第7話 冒険者でいいのか?
※主人公はまだ言葉を覚えたてで片言です。それを表すためひらがな文章にて表記しておりますので、読みづらいかもしれませんが、表現上ですのでご理解ください。
珍しいものが流行る――。
それは元地球であれば、当たり前に発生するものとして記憶も経験もしている。
俺が住んでいたのは、三大ラーメンの地であり、昔ながらのラーメンをいつも普通に食べていた。子供のころからその呼び名があったわけじゃない。
自分が小さいころは、地元のローカルテレビ局で話題に時々上る程度の物だった。老舗といわれるお店は100年ほど前から続いているし、そのお店が『元祖』と言われてきて、地元に取材に来る人たちはそこか、もしくは限られた数の老舗を回るだけ。
それが、全国放送版のテレビ番組で紹介された時から、俺が死んでしまうまでの間でかなり様相が変化した。
毎日のようにお店には行列ができることがあるし、町の名は車で渋滞するなんてこともある。
嬉しい悲鳴を上げるが、それが地元の人からするとそうではないこともあるので難しいところだ。
さて、俺がそんな昔の事を思い出している間にも、しっかりと手は動いているもので、目の前には多くの簡易ウインナーが「じゅわぁ!!」と油を焦がす炎を上げながら焼かれている。
「ヒトが多い……やばい」
「やばい?」
俺がキッチンでウインナーを焼いているその横で、さらに野菜を盛り付けているハルが俺の言葉をまねた。
「あぁ、スゴクキツイッテことさ」
「なるほどねぇ。それにしてもさぁ……」
「ん?」
「テッタ様、言葉うまくなったね」
「あ、あぁ。みんなのおかげ? まだ分からないとこあるぞ」
「そっかそっか!!」
尻尾をぶんぶんと振りながら、焼きあがったウインナーを皿に上げると、それを両手や腕の上にも乗せて食堂の方へと運んで行っていれる。
なぜこんな風にハルに手伝ってもらっているのかというと、実はナツも手伝ってくれてもいる。
あの日、簡易ウインナーを作って朝食へと出した日、それを食べた冒険者たちは、新しい料理とともにその肉の味に驚いていた。
その肉があのイノシシ野郎――ワイルドボアというらしいが――の赤身肉を使っているという事が分かると、何グループかのやつらが一斉にワイルドボア狩りをしたようで、ギルドに多くの肉が持ち込まれた。
その中にナツとハルの二人もいたようだけど、2人も大きなイノシシ野郎を丸ごとを背負ってきた姿には驚いたものだ
そのイノシシ野郎だが、現在俺主導の下でこの冒険者ギルドの食堂で働く料理を専門にしていた人とともに作っているのだけど、さすがに毎日多くの肉が届いてしまうので、手数が足りずその日その日でギルドからクエストという形で食堂のお手伝い(賄いつき)が張り出されている。
本日はそのクエストにナツとハルが応募してきたというわけ。
「テッタ様!! 次はどうしたらいいですか!?」
わくわくという文字が頭の上に見えるかのように、俺に指示を仰ぐ料理人さん。スキルが『料理人』を持っているという事で、このギルドで一人いろいろと料理をしたり、レシピを考えたり、誰でも作れるようにその考えたものを残しておくなど、これまでは自分が中心だったので、キッチンを担うプライドなどがあるかと思い、俺はお手伝いとして入っていたつもりだったのだが。
「いいんですか? 俺がしじして」
「なんでも言ってください!!」
もう完全に尻尾ぶんぶん状態である。でも普通に人間種のオッサンで現在の俺よりも歳上なのだけどね。
この方、マルトという名前の方なので、先輩だからさん付けしていたら、「こんな料理を作れる方にさん付けされるなんて出来ません!! どうかわたしを弟子に!!」 と、頭を床にこすりつけそうな勢いで土下座――この世界にもあるんだなと感心したけど――してきた。慌てて体を起こして弟子云々はともかく、一緒に作っていくことを約束した。
――いや、キッチンの床に土下座って……。綺麗にしたとはいえまだまだ汚れはあるし、そんな不衛生なことを指せているわけにもいかないしな。
そんなわけで、俺が毎日このキッチンに立っているわけなんだけど、そうすると俺の冒険者生活ができなくなる。
「まぁ、あとで相談するか……」
「なんです!? 何かやることありますか!?」
少しだけ、ぼそりとこぼしただけの声を拾って、勢いよく俺の方へと駆け寄ってくるので、キッチンで走らない事、しっかりと手を洗い、身ぎれいにしていることを言い聞かせた。
「テッタさま!!」
「はいよ!!」
「追加で10本おねがいしまぁす!!」
「りょうーかい!!」
俺が親指をぐっと立てると、ハルはにこりと笑って親指を立てかけしてくれた。
♢♢♢♢♢
「だぁ~!!」
ギルド食堂の夕飯時の混雑を乗り越えて、1人食堂奥の椅子に座ってだらける。
「結構はたらいてるよな俺。これって俺の仕事的にはどうなってるんだろう?」
テーブルに置かれたジュースに手を伸ばす。このジュース。俺が置いてきぼりを食らったあの草原近くの森に自生している果物から作るみたいで、その果物を取ってくること自体が初心者冒険者の仕事の一つになっている。
俺も何度か行ってとってきているので、その辺はできる限り安全に初心者クラスの冒険者にも優しいクエストとなっているようだ。
「お疲れ様ぁ~」
「お疲れさまでした」
「あぁ~、おつかれさま」
俺と同じジュースを手にしたハルと、ぬるいエールをもってナツが俺の方へと歩いてきた。
「一緒に良いですか?」
「どぞ」
「では」
手で椅子を指してこくりと頷くと、2人もガがッと音を立てて椅子を引いて腰を下ろした。
「忙しいですねぇ。話には聞いていたんですよぉ。かなり混んでいるって」
「そうですね。でも話を聞くのと、直に経験するのとでは全然違って、すごく忙しかった」
「あぁ~ふたりとも、ごくろうさまでした」
「「はい!!」」
元気に返事をしてきたのを見て、俺が手に持ったものを少し掲げると、2人も俺と同じように掲げたのでかちっと音を立てて乾杯した。
「お? ここにいたのか。今日もご苦労さん」
「あ、ぎるます」
三人で何気ない会話をしていると、ギルマスが俺たちを見つけて近づいてくる。
「なんですか?」
「あ、いやナツとハルに用事じゃない」
「そうなんです?」
ギルマスは俺に視線を向ける。
「ん? おれですか?」
「そうだ。 テッタ様よぉ、ちょっと話があるんだが良いか?」
「? べつにいいですけど」
くいっと親指を二階の方へと向けるので、俺は静かに医師から立ち上がった。二人に挨拶をして、その場を後にし、ギルマスの後ろをついていく。
「まぁ座ってくれ」
「はい」
「まずはだが……。テッタ様の冒険者証をだしてくれ」
「はい」
素直に手渡す。
「よし」
テーブルにあったベルを鳴らすと、今日の担当受付嬢さんが部屋へと入ってきて、俺の冒険者証を手に取って去っていく。
「これまでの仕事達成と、今この食堂でしている仕事をクエスト達成として認めることにした。だからランクアップだな」
「らんくあっぷ?」
「あぁ、冒険者ってのは最低ランクの試験冒険者から最上位まで数段階あるんだが、テッタ様は試験冒険者卒業ってことになる。これからはF級ってことだな」
「Fきゅうですか……さいじょういは?」
「S級ってやつだが、それこそ世界に両手で数えられるくらいしかいない」
「へぇ~」
「で、だ……」
「?」
そこで一息入れるギルマス。
「テッタ様はこのまま冒険者でいいのか?」
「へ?」
「いや。なんというか……冒険者って感じじゃなくて、いや合わないからやめろって言ってるわけじゃなくてだな、その……料理人って感じがするんでな。キッチンに立って料理しているテッタ様は楽しそうにしてるからな」
「あぁ~」
ギルマスにそう言われて腕を組んで考える。言っていることが理解してしまえるからだ。
確かに、この世界に来たばかりのころは、生きる糧と、生きるための仕事、そして生きるための言葉の壁を考えて、手っ取り早く紹介してもらって登録した冒険者で、経験を積みながらお金も貯めようと思っていた。
いつまでも冒険者ギルドに泊まり込んで――というのも何か違う気はしていたのだ。
「そうですねぇ~……」
「何かあるのか?」
「かんがえていることがあります」
「それは?」
ギルマスが俺の瞳を見つめてくる。
「このまちでしょうばい――みせをもちたいなと」
考えないようにしていた。いや、俺の中ですでにその答えはずっとあった。そう、俺はこの世界で、前世でしていたラーメン屋を出したいのだ。
お読みいただいた皆様に感謝を!!
しっかりと思いを伝えたテッタ。
ここからそれに向けて進んでいくことに――なるといいなぁ(;^ω^)
次回
第8話 感謝の涙
お楽しみに!!




