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ユートリア大陸・三大国家と神々の事情

メアリーの故郷である異世界の設定になります。

【名の無き惑星】

地球とは違う、交わることのない全く別次元の異世界。

そこにはタコやクラゲのような怪物の類ではなく、地球と同じ二足歩行の「人類」が文明を築いていた。


この惑星の文明レベルを地球の歴史に例えるなら、近代化を始めたばかりの「中世後期」。

街を行き交う馬車の車輪には鉄が巻かれ始め、蒸気機関の黎明期の一歩手前といった過渡期である。


ただし、地球と決定的に違う点が一つだけあった。

そこには「魔法」が存在し、そして「魔族」との果てなき戦争が途方もない時間、続いているということだ。


【ユートリア大陸】

この惑星は、一つの巨大な大陸と無数の島々で構成されている。

総面積は地球のすべての大陸を合わせたものとほぼ同じ。その約3分の2を人間と獣人が、残りの3分の1を魔族が支配していた。


人々の移動手段は徒歩や馬が主流だが、エリート騎士団や大商人ともなれば、ワイバーン(飛竜)をテイムして空を駆ける。

種族を問わず魔法の才能を持つ者が多く、その中でも一握りの天才である高位魔導士は、空間を跨ぐ「瞬間移動」という超高等魔術すら操った。


――そして今、地球から異分子を呼び寄せた「勇者召喚」もまた、その魔術の極致と言える。


この世界の住人には、生まれながらに何らかの「加護」が付与される。

中でも『勇者』『剣士』『魔法士』の3つは【特別スキルレベル】と呼ばれ、一般的な限界点カンストは【Lv666】とされていた。

万が一にもその絶対的な壁を突破した者には、世界から『リミットブレイク』の称号が与えられ、大陸の覇者としての地位と強さが保障される。


限界突破後の最終的なレベル上限は【Lv999】。

しかし――未だかつて、そこに到達できた者は誰一人として存在しない、まさに神話の領域であった。


【人間領・フィルモア王国】

強大な軍事力を誇るフィルモア王国は、魔族領との境界線が領地の約半分を占める最前線の国家だ。

戦いの要たる要塞都市「バギ・ラカン」には、天を突くようなフィルモア城が聳え立ち、堅牢な防御壁に囲まれた城下町では数百万の民が慌ただしく暮らしている。


【フィルモア城・大広間】

今宵、城内は数十年振りとなる「対魔族戦の勝利」を祝う熱気に包まれていた。

王民には惜しみなく酒が振る舞われ、夜遅くにも関わらず、繁華街からは歓喜の歓声が絶え間なく響いている。


「喜べ、我が王民達よ! ついに魔族の領土を切り取り、我がフィルモア王国の領地としたのだ!」


バルコニーから民衆へ向けて朗々と戦果を述べているのは、若き国王、ミラード・オブ・シャルペ・フィルモア。

十数年前、突如として城内に魔族が襲来した「バギ・ラカン防衛戦」で前国王が戦死したため、僅か18歳にして王位を継いだ男だ。


長めの金髪に、澄み切った青眼。立派な髭を蓄えた「いかにも王様」な風貌の彼は、即位後、持ち前の「知略」によって大負けすることなく戦いを制し、若くしてこの時代の覇者となっていた。


「ミラード様。近隣の弱小国からの戦費、および服従の証である貢物(おんな)が届きました。今宵は如何なさいますか?」


側近の問いかけに、ミラードは冷徹な視線を向けたまま無言だった。


「その、計りかねるのですが……王族に由縁があるという、大変『熟された』方が含まれておりまして……」

「不快だな。俺はババ専ではない。年上すぎる女など使い物にならん、即刻送り返せ」


ぴしゃりと言い放った若き覇王の言葉に、側近は冷や汗を流して平伏した。

彼は冷徹非情な知略家だが、女性の年齢やスペックに関しては一切の妥協を許さない、ただの我が儘な男でもあった。


「は、畏まりました……! 陛下、ではかねてより問題となっております『あの件』は如何致しましょう」

「――フン。あの使えないポンコツ召喚勇者どものことか。いつも通り冒険者として放っておけ。戦えない奴に勇者の称号など不要だ」


戦力の要となるはずの『勇者』は、本来なら無敵のユニークスキルを持つ最強の存在のはずだった。

しかし、ここ数百年で召喚された勇者たちは何故かレベルが全く上がらず、とても実戦に耐える状態ではない。

一応、使えそうな奴を数名選んで前線に出してみたものの、全員「棺桶」に入ってのご帰還だった。


その結果にご立腹のミラードは、好みの女性(巨乳の若い美女)が来なかった苛立ちも相まって、冷徹に「自己鍛錬の厳命」を出すに留めた。


――だが、ミラードはまだ知らない。

この世界の「停滞した勇者システム」を根底から覆す、『レベル1.0の使えない召喚剣士』と、彼を見捨てず同行を決めた『美少女姫騎士(脳筋)』の幼馴染コンビが、紆余曲折を経て、間もなくこの王城に到着してしまうということを。


【ウィシュランド魔法皇国】

フィルモア王国と軍事力で肩を並べるウィシュランド魔法皇国は、エルフ族を主体とし、複数の獣人族が集まる多種族国家だ。

建国元年から水、火、風、光、闇、土の「六属性の妖精」を神として崇拝している。


「ククク、今回は人間ども(フィルモア)に大きな貸しを作ってやったな」


玉座で下劣な笑みを浮かべる国家元首、デゥエンディは、長く尖った耳、純白の髪、澱んだ銀眼を持つハイエルフ族だ。

しかし、世間一般で言われる「森の賢者」とは程遠く、その本性は強欲に塗れ、自ら最前線で暴れることを好む戦闘狂だった。一言で言えば、見た目通りの「嫌な奴」である。


「諸国から貢物と、戦費負担分の金貨が届いております」

「弱小国家からはもっと巻き上げろ。それと貢物は我が好みでなければ即刻払い下げだ」


領地が魔族領と接しているこの国は、今回の作戦にも魔法士と屈強な獣人族を大量に派兵し、大きな功績を挙げていた。

戦いに勝利したデゥエンディは同時に極度の守銭奴でもあり、他国から金を毟り取ることに余念がない。


「それでは、貧相な女は将軍達に払い下げます」

「ああ、それで良い。私の好みは知っているだろう? 身を清めて待たせておけ」


この王は、エルフ族には珍しく非常に「好色」でもあった。

というのも、同族のエルフの女性は胸の平坦さが「超残念」なことが多く、無い物ねだりからか、国王に就任してからはすっかり「巨乳好き」に全振りしていたのである。


「王民はお世継ぎを待ち望んでおりますぞ、デゥエンディ様」

「エルフ族の中でもハイエルフは妊娠しづらいのだ。まあ少し待て」


一般的に同族以外との交配は妊娠確率が極端に下がる。

貧乳嫌いが災いして同族を避け、お世継ぎ計画が全く進まない現状を旧知の執事長に催促され、デゥエンディはフンと鼻を鳴らして不機嫌そうに顔を背けた。


【工業国家・ツヴェルク帝国】

獣人族の中でも物作りに特化したドワーフ族が集まり、建国された国――それが工業国家ツヴェルク帝国。

フィルモアやウィシュランドに最新鋭の武器を供給し、今回の大戦を勝利に導いた「真の立役者」である。


「フィルモアとウィシュランドに対し、武器の補充を忘れるなよ」


常に強き者が統治する実力主義の社会で、力任せの舵取りを行う総統の名は、ヨハネ・グーテンベルグ・ツヴェルク。

ドワーフには珍しく167センチの高身長で、黒髪の短髪に真四角の顔を持つ、常に怒っているような強面の男だ。


「畏まりました総統閣下。……それと、いつものように他国から届いた貢物の女たちは送り返しますか?」

「フン、当然だ。そんなものをここに置くスペースなどない」


ヨハネは戦果に酔いしれることもなく、色恋にも一切靡かない真面目な堅物だった。

女性たちを一瞥することすらなく手のひらを振って追い払うと、すぐに手元の「鉱石等級リスト」へと目を戻す。


「うーむ……新製品の開発には、もっと強靭で、硬くて、それでいて『粘り』のある鉄が欲しいのだがな。……おい、さらに深い地層から良質な鉱石を探させろ」


この男――ただの堅物というよりは、研究心の塊である「偏屈な天才職人」であった。

彼が打つ武器の中でも、鍛冶屋としての腕の見せ所である『剣』は、そのほとんどをフィルモア王国が買い上げていく。

だが、あの国の連中は剣技というよりは力任せに敵を叩き潰すような使い方が主流だ。そのため、注文されるのは「切れ味」よりも「頑丈さ」ばかりを優先した無骨な鉄塊ばかり。

ヨハネとしては、己の美的センスが光る至高の『業物(わざもの)』を作りたくて仕方がなかった。


「総統閣下、希少金属であるミスリルやアダマンタイトでは駄目なのでしょうか?」


側近の至極真っ当な疑問に対し、ヨハネは鼻で笑って一蹴した。


「フン、分かっていないな。ただ硬いだけの金属など、我が理想とする『極限の剣術』の負荷にかかればポキポキと簡単に折れてしまうのだ。だから、我は全く違う『未知の素材』が欲しいのだ!」


ラノベの世界においては絶対的な最強金属とされる素材すら、その圧倒的な探究心で簡単に否定してみせる男。ヨハネの鍛冶職人としての熱き渇望は、止まることを知らなかった。


【魔族領・魔王城】

「サーペント様は何故に、人間族の侵攻を許したのだ……」


禍々しい佇まいに、赤黒い髪、そして天を突くような大きな角を持つ魔王レオン。

彼は今回の防衛戦において、絶対神サーペントからの啓示が一切なく、一方的に敗北を喫したことで、その深い信仰心に微かな揺らぎが生じ始めていた。


「レオン様。人間たちを含め、我らの信仰心が薄れたことが、サーペント様の怒りに触れたと考える所存にございます」


この惑星は古来から「蛇」を唯一無二の神として崇めていた。しかし、文明が開花するにつれ自然神に対しての畏怖の念が薄れ、今や新興宗教に取って代わられようとしていた。

現状を報告した悪魔族の執事は、強力な精神魔法を駆使して正確な情報収集を行っている。それゆえ、その言葉は十分に信じるに値した。


「人間も、我ら魔神族も、サーペント様の慈悲を忘れてしまったというのか。……嘆かわしい限りだ」


蛇王サーペントは、7つの妖精神(光、闇、力、土、水、火、風)の頂点に君臨する絶対的唯一神であり、天変地異すら容易く引き起こす力を持つ。世界の人口バランスを絶妙に保っている存在だった。


「……フン、愚痴を言っても始まらん。すぐに『特別弔慰金』の準備をいたせ。今回の戦い、我がために命を賭してくれた者たちとその遺族には、最大限の感謝を示さねばならぬ」

「御意。すぐさま手配いたします」


敗戦処理に頭を悩ませる魔王は、重い足取りでバルコニーへと出た。

静まり返った夜空の下、彼は静かにその場に跪き、大戦の地で散っていった戦友たちの冥福を祈る。


(――すまぬな。我が力量不足のせいで……。どうか、安らかに眠ってくれ……)


その禍々しい外見とは裏腹に、レオンは部下から絶大に慕われる「男気に溢れた王の中の王」であった。

人間やエルフの王よりも遥かに欲を持たず、意外にも純粋な平和主義者。しかし、向こうから仕掛けられてくる理不尽な戦争に対し、大切な民を守るため、ただ孤独に受けて立っているのが現状だった。


胸を痛める孤独な覇王は――心の奥底で、共に背中を預けられる『強力な相棒』を、切に求めていた。


【絶対神サーペント・神の居城】

決して足を踏み入れてはいけないと伝承が残る、深い森の奥。

『禁忌の湖』と呼ばれる美しく清らかな場所に、神とその眷属が住んでいた。


サーペントの見た目は大蛇だが、全知全能の知性を持ち、誰からも敬われる存在だ。自分が造り育てたこの惑星の生命を愛しているが、これといって欠点はないものの、少し危機感が欠けているのんびり屋さんでもあった。


「申し上げますサーペント様、魔人族軍が敗走し、現在退却中で御座います」

「魔族軍が敗れただと? やはり安直馬鹿のレオンは、まんまと敵の策に堕ちたのだな」


魔王レオンは正々堂々と正面からやり合うのが好きなタイプだ。

その性格を知るフィルモアのミラード国王は「多方面から攻撃する」という偽情報を流し、対応するために戦列を広げたところを一点突破。結果、レオンは負けたのだ。


「誠に申し上げ辛いのですが、負けた事で魔族たちの信仰心が薄れつつあります」

「それはまずい事になったな……。アングィスを至急呼び出すのだ」


神の元には、それぞれの種族の情報が精霊たちによって逐一報告される。

文明が発展すれば致し方ないと諦める訳にもいかず、サーペントは状況を打破する為、腹心の部下を呼ぶことを決めたのだった――。

面白かったらポッチっとブクマお願いします。

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