第六話『コーヒー以外には無頓着』
前回のあらすじ
銀次の淹れたコーヒーを飲んでみる徹さん。果たして評価はいかがなものか?
今回は、コーヒー以外の他の仕事の紹介もするお話。
「香りは悪くないね、味の方も、」
徹さんは、俺の淹れたコーヒーを口に含む。何度か頷きながら徹さんは、
「うん!いいね!ちゃんと美味しいよ!」
OKサインを出してくれる。
「ありがとうございます!」
慣れない事だったが、意外と褒められて案外嬉しかった。
「この調子なら、明日から本格的に働いてもらえそうだね。期待してるよ、銀次君。」
「はい!」
やっぱり、自信もってやってみるべきだなと思った。徹さんのお墨付きをもらったところで、俺は浮かれ半分で、
「あのプロバリスタ並みの徹さんがちゃんと美味しいと言ってくれたんだ。きっと飲めるはず!」
自分の淹れたコーヒーを口に含んでみる。若干風味の薄かった。言うほど美味しくない……。少し、焦る。もしかして、徹さんは気を遣って!?
「ちなみに聞きたいのですが、このコーヒーの銘柄は?」
取り敢えず、コーヒーの銘柄を訊いてみる。コーヒーの銘柄でなら徹さんも嘘はつかないはずだ。
「え?うーん、何て名前だったかな……」
なんだか、返答に困っている様だった。
「ご存じでないんですか?」
「いやぁ、ね?これ、練習用に買った安物のコーヒーだから、商品として出せる物じゃないからね。覚えてないんだぁ。」
「は、はぁ。」
ちょっと安心した。これで、本当に徹さんに気を遣われてたら情けなくて約束を果たさぬまま家に帰ってしまいそうだった。
「僕が淹れてもこの有様なんだよねぇ。本当に安いものはやっぱりそれ相応の味しか出ないよ。」
徹さんは苦笑いしながら、俺に徹さんの淹れたコーヒーを渡してくれる。
「頂きます。」
一言置いて、俺はそのコーヒを口に含む。確かに、薄味で安っぽい味だったが、それでいて、凄く美味しかった。俺の淹れたものとは、全く比べ物にならないほどに。
「まあ、こんな安いもので、ここまでの風味を出せるなら、十分コーヒーを淹れて人に出せるほどの技術があると思うよ。」
「そ、そうなんですか?」
にわかには信じがたいが、今はその言葉を信じてみよう。取り敢えずは、徹さんが認めてくれたという事に喜びを感じておこう。玉砕するのは、それからでいい。
「それじゃあ、明日からはこの調子で、コーヒーはお願いね。」
「はい、わかりました。」
取り敢えず、コーヒーに関してはどうにかなった、はず。それじゃあ、次は…
「次は、ジュースとかの場所を教えるねぇ。」
「え?あ、はい。」
あれ、
「棚の中に、それぞれオレンジジュース、リンゴジュース、ブドウジュース、バナナジュースの順に瓶が並んでるから、それの中からグラスの中に氷を入れてからジュースを淹れてね。棚のジュースが全部無くなったら、冷凍倉庫にジュースの在庫があるから、そこから棚に補充してね。」
「わかりました。」
「それじゃあ、次は接客の時に使う道具の使い方だね、作業棚の端っこにハンディターミナルがあるから、それについて今から教えていくよ。」
「あ、はい、わかりました。」
あれれ、
「このハンディターミナルにはね、通信機能がついてて、テーブルの呼び鈴と、キッチンの通信機器につながってるんだぁ。だから、お客様のご注文を聞いてまた別のお客様のご注文を聞く時間はほぼかからないんだ。便利だよねぇ。」
「はぁ、そうですね。」
あれれれ、
「注文は全部番号で打ち込んでそうしんするんだぁ。ちなみに、飲料の番号はキッチンの通信機器には届かないようになってて、飲料の注文は、伝票のメモのボタンを押せば見れるようになるからね。」
「は、はい、わかりました。」
「じゃあ次は、レジの打ち方について教えていくから、レジカウンターに移動しようか。」
「あぁ、はい。」
あれれれれ、
「お客様から貰った伝票をバーコードで読み取って、必要な金額をお客様に提示してね。渡されたお金は、事前に計算してから小銭精算機とお札精算機に入れてね。」
「……はい。」
あれれれれれ、
「ホールの仕事はこれだけかなぁ。」
紅茶は?
「いやいやいや、ちょっと待ってください!あのティーセットは?茶葉は!?メニューに書かれたお茶の名前は!!?」
「え?あぁ……」
なんだか忘れてたみたいな反応をされたけれど、忘れてもらったら困る!店的にも俺的にも!
「いやぁ、実をいうと、僕は紅茶に関してはからっきしでねぇ、僕から教える事がないんだよねぇ…」
「え、えぇ……」
茶葉の種類の少なさと設備の年期の無さから伺えてはいたが、そこまでとは…
「今まで、紅茶の注文があった時はどうしていたんですか?」
「あぁ、うん、作業台で、ガラスティーポットに茶葉を入れて、お湯を注いで、色が変わったのが分かったら、ティーカップに注いでたんだぁ。」
「……。」
手順をいくつか抜かしているっていうのはともかく、少なくともこの店で出すときにやる事でないことをいろいろやっていて、もはや言葉が出ない。本当に申し訳ないが、どうやら徹さんは、コーヒーにおいての実力は至高の領域にいても、紅茶をいれることに関しては、アマチュアの域を抜けないらしい。
「一応質問しますが、この店で紅茶について詳しい人は?」
「うーん、僕が知る限りは君のお父さんと、茶葉の知識だけで言えば葉月さんくらいかなぁ。」
「はぁ……。」
つまり、ここでは俺が一番紅茶について詳しくて、淹れるのにおいても俺が一番経験してるってことだろう。そうか、つまりそう言う事か。
俺が、白猫カフェの新しい紅茶の道を開く事になるわけだ。俺は、実家で働いていた時に学んだことを思い出していた。
ようやく、俺の実力を発揮する時だ!(by銀次)
次回予告
次回は、ついに銀次が紅茶を淹れるぞ!はたして銀次はどのように紅茶の魅力を伝えるのか、お客様はどのような反応をするのか?
次回、第七話『銀次流、紅茶サービス!』
次回も、見てくださいね。




