宴会
73話
優司は少し酔っている様子だ。昼間のヴァスキ達ドラゴニュートへの武闘術の講義が上手くいったことが気分を良くさせている原因であった。
武闘術の講義後、サーラガが歓迎の宴を開いてくれた。優司の周りには昼間の講義を聞いていたドラゴニュート達で溢れている。そのドラゴニュート達がひっきりなしに優司の杯へ酒を注ぐのが酔いを回している原因でもある様だ。
そんな優司の所へタケゾウとキヨタがルイを連れてやってきた。
「ドラゴニュートの方々、そうあんまり旦那を独占しないでくだせぇ!見ていてあまりにもむさ苦しくていけねぇや!」
「そうでやんす!こんな男ばかりのむさ苦しい酒じゃぁ、いくら飲んでも酔えねえでやんすよ!」
タケゾウの話にキヨタが乗る様な感じで話しをしている。
「ささっ!姐さんは旦那の隣に!今キヨタが飲み物を持ってきやすんで!」
「へいっ!今取ってきやんす!」
キヨタが飲み物を取りに行った。ルイは優司に謝罪をしながら優司の隣へ座った。
「すまない、タケゾウとキヨタが優司のところへ行くべきだとうるさいもので・・・、私はドラゴニュート達と話しているのだから遠慮するべきだと断っていたのだが・・・。強引に連れて来られてしまった・・・」
優司はルイの話を聞きながらタケゾウを見た。タケゾウはニコニコと笑い、喜んでいる様子であった。そんなタケゾウに優司は聞いた。
「どうしたんだ?タケゾウ?何か嬉しいことでもあったのか?」
するとタケゾウは少し興奮しながら話し始めた。
「そりゃぁそうですぜ!旦那ぁ!旦那と姐さんが一緒になれる存在だとはっきり判ったんでやすよ!これが嬉しくない訳がないでやすよぉ!!」
「あっしら亜人の体は人間が元であると今日わかったでやす!ということは人間である旦那とエルフの姐さんが夫婦になることが可能であるということでやすよねぇ!これを喜ばずにいられますかってんだい!」
タケゾウはかなり酔っている様子だ。そんなところへキヨタがルイの飲み物を持ってやってきた。キヨタはルイへ飲み物を渡しながらタケゾウの様子を確認し、話し始めた。
「あっしらコボルトは亜人の中でも一際弱い種族でやんす。いつも他の種族達の顔色を伺いながらビクビク生きているでやんす。だから少しでも良い希望が見えると嬉しいんでやんすよ!それが他人のことであっても・・・」
「ましてや強いだけでなく、種族に関係なく優しく接してくれている旦那が幸せになれるかもしれないって解ったらねぇ!」
いいながらキヨタはルイの顔を見た。ルイは顔を赤くしながら慌てて言った。
「し、しかし、優司に思いを寄せているのは私だけではないかもしれないぞ!ルリやレイナだって思いを寄せているかもしれない!」
するとタケゾウがガバッと顔を上げて言った。
「何を言っているんでやすか!あんなチンチクリンの小娘が旦那と合うはずはありやせん!お門違いってもんでやす!」
タケゾウが言った途端に離れたところに居た二つの影が立ち上がり、勢いよく近づいてきた。
「だれが!」
「チンチクリンの!」
「小娘ですってぇぇぇ!!」
近づいてきた影はルリとレイナであった。言うが早いかルリとレイナは弱いファイアーボールをタケゾウとキヨタに放っていた。食らったタケゾウは焦げていた。キヨタは焦げて泣きながら叫んでいる。
「あっしは何にも言ってないでやんすよぉ・・・」
復讐を果たしたルリとレイナがルイに振り返って笑っている。そしてルリが話し始めた。
「ルイがせっかくコクったのに邪魔しちゃったわね!」
それを聞いたルイが慌てて言い返した。
「何を言っている!私がコクったなどと!そんなことはしていない!」
慌てるルイを見て笑いながらレイナが言った。
「だって、さっきルイは言ったじゃない!『私以外の者も優司に思いを寄せているかもしれない』って!それってルイが優司に思いを寄せているって言ってるってことじゃん!」
言われたルイはハッと気づき、顔を赤らめて俯いた。優司は何か言わないといけないと思いながらも言葉が出てこなかった。そんなところへヴァスキがやってきた。
「優司殿、お楽しみのところ大変申し訳ありません。主サーラガがお呼びです。ご足労願えますか?」
優司は助け船が来たと内心喜びながらヴァスキに応じた。
「サーラガ殿が!?わかった直ぐ行こう!案内してくれ!」
優司は歩きながらルイの様子を伺った。ルイは相変わらず俯いている状態であった。それを見て優司は心の中で思った。
「・・・ルイ、すまない。正直、俺も思いは一緒だ。だけど、今はリンを救出することに注力したい。待っていてくれ・・・」
優司はヴァスキに促されてサーラガのところへ急いだ。




