第9話 踏み出した一歩
※主人公はまだ言葉を覚えたてで片言です。それを表すためひらがな文章にて表記しておりますので、読みづらいかもしれませんが、表現上ですのでご理解ください。
「さて、そうと決まりましたら住むところ……ですかね?」
「そ、そですね。きばんはだいじ」
「確かにそうです。どのようにお考えですか?」
「おみせをだす……のも、すぐはむり、わかってます」
ザイツさんは横に合った紙の束をめくりながら、何か考えている。
「ではこの物件なんてどうです?」
「え?」
そういうと、俺の前に髪を人滑りさせてきた。そこにはお店のような物件の見取り図が簡易的に書いてある。
「これは……お店ですよね?」
「そうですね。このお店のご主人が老齢になりまして、誰かに譲り生まれ育った町に戻って余生を過ごしたいとおっしゃられているんですよ。それをテッタ様にどうかと思いましてね?」
「いやいやいや!! おかねないです!! 人もいないです!! むりむり!!」
「そうですかねぇ……」
両手をぶんぶんと振り否定すると、腕を組んで考えるザイツさん。
「えっと、まずはやたいとかかんがえてます」
「やたい? あぁ屋台ですか!! そうですねぇ……。何か考えが?」
「お肉を使ったものをと……」
「「「おぉ!!」」」
そんなにお肉が嬉しいのか? 三人が三人ともに喜びの声を上げた。
「ところで……ですけど」
「はい? なんでしょうか?」
「おかねのかちってどんな?」
「おかねのかち? おぉ!! 貨幣の価値ですか!! そうですね、ツバサの町は『リピ』という単位ですが、店で売られているパン。黒パンですね、それは2つで100リピです。この銭貨一枚が1リピ。銭貨10枚で青銅貨1枚。そこから上が鉄貨、銀貨、小金貨、大金貨という感じで、10枚ごとになってますね」
――つまりは、銭貨1枚=1リピ=日本でいうところの1円くらいか? 固い黒パン
1個が50円ほどと考えると、高いのか安いのかよくわからんな……。
う~んと考えていると、俺の方へそれぞれの金属貨を出して見せてくれて、その中から大金貨だけを手に取る。(当面の資金として10万円程度を渡したのだと思います)
「まずはこちらをお渡ししておきます。ご安心ください。こちらは先ほどの契約料から引き出したものですので、テッタ様の物ですから。宿をおとりになられて、いろいろと見てみるのがよろしいかと思います。因みにですが商業ギルドでご紹介できるお宿ですと、金貨1枚で3泊できるお宿をご紹介できますがいかがですか?」
「よくわからないので、そこでおねがいします」
はいと返事をしてザイツさんは部屋から出ていった。
「それと、屋台の貸し出しもしておりますがいかがいたししますか?」
「まずはなにができるかかんがえてからまた来ます。……あ」
「なんでしょうか?」
俺が今まで不思議に思っていたことを聞いてみることにした。
「どうしててったさま、とさまつけで呼ぶんですか?」
「は?」
ザイツさんが俺ではなく連れの2人に視線を向ける。
「えっと……。家名持ちなのですからテッタ様とお呼びするのは何も不思議じゃないですよ……ね?」
ザイツさんが2人に問いかけると、ナツもハルもこくこく頷いた。
「かめい? かめいってなんですか?」
「え? 家名というのは、お貴族様に与えられたその家を表す名の事ですけど」
「えぇ!?」
初めて知った衝撃。
――つまり俺はお貴族様だと思われていると? ん? あれちょっと待てよ……もしかしてこの世界には地球みたいな『苗字持ち』は貴族位しかいないのか?
「もしかして、みなさんかめいはない……?」
「はい」
ナツもハルもこくこくと頷く。
「あぁ~……。つまりはかんちがい……」
「どういう事でしょうか?」
ザイツさんが不思議そうに尋ねてくる。
「おれ、なまえはカイ・テッタですが、テッタがなまえで、カイがかめいですよ。しかもへいみん、です。おれがうまれたところでは、かめいのあとになまえがつくんです。きぞく? がなにかわからない。そんなのない」
「なんと!!」
「え?」
「そうなの?」
三人が驚く。俺はそれにこくこくと頷いた。
「だからてっただけでいいです。さまはいらない」
「えっと……カイさんとお呼びした方がいいですか?」
「いえ、てったでいいです」
今までなぜ様とかつけて呼ばれているのかわからなかったし、名前に様付けされるのもどうも居心地が悪いというか、慣れていないせいでずっと違和感があったのだ。
「では今後はテッタさんと呼ばせていただきますね」
「はい」
俺が手を差し出すと、一瞬戸惑ったががっしりと手を握り返してくれた。
そうして商業ギルドでの話は終わり、先ほどの貨幣を袋に入れてもらってその場を後にする。
2人をつれて、ザイツさんに紹介してもらった宿へ。すでに話が通っていたようで、すぐに部屋に案内された。少ないながらも荷物を置いて部屋を出て、入り口で待ってくれている
「テッタさま!!」
「さまはいらない。さっきいった」
「あ!!」
俺の顔が見えたナツに呼ばれるが、俺はナツに言い返す。
「もうナツも私も癖になってる。直すの時間かかると思いますよぉ~」
「そうよねぇ」
「まぁ、むりとはいわないけど……」
ハルもナツの顔を見ながらなやむ。
「で? これからどうするの?」
「えっと……いろいろとみてまわりたい」
何ができるのかは売っているもの次第。ウインナーという『商品』はもうおれの手を離れてしまったのだから、俺は俺で新しいものを作り上げていくしかない。
宿屋のカウンターで、お勧めのお店を聞いて、2人を連れて外に出る。
♢♢♢♢♢
「どう?」
「うん」
「なにかできそうですぅ?」
「なんとなく」
いろいろと見て回り、ある程度何が売っていて売っていないのかを見て回ってきて、手に入れやすいものを少しだけ買って、宿屋へと戻ってきた。
宿屋で併設されている食堂。その端を借りて3人で座る。テーブルには手に入れてきたものが置かれていた。
イノシシ野郎の赤身とロース部分。野菜を売っている店に行ったらクズ野菜を捨てるところだったので、それをタダでもらってきて、あとは少しの小麦粉。ハーブ類など。
これらを使って何種類かできそうなものを考える。
「なんとかなりそう……」
「え? もう考え付いたの!?」
「あたまのなかでは……ね」
「じゃぁ作ってみようよ!!」
ナツは驚き、ハルは乗り気だ。
「2人とも、てつだう? でもいっちゃダメだよ?」
「「わかってる(よぉ)」」
何度もうなずく2人を見て、俺もうなずく。
最初に助けられた後も、俺がギルドで働いている時も何度も顔を見に来てくれて、手助けしてくれたり、心配してくれたり、苦手な会話をするとき俺に合わせてくれてもいたので、この2人の事は信用している。
「じゃぁやってみるか!!」
「「おぉ~う!!」」
ぐっと手を上げると、2人も俺の真似をしてぐっと腕を上げ、3人で笑いあった。
宿のおかみさんに厨房を借りる相談をすると、夕食時の仕込みを始める時間までなら、という条件付きで貸してもらえることになり、そのおかみさん――テンバさんという名前らしい――が見守る中、俺はしっかりとした厨房の中で腕を振るうことにする。
まず作るのは小麦粉を使ったアレ。ボールの中に小麦粉を入れ、水を入れながら木べらで混ぜていく。粉っぽさが無くなってくるまで良く混ぜる。途中で覗いてきたハルに良く手を洗ってから混ぜるのを手伝ってもらった。
その間に、今度はあのイノシシ野郎の肉をたたいて、ひき肉状にしていく。この町でアイツは良く出回るらしく安価で手に入れられるから、なじみのある食材の様だ。ただ赤身肉などは固くて料理法もあまり浸透していないのか人気がない。
「お? 叩くの? なら私もやる」
「そう? たすかる」
ナツが申し出てくれたので、バシバシ叩いてもらっている間に、俺は叩いた肉をさらにミンチ状にしていく。
「テッタさま!! これどうするの?」
「ん?」
ハルから声がかかり見に行くと、結構まとまってきていたので様子を見てひとまとめにし、布をかぶせて寝かせる。
2人とも――いや、なぜかテンバさんも混ざり3人ともに目を輝かせながら、俺が何をしていくのか見ている。
「えっとテンバさん。こういうのありますか?」
「なんだい? ん~そういうのは……これで代用できないかい?」
「どうかな……やってみるしかないか」
似ているものはある。しかし出来るとは限らないのでその辺は要確認だなと思いつつ、料理は俺を中心に進んでいく。
お読みいただいた皆様に感謝を!!
ウインナーの次は何を作るのかなぁ?
まだ全くラーメン造りをしないですけどねw
『いつ作り始めるのか』このお話の章題で察してくださいませ。
次回
第10話 自信もちな
お楽しみに!!




