第49話 「炎の試練へ」
氷結の地からの帰還
七人は、氷結の地を後にした。
帰路は、来た道を逆に辿った。
でも、今度は心が軽かった。
第一の封印を強化した。
そして、あかねは新しい力を手に入れた。
三日後、雪原を抜けた。
馬車が待っている場所に戻った。
御者が、驚いた表情で迎えた。
「本当に戻ってきたのか!」
御者が言った。
「氷結の地から生きて戻った者は、ほとんどいないんだぞ」
「すごいな、あんたたち」
「ありがとうございます」
セリアが微笑んだ。
馬車で、学院へ向かった。
三日間の道のり。
馬車の中で、六人は疲れを癒した。
あかねは、新しい力について考えていた。
統合の力。
三つの力を一つにする力。
試してみたい。
でも、まだ完全にはコントロールできない。
もっと練習が必要だ。
六日後、エルデン魔法学院
七人は、学院に戻った。
正門をくぐると、多くの学生が出迎えた。
ルナも、その中にいた。
「あかね!」
ルナが駆け寄ってきた。
「無事だったのね! よかった!」
「ただいま、ルナ」
あかねが、ルナを抱きしめた。
「心配かけて、ごめんね」
「ううん。無事で何より」
エルヴィン院長も、出てきた。
「お帰りなさい、銀の絆」
院長が微笑んだ。
「封印の強化、成功したようですね」
「はい」
セリアが答えた。
「第一の封印を強化しました」
「素晴らしい」
院長が、六人を院長室に案内した。
部屋には、四天王も待っていた。
「詳しく、報告してください」
院長が促した。
あかねが、氷結の地での出来事を報告した。
氷壁を登ったこと。
アイスウルフと戦ったこと。
そして、試練を受けたこと。
三つの試練を乗り越え、新しい力を手に入れたこと。
全てを、詳しく話した。
「統合の力……」
エルヴィン院長が、感心した表情で言った。
「それは、極めて希少な力です」
「千年前の記録にも、ほとんど記されていません」
「あかねさん、その力を見せていただけますか?」
「はい」
あかねが、立ち上がった。
そして、両手を前に出した。
紋章が光る。
地の力、風の力、光の力。
三つの力を呼び起こす。
そして――
統合する。
あかねの手から、三色の光が放たれた。
茶色、青、白。
三つの光が、絡み合い、一つになった。
金色の光。
強力なエネルギーが、部屋中に満ちた。
「これは……」
四天王も、驚いた表情だった。
「すごい力だ」
フェンリルが呟いた。
あかねは、光を消した。
少し疲れたが、以前ほどではない。
統合の力は、魔力消費が大きいが、効率的だった。
「素晴らしい」
エルヴィン院長が言った。
「その力があれば、残りの封印も強化できるでしょう」
「そして、闇の王とも戦えるかもしれません」
「はい」
あかねが頷いた。
「では、しばらく休んでください」
院長が続けた。
「一週間後、西の炎獄の山へ向かってください」
「分かりました」
一週間の休息
六人は、久しぶりの休息を楽しんだ。
訓練は続けたが、以前より緩やかだった。
ルナや他の学生たちとも交流した。
ある日の午後、六人とルナは学院の庭園にいた。
美しい花が咲いている。
平和な光景。
「ねえ、あかね」
ルナが尋ねた。
「氷結の地、怖くなかった?」
「怖かったよ」
あかねが正直に答えた。
「すごく寒かったし、魔物もいたし」
「でも、みんなが一緒だったから、乗り越えられた」
「そっか……」
ルナが微笑んだ。
「やっぱり、『銀の絆』は素敵ね」
「みんな、仲が良くて」
「ルナも、私たちの仲間よ」
セリアが言った。
「私たちが戻ったら、いつでも会いに来てね」
「本当!?」
ルナが目を輝かせた。
「うん」
六人が頷いた。
ルナが、嬉しそうに六人を抱きしめた。
ある夜、あかねは一人で訓練場にいた。
統合の力を練習していた。
三つの力を、スムーズに統合する。
まだ、完璧ではない。
もっと練習が必要だ。
「頑張ってるわね」
後ろから、声がした。
振り返ると、凛が立っていた。
「凛さん」
「統合の力、難しい?」
「はい……まだ、うまくコントロールできなくて」
「焦らないで」
凛が、あかねの隣に座った。
「新しい力は、時間をかけて慣れていくものよ」
「私も、昔はそうだった」
「凛さんも、新しい力を手に入れたことがあるんですか?」
「ええ」
凛が頷いた。
「私がこの世界に来て、三年目のこと」
「『天翔剣』という技を手に入れた」
「でも、最初は全然使えなかった」
「何度も失敗して、傷だらけになった」
「でも、諦めなかった」
「そして、一年後、ようやく使いこなせるようになった」
「一年……」
「そう。新しい力は、それだけ時間がかかるの」
凛が、あかねの肩を叩いた。
「でも、あなたなら大丈夫」
「仲間がいるから」
「一人じゃないから」
「きっと、すぐに使いこなせるようになるわ」
「ありがとうございます、凛さん」
あかねが微笑んだ。
一週間後、出発の日
朝、六人と凛は再び正門に集まった。
今度は、西の炎獄の山へ向かう。
荷物は、今回も万全だった。
水、食料、薬、それに耐熱装備。
炎獄の山は、極度の高温の場所だ。
準備が必要だった。
エルヴィン院長、四天王、ルナが見送りに来た。
「気をつけて」
ルナが、また涙を流していた。
「必ず、戻ってきてね」
「うん」
あかねが、ルナを抱きしめた。
「炎獄の山は、氷結の地とは違う危険があります」
ガルムが警告した。
「溶岩、火山ガス、炎の魔物」
「全てが、命取りになる」
「注意してください」
「はい」
「でも、お前たちなら大丈夫だ」
フェンリルが言った。
「氷結の地を乗り越えたんだ」
「炎獄の山も、乗り越えられる」
「ありがとうございます」
七人は、馬車に乗った。
そして、学院を出発した。
西へ向かって。
炎獄の山へ向かって。
三日後
馬車は、西へ進んだ。
景色が、徐々に変わっていった。
緑豊かな平原から、荒れた土地へ。
草が減り、岩が増えていく。
そして、気温が上がっていった。
四日目、遠くに山が見えてきた。
巨大な山。
頂上から、煙が上がっている。
火山だ。
「あれが、炎獄の山……」
あかねが呟いた。
「ええ」
凛が頷いた。
「活火山です」
「常に溶岩が流れています」
「近づくにつれて、気温がどんどん上がります」
「気をつけてください」
夕方、火山の麓の町に着いた。
『火炎の町』と呼ばれている。
火山の近くにある、唯一の町だ。
宿屋で、一泊することにした。
宿屋で、町の人から話を聞いた。
「炎獄の山へ行くのかい?」
宿屋の主人が、心配そうに言った。
「危険だぞ」
「溶岩が流れてるし、火山ガスも出てる」
「それに、炎の魔物もいる」
「分かっています」
セリアが答えた。
「でも、行かなければならないんです」
「そうか……」
主人が、小さな袋を渡した。
「これを持っていけ」
「『冷却石』だ」
「体温を下げる魔法の石だ」
「炎獄の山では、必需品だ」
「ありがとうございます」
六人は、冷却石を受け取った。
氷結の地の温石と、逆の効果だ。
これがあれば、高温でも耐えられる。
翌日
七人は、炎獄の山に向かった。
山の入口には、溶岩が流れていた。
真っ赤な溶岩。
熱波が、容赦なく襲ってくる。
気温は、すでに五十度を超えていた。
冷却石を懐に入れた。
涼しい。
これがなければ、熱中症で倒れていただろう。
「ここから、山を登ります」
凛が言った。
「封印の場所は、山頂近くにあります」
「溶岩を避けながら、慎重に登ってください」
「分かりました」
七人は、山を登り始めた。
山道は、険しかった。
岩だらけで、足場が悪い。
そして、溶岩が至るところに流れている。
一歩間違えば、溶岩に落ちて死ぬ。
慎重に、慎重に進んだ。
二時間後、溶岩の川を渡る必要が出てきた。
幅十メートルの溶岩の川。
橋はない。
「どうする?」
トムが尋ねた。
「私が、橋を作ります」
エルミナが前に出た。
「氷の魔法で」
エルミナが、魔法を唱えた。
「『氷よ、道を作れ――アイスブリッジ!』」
溶岩の上に、氷の橋が現れた。
でも、すぐに溶け始めた。
溶岩の熱で。
「急いで!」
七人は、急いで橋を渡った。
最後の一人が渡り終えた瞬間、橋が溶けて消えた。
「間に合った……」
リーナが、安堵のため息をついた。
さらに登った。
四時間後、火山ガスが噴出している場所に出た。
黄色いガス。
有毒だ。
吸えば、死ぬ。
「布で、口と鼻を覆ってください」
凛が指示した。
七人は、布で顔を覆った。
そして、ガスの中を急いで通り抜けた。
息を止めて、走る。
三十秒後、ガスの場所を抜けた。
「大丈夫?」
セリアが、みんなに確認した。
「大丈夫」
全員が答えた。
その時、前方から轟音が聞こえた。
地面が、揺れている。
何かが、近づいてくる。
「魔物だ!」
ダリウスが叫んだ。
前方から、巨大な生き物が現れた。
炎のトカゲ。
体長五メートル、全身が炎に包まれている。
口から、炎を吐く。
ファイアリザード。
Aランクの魔物。
「戦闘よ!」
セリアが剣を抜いた。
戦闘が始まった。
ファイアリザードは強かった。
炎を吐き、周囲を焼き尽くす。
尻尾の一撃も、強力だ。
でも、六人は氷結の地での経験を活かした。
セリアとダリウスが、前衛で引きつける。
リーナが、魔力を込めた矢で攻撃する。
エルミナが、氷の魔法で炎を相殺する。
トムが、体術で回避しながら攻撃する。
あかねが、回復と支援魔法をかける。
そして――
あかねが、統合の力を使った。
三つの力を一つに。
金色の光が、ファイアリザードを包んだ。
リザードが、動きを止めた。
その隙に、セリアの剣がリザードの心臓を貫いた。
リザードが、倒れた。
「やった……」
六人は、息を切らしていた。
でも、統合の力は効果的だった。
敵の動きを止める力。
これは、使える。
「あかね、すごいわ」
セリアが言った。
「統合の力、完璧だった」
「ありがとう……でも、まだまだよ」
あかねが謙遜した。
さらに三時間登った。
ついに、山頂近くに着いた。
そこに、巨大な洞窟があった。
溶岩が流れる洞窟。
中は、さらに暑い。
「ここです」
凛が言った。
「この洞窟の奥に、第二の封印があります」
七人は、洞窟に入った。
溶岩が、両側に流れている。
細い道を、慎重に進む。
通路の奥に、広い部屋があった。
部屋の中央に、巨大な炎の柱があった。
柱の中に、何かが封じられている。
黒い影。
蠢いている。
「第二の封印……」
あかねが、鑑定能力を使った。
『第二の封印。闇の王の力の一部を封じている。封印の強度:三十五パーセント。このままでは二ヶ月以内に破られる』
「封印の強度、三十五パーセント……」
あかねが報告した。
「第一の封印より弱いわ」
「急がないとね」
セリアが言った。
「あかね、準備はいい?」
「うん」
あかねが、炎の柱に近づいた。
そして――
炎の柱が、光り始めた。
あかねの頭の中に、再び声が響いた。
『汝、選ばれし者よ』
『試練を受けよ』
光が、あかねを包み込んだ。
あかねの体が、浮き上がった。
「あかね!」
仲間たちが叫んだ。
でも、あかねは微笑んだ。
大丈夫。
前回の経験がある。
試練を、乗り越えられる。
あかねは、光の中で意識を失った。
第二の試練が、始まろうとしていた。
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