試射
83話
優司達はヘパイストに射撃場へ連れてこられた。射撃場は研究室から少し離れたところにあった。
射撃場は100メートルほど離れた崖の壁に向かって造られており、射撃を行うところに簡単な屋根を造ったものとなっていた。そして、射撃を行うところから崖の壁に向かって15メートルぐらい離れたところと50メートルぐらい離れたところに人型の標的が設置されていた。
「それではまず拳銃の性能を見ていただきます!こちらへお越しください!」
ヘパイストはそう言うと射撃の準備を終え、的に向かっているエルフの後ろに全員を集めた。
「まずは前方の人型の的をご覧ください!心臓の辺りに標を付けておりますので、そこを打ち抜きます!」
ヘパイストは拳銃を構えているエルフの左斜め前に立ち、無言でエルフに合図を送った。
銃を構えたエルフは横目でヘパイストの合図を確認し、ゆっくりと引き金を引いた。
「バァンッ!」
大きな爆発音がすると他の研究員のエルフが的に向かって走って行った。そして的を外してヘパイストに駆け寄り、何かの動物の皮でできているのであろう的を渡した。
ヘパイストは見ていた全員に向かって的を広げて見せた。
「ご覧ください!見事に打ち抜いております!」
的をよく見ると確かに心臓の標に小さな穴が開いていた。
「あの的はここから15メートル離れております!見事に一発で打ち抜いております!」
ヘパイストは少し興奮しながら話している。
「・・・気持ちは解るが、ちょっと大袈裟だなぁ・・・過信は禁物だ・・・」
「いやいや、凄いなぁ!この短期間でこれ程のものを作るとは!凄いじゃないか!」
優司が褒めるとヘパイストがニコニコと嬉しそうに笑っていた。
「ところで、誰が撃ってもあの的を撃ち抜くことが出来るのかい?」
ヘパイストは優司の問いに頭を振った。
「いえ、さすがにそうはいきません・・・。それなりの訓練が必要なのと、才能が必要かと思われます・・・」
「それじゃあ今撃ったエルフも凄いってことなんだなぁ・・・」
優司のつぶやきにヘパイストが慌てて射撃を行ったエルフを紹介した。
「紹介が遅れました。研究員でもあり、射撃のエキスパートでもあるエルフのビリーです!射撃でビリーの右に出る者はいません!」
するとビリーと呼ばれたエルフが丁寧な挨拶を行った。
「ビリーと申します。以後お見知りおきを」
優司は笑顔で答えてビリーに話し掛けた。
「ライフル銃の試射もビリーが行うのかい?」
「はい、私が行います」
「それじゃあ、終わったら聞きたいことがあるんだけど、大丈夫かい?」
ビリーはヘパイストに目線を向けた。ヘパイストは無言で頷いた。
「はい、大丈夫です。なんなりとお聞きください!」
「ありがとう!それじゃあライフル銃を見せてもらおうか!」
「はいっ!」
ビリーの返事の後にヘパイストが声を上げた。
「それでは次にライフル銃を見ていただきます!今度は先ほどより遠い位置にあります的を撃ちます!的は50メートル離れています!」
ヘパイストの説明と同時にビリーが拳銃をライフル銃に変え、的に向かって構えた。今度は50メート離れている的を狙っている。
「ズキューン!」
ライフル銃から爆発音がすると同時に先ほど同様、エルフが的を持っていきた。これもさっきと同様、ヘパイストが掲げて見せた。見事に心臓の位置を打ち抜いている。
「どうですか!?遠く離れていてもこの性能です!」
優司は拍手をしながら褒めたたえた・
「凄いなぁ!いや、本当に凄いよ!大したもんだ!」
褒めながら優司はヘパイストをビリーの前に歩み寄って行った。
「それじゃぁ少し質問させてくれ!」
「はい!」
ビリーは快く返事を行い、ヘパイストは黙って頷いた。
「拳銃の射程距離が30メートルに対して試射は15メートル、ライフル銃は射程距離150メートルに対して試射50メートル、射撃の名手であっても正確な射撃の限界ってところかい?」
「おっしゃる通りです!どんなに性能が良くても取り扱う者の能力によって差が出てしまいます!」
ヘパイストが少し驚き、そして、少し残念そうに答えた。
「いやいや、そう残念がることは無いよ!これは道具の限界だから!どんなに凄い剣でも扱う者が素人だったら全く意味をなさないから・・・」
「それに、道具の開発はそのために行うんじゃないかな!全ての者が巧者であれば問題は無いけど、そう言う訳にはいかない。下手な者が巧者と同じような効果が出せる様に道具があると思うんだ!」
優司の言葉にヘパイストは一瞬、考える様なそぶりを見せた。そして顔を上げて優司を見て言った。
「そうです!その通りです!優司様、ありがとうございます!次の目標が出来た気がします!」
ヘパイストにつられてビリーも優司にお礼を言った。
「優司様!私も感謝しております。私は魔法も弓も剣も下手でした。エルフの中ではできることが少なくて劣等感をいだいておりました。しかしながら、銃を扱うことが性に合っていたらしく自分の得意なものが見つかりました!今後もヘパイスト様と研鑽していきたいと思っています!」
「それは良かった。これからもよろしく!特に実戦での銃の取り扱いを考えてくれ!実戦での的は止まって居てくれないから!ましてや攻撃をしてくるのだからなぁ。そんな中で拳銃とライフル銃をどう扱うか、考えて見てくれ!」
「はいっ!」
優司の言葉にヘパイストとビリーが大きく返事をした。
「モンチ!」
優司がモンチを手招きして呼び寄せた。
「この子はレプラコーンのモンチと言います。この子が扱える拳銃を用意してくれ!そして取り扱い方の訓練をして欲しい!大丈夫かい?」
「はい!よろこんで!」
「是非とも!よろしくお願いしますよ。モンチ殿!」
ビリーとヘパイストはモンチを快く受け入れた。
「モンチ、拳銃はモンチの様な攻撃手段の乏しい者にとって有効な武器となると思う。まずは、いざという時の護身用の武器と考えて練習してみてくれ!」
モンチは優司に言われるまま黙って頷いていた。しかし、頭の中では他のことを考えていた。
「・・・この子って・・・、僕は子って言われるほどの歳じゃないんだげどなぁ・・・、結構いい歳なんだけど・・・」




