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不合格から始まる聖医の絆 ―踏切を越えた先、異世界で命を繋ぐ―  作者: ねこあし


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第50話「炎の試練」

 あかねが目を覚ますと、炎の世界にいた。


 どこを見ても、炎。


 地面は燃え、空も赤く染まっている。


 でも、熱くない。


 不思議な場所。


「ようこそ、選ばれし者」


 声が響いた。


 前方に、一人の男性が現れた。


 四十代。赤い髪、炎のような目。


 全身から、熱気が漂っている。


「私は、炎の守護者」


 男性が自己紹介した。


「第二の封印を守る者だ」


「守護者……」


 あかねが警戒した。


「氷の守護者とは、違う方ですか?」


「ああ。各封印には、それぞれ守護者がいる」


 炎の守護者が説明した。


「私は、炎の力を司る」


「そして、お前の心の炎を試す」


「心の炎……?」


「そうだ。情熱、勇気、意志の強さ」


 守護者が続けた。


「それらが、心の炎だ」


「お前は、三つの試練を受ける」


「乗り越えた時、真の力が目覚める」


「分かりました」


 あかねが、覚悟を決めた。


 第一の試練:情熱


 景色が変わった。


 あかねは、見覚えのない街にいた。


 暗い街。


 人々が、諦めた表情で歩いている。


 活気がない。


 希望がない。


 まるで、世界が終わったかのような雰囲気。


「これは……」


 あかねが周りを見た。


 すると、一人の少女が近づいてきた。


 十歳くらい。痩せた体、汚れた服。


「お姉さん」


 少女が、弱々しい声で言った。


「お願い。パンをください」


「お腹が空いて……もう三日も何も食べてないの」


 あかねは、心が痛んだ。


 アイテムボックスから、パンを取り出そうとした。


 でも――


 アイテムボックスが、使えない。


 能力が、封じられている。


「ごめんなさい……」


 あかねが謝った。


「私、何も持ってないの」


 少女が、泣き始めた。


「そんな……じゃあ、どうすれば……」


 その時、炎の守護者の声が響いた。


「この世界は、希望を失った世界だ」


「人々は、諦め、生きる意欲を失っている」


「お前は、どうする?」


「諦めて、この世界を見捨てるか」


「それとも、希望の炎を灯すか」


 あかねは、考えた。


 能力がない。


 武器もない。


 でも――


 諦めるわけにはいかない。


 あかねは、少女の手を取った。


「大丈夫」


 あかねが、優しく言った。


「私が、何とかする」


「一緒に、希望を見つけよう」


 あかねは、少女と一緒に街を歩いた。


 人々に声をかけた。


「諦めないで」


「まだ、希望はある」


「一緒に、立ち上がろう」


 最初は、誰も相手にしなかった。


 でも、あかねは諦めなかった。


 何度も、何度も、声をかけ続けた。


 そして――


 一人の男性が、立ち上がった。


「そうだ……諦めちゃいけない」


 男性が言った。


「俺たち、まだ生きてる」


「なら、希望を見つけられる」


 次々と、人々が立ち上がった。


 街に、活気が戻ってきた。


 笑顔が、増えていった。


 そして、少女が微笑んだ。


「ありがとう、お姉さん」


「希望を、ありがとう」


 その瞬間、景色が消えた。


 元の炎の世界に戻った。


 守護者が、満足そうに微笑んでいた。


「よくやった」


「第一の試練、合格だ」


「お前は、情熱を持っている」


「どんな状況でも、希望を諦めない」


「それが、真の情熱だ」


 第二の試練:勇気


 景色が、また変わった。


 今度は、暗い森だった。


 不気味な雰囲気。


 木々が、まるで生き物のように蠢いている。


 そして、前方に道が二つあった。


 一つは、明るい道。


 花が咲き、鳥が歌っている。


 安全そうだ。


 もう一つは、暗い道。


 霧が立ち込め、何も見えない。


 危険そうだ。


「選べ」


 守護者の声が響いた。


「明るい道は、安全だ」


「でも、目的地には着かない」


「暗い道は、危険だ」


「でも、目的地に着く」


「どちらを選ぶ?」


 あかねは、迷った。


 明るい道を選べば、安全だ。


 でも、目的地に着けない。


 それでは、意味がない。


 暗い道を選べば、危険だ。


 でも、目的地に着ける。


 世界を救うために、必要なことだ。


「私は……」


 あかねが、暗い道を指差した。


「こっちを選ぶ」


「危険でも、目的地に着かないと意味がない」


「勇気を持って、進む」


「よくぞ決断した」


 守護者が現れた。


「では、行け」


「恐れずに」


 あかねは、暗い道を進んだ。


 霧の中。


 何も見えない。


 足音だけが、響く。


 そして――


 突然、魔物が現れた。


 黒い影。


 巨大な爪、鋭い牙。


 恐ろしい姿。


 あかねは、恐怖を感じた。


 でも――


 逃げなかった。


 槍を構えた。


 いや、槍がない。


 能力も封じられている。


 素手だ。


 でも、あかねは立ち向かった。


「来なさい!」


 あかねが叫んだ。


「私は、恐れない!」


 その瞬間、魔物が消えた。


 霧も晴れた。


 目の前に、明るい場所が広がっていた。


 目的地だ。


 景色が、元の炎の世界に戻った。


 守護者が、拍手していた。


「素晴らしい」


「第二の試練、合格だ」


「お前は、勇気を持っている」


「恐れても、立ち向かう」


「それが、真の勇気だ」


 第三の試練:意志の強さ


 景色が、最後に変わった。


 今度は、空っぽの部屋だった。


 何もない。


 壁も、床も、天井も、全て真っ白。


 そして、目の前に鏡があった。


 鏡の中に、あかね自身が映っている。


 でも、その「あかね」は、疲れ切っていた。


 傷だらけ、ボロボロの服。


 絶望的な表情。


「これは……」


 鏡の中のあかねが、口を開いた。


「もう、無理よ」


 鏡のあかねが言った。


「闇の王なんて、倒せない」


「私、弱いもの」


「力も、足りない」


「諦めましょう」


「逃げましょう」


「それが、一番楽よ」


 あかねは、動揺した。


 確かに、時々そう思う。


 自分は、本当に闇の王を倒せるのか。


 力は、十分なのか。


 不安で、一杯になる。


 でも――


 あかねは、首を振った。


「違う」


 あかねが、強く言った。


「私は、諦めない」


「確かに、弱いかもしれない」


「でも、仲間がいる」


「セリア、リーナ、エルミナ、トム、ダリウス」


「みんなと一緒なら、何でもできる」


「だから、諦めない」


「闇の王を倒す」


「世界を救う」


「それが、私の意志」


「どんなに辛くても、どんなに苦しくても」


「絶対に、諦めない!」


 あかねが、鏡に向かって叫んだ。


 鏡が、砕けた。


 破片が、光に変わった。


 景色が、元の炎の世界に戻った。


 守護者が、涙を流していた。


「素晴らしい……」


 守護者が、あかねを抱きしめた。


「お前は、三つの試練を全て乗り越えた」


「情熱、勇気、意志の強さ」


「全てを、持っている」


「お前は、真の選ばれし者だ」


 守護者が、あかねの胸に手を当てた。


「さあ、力を受け取りなさい」


 炎が、あかねの体を包んだ。


 でも、熱くない。


 温かい。


 心地よい。


 紋章が、強く光り始めた。


 三つの力が、さらに強化された。


 地の力、風の力、光の力。


 全てが、以前より遥かに強力になった。


 そして――


 新しい力が、目覚めた。


『炎の心』


 守護者の声が響いた。


「これは、私からの贈り物だ」


「炎の心」


「決して消えない、情熱の炎」


「どんな絶望も、この炎が照らす」


「どんな困難も、この炎が乗り越えさせる」


「大切に、使いなさい」


 あかねは、新しい力を感じた。


 胸の奥から、熱いエネルギーが湧き上がる。


 情熱の炎。


 これが、あればどんな困難も乗り越えられる。


「ありがとうございます」


 あかねが、深く頭を下げた。


 あかねが目を覚ますと、元の洞窟にいた。


 炎の柱の前。


 六人と凛が、心配そうに見ていた。


「あかね!」


 セリアが、あかねを抱きしめた。


「大丈夫!?」


「うん……大丈夫」


 あかねが微笑んだ。


「試練を、乗り越えたわ」


 あかねが、炎の柱に手を当てた。


 紋章が光る。


 統合の力。


 そして、新しく手に入れた炎の心。


 全てを、炎の柱に流し込んだ。


 柱が、強く輝いた。


 炎が、さらに激しくなった。


 でも、やがて落ち着いていった。


 そして――


 封印が、強化された。


『第二の封印。強度:百パーセント。今後百年間は破られない』


 鑑定能力が、そう告げた。


「成功したわ……」


 あかねが、安堵のため息をついた。


 第二の封印を、強化した。


 そして、新しい力も手に入れた。


「よくやりました、あかね」


 凛が微笑んだ。


「これで、残るは一つだけです」


「東の嵐の海」


 セリアが言った。


「そうね。休んだら、次へ向かいましょう」


 六人は、洞窟を出た。


 外は、まだ暑かった。


 でも、心は満たされていた。


 二つの封印を、強化した。


 あと一つ。


 それを終えれば、闇の王の復活を遅らせられる。


 そして、最終決戦の準備ができる。


 その夜、七人は火炎の町の宿屋に戻った。


 疲れていたが、達成感があった。


「あかね、新しい力を手に入れたのね」


 セリアが尋ねた。


「うん。『炎の心』っていう力」


 あかねが説明した。


「情熱の炎で、どんな困難も乗り越えられるようになる」


「素敵な力ね」


 リーナが微笑んだ。


「これで、あかねはもっと強くなったわ」


「でも」


 あかねが、みんなを見た。


「この力も、みんながいるから意味があるの」


「一人じゃ、何もできない」


「みんなと一緒だから、強くなれる」


「ありがとう」


「こちらこそ」


 セリアが、あかねを抱きしめた。


「あなたがいるから、私たちも頑張れる」


「『銀の絆』は、最高のパーティよ」


「うん」


 六人は、抱き合った。


 仲間の温もり。


 それが、何より心強かった。


 翌朝、七人は火炎の町を出発した。


 学院へ戻るために。


 そして、最後の封印の旅の準備をするために。


 馬車の中で、凛が話しかけてきた。


「あかねさん」


「はい?」


「あなた、本当に強くなりましたね」


 凛が微笑んだ。


「最初に会った時とは、全然違う」


「そうですか?」


「ええ。最初は、不安そうで、自信がなかった」


 凛が続けた。


「でも、今は違う」


「目に、強い意志が宿っている」


「仲間への信頼も、深まっている」


「これなら、闇の王とも戦える」


「ありがとうございます」


 あかねが微笑んだ。


「でも、まだ不安はあります」


「本当に、闇の王を倒せるのかって」


「大丈夫です」


 凛が、あかねの手を握った。


「あなたには、仲間がいます」


「それに、私たちもいます」


「エルヴィン院長、四天王、学院のみんな」


「全員が、あなたを支えています」


「一人じゃないんです」


「だから、大丈夫」


「きっと、世界を救えます」


「はい」


 あかねが、強く頷いた。


 そうだ。


 一人じゃない。


 みんながいる。


 だから、大丈夫。


 闇の王も、きっと倒せる。


 あかねは、決意を新たにした。


 三日後、七人は学院に戻った。


 ルナが、また出迎えた。


「あかね!」


 ルナが駆け寄ってきた。


「無事だったのね!」


「ただいま、ルナ」


 あかねが、ルナを抱きしめた。


 エルヴィン院長も、出てきた。


「お帰りなさい」


 院長が微笑んだ。


「第二の封印も、強化できたようですね」


「はい」


「素晴らしい」


 院長が、六人を院長室に案内した。


 四天王も、待っていた。


「詳しく、報告してください」


 あかねが、炎獄の山での出来事を報告した。


 溶岩の川を渡ったこと。


 ファイアリザードと戦ったこと。


 そして、試練を受けたこと。


 三つの試練を乗り越え、炎の心を手に入れたこと。


 全てを、詳しく話した。


「炎の心……」


 エルヴィン院長が、感心した。


「それは、伝説の力です」


「千年前の記録にも、ほとんど記されていません」


「あかねさん、その力を見せていただけますか?」


「はい」


 あかねが、立ち上がった。


 胸に手を当てた。


 そして、炎の心を発動した。


 あかねの体が、赤い光に包まれた。


 情熱の炎。


 部屋中が、温かくなった。


 でも、熱くない。


 心地よい温かさ。


 希望の温かさ。


「これは……」


 四天王も、驚いた表情だった。


「すごい力だ」


 フェンリルが呟いた。


 あかねは、炎を消した。


「素晴らしい」


 エルヴィン院長が言った。


「その力があれば、最後の封印も強化できるでしょう」


「そして、闇の王とも戦える」


「はい」


 あかねが頷いた。


「では、一週間休んでください」


 院長が続けた。


「その後、東の嵐の海へ向かってください」


「最後の封印を、強化してください」


「分かりました」


 その夜、あかねは一人で考えていた。


 二つの封印を、強化した。


 あと一つ。


 東の嵐の海。


 そこで、最後の試練を受ける。


 そして、全ての封印を強化する。


 それが終われば――


 闇の王との最終決戦の準備が整う。


 怖い。


 不安だ。


 でも――


 あかねは、胸に手を当てた。


 炎の心が、温かく鼓動している。


 情熱の炎が、心を照らしている。


 大丈夫。


 仲間がいる。


 みんなと一緒なら、何でもできる。


 闇の王も、きっと倒せる。


 あかねは、窓の外を見た。


 星が、綺麗に輝いていた。


 平和な夜空。


 この平和を、守りたい。


 世界を、救いたい。


 それが、あかねの使命。


 そして、『銀の絆』の使命。


 あかねは、決意した。


 最後の封印を、必ず強化する。


 そして、闇の王を倒す。


 世界を、救う。


 仲間と一緒に。


 パーティ『銀の絆』として。


 これからも、ずっと。

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