宝の持ち腐れ
7話
俺がこの世界にきて2年がたった。相変わらずレプラコーンの里は平和そのものであった。
この2年間、元の世界に帰る方法はあるのかと、それとなく調べてはみたが、まったく手掛かりは無かった。まぁ正直、天涯孤独の独身が居なくなってもなんの問題も無いだろうと思っているので必死さは無い。ちょっと仕事と借りていた部屋の家賃が気になるぐらいだ。
相変わらずレプラコーンのお手伝いとカイの修行に付き合っているのが日課となっている。
せっかく剣と魔法の世界へ来たのだから魔法を使える様になってみたいと思い、マリアに相談したところ・・・
「無理よ。だって優司は素霊が見えないでしょ?」
そう、魔法を使うには語り掛ける相手の素霊が見えないといけないらしい。確かに力を貸してもらうのに相手がどこにいるのか解らないのじゃ話にならない。残念と思っているとマリアが
「優司はかなり大きな霊力を持っているのだけど・・・。なんで素霊が見えないのかしらねぇ・・・。」
「えっ!?俺の霊力ってでかいの?」
「ええ、相当なものよ。その量はエルフの中でも見たことないわ!」
「やっぱり異世界人だからかなぁ・・・」
「・・・なに、この宝の持ち腐れ感はっ!!・・・」
そうため息を点いていたところにカイが剣術の訓練にきた。
この2年間でカイの腕はグングンと上がった。おそらく指導者が優秀であるからだろう・・・。霊力がでかくても魔法が使えない俺はそうやって自分を慰めた。
「どうだ?『枕を抑える』の意味は判ったか?」
「う~ん、難しい・・・。」
カイは考えながら、ぶつぶつと話している。
「相手と対峙したとき、なにを見て、なにを考える?」
「え~、相手がどう動くかを見て、どう対処するかを考えるかなぁ・・・。」
「ははは、それじゃあ相手は簡単に攻撃できるなぁ。」
「見ることと考えることが大きすぎるよ。もっとシンプルに考えないと。自分自身の考えで考えず当たり前の理として考えないと。」
「当たり前の理!?」
「そう、当たり前の理。俺の元居た世界では物理っていうのだけどね。その物理の法則にしたがって考えないと。自分なりの考えではいくら考えても解らないよ。」
「自分なりの考え?」
「そう、自分なりの考え、今カイが考えているのは自分が見えているものを見て考えているだろ?相手がこうしたらこうしよう、ああしたらああしようとか」
「自分を主体として考えちゃダメだ。主体は当たり前の理だから。」
「まあ、確かに・・・。」
「じゃあ相手がなにもしてこなかったら?カイはどうするの?」
「普通に攻撃するかな?」
「躱されたら?もしくは盾と鎧の完全装備だったら?どうする?」
「レプラコーンよりも素早い種族は居るらしいじゃん!自分の得意な素早さが通用しない相手を想定した場合、どうする?」
「う~~~~ん・・・。」
「速い者も力の強い者も必ず初めにする動作がある。それが見られるようになったらいいんだけどな。」
「必ずする動作・・・。」
「それに一対一の戦いである以上、必ず相手は自分に攻撃してくる。それは絶対だ。当たり前の理、これは絶対なんだよ。」
答えを教えると「なんだそんなことか」って思うことなのだが、あえてもったいぶって話している。別に意地悪をしている訳ではない。
何故かは判らないが、ただ答えを教えるのと、悩んで迷っている者に答えを教えるのでは上達に多大な影響を与える。ただ知ったことと悩みながら知ったことでは雲泥の差があるからだ。
「俺も親父にそうやって教わったなぁ・・・。」
俺は感慨深げに、悩んでいるカイを見て微笑んでいた。




