこない場所まで潜っていた。
あの一件以来アイミスはローブのフード深くを被ったままだ、騒がれるのは苦手らしい。
「今日はこの辺で野営するよ」
「あいよー」
ダンジョンの中には魔素が薄く魔物が存在しない安全な地帯が存在する、そこで火を起こし食事の準備をする。
さっき狩ってあらかじめ捌いていた角魔熊の肉と近くに生えてあった薬草などの野草をあらかじめ持ってきておいた調味料と煮込んでシチューを作る。
薬草は傷などを癒してくれるだけでなく疲労回復効果もある、香り良し、歯ごたえ良し、さらにフレッシュなので重宝している。
「――あんた、本当に見た目によらず食い意地が凄いわね」
虎視眈々と煮込んでいるシチューを眺めながらヨダレを垂らすアミィにアイミスが話しかける。
「うん、食べるの大好き」
「そうかいそうかい」
そう微笑みながらアイミスはシチューを私によそってくれた。
アイミスと旅を始めてから随分と食事のランクが上がった。
これまでは調理器具や調味料などは邪魔になるので丸焼きにして食べるしかなかったのだが、アイミスは収納魔法が使えるのである程度の物は持ち運べるのだ。
「うん、うまい、最高、おかわり!」
アイミスがアミィ専用の大きな器によそってくれたシチューをペロリと平らげるとお代わりを要求する。
「ゆっくり食べないと体に毒だよ」
「あいよー」
新たによそわれた熱々のシチューにかぶりつく。
あっという間に大きめの鍋にあったシチューが空になる。
「――まったく、その小さい体のどこに入っていくんだろうねぇ…」
「食べないと動けないからね」
私は周りと比べると少し体躯が小さいので周りより運動量が多くなる、さらに鍛錬と実戦は常人離れした量をこなすのでエネルギーが必要なのだと、自分の食い意地を心の中で正当化する。
「明日はC級ぐらいの魔物を狩るから早く体を休めな」
「あいよー、おやすみ、アイミス」
「おやすみ」
数十分後、調理道具を洗い、収納魔法で片付け終えたアイミスはスヤスヤと安心して寝ているアミィの寝顔を見て微笑む
「――随分と気持ちよさそうに寝ているじゃないか」
この旅でアミィは随分と明るくなった、最初に出会ったときは村の人には笑顔を振りまいていたが、一人になると暗い眼をしていた。
誰も信じていないような、そんな眼だった。
その美貌と隔絶した強さで誰も近寄りがたく、恋愛などを全くしてこず、結婚もしていないアイミスはふと、アミィを我が子のように撫でる。
焚き火の火を消しアイミスも眠りにつく。
ご拝読ありがとうございます!
まだまだ続きますので今後ともよろしくお願いします!!