武闘術の解説2
70話
優司の話は続いている。
「骨格の効率の良い動きを重視する理由は、相手の攻撃を避けることを重要とするからだ。さっき話したように、どんなに鍛えても外部からの衝撃の方が勝ってしまう以上、当たらない様にするべきである。よって、素早く動作して相手の攻撃を躱すことが必要となる」
「しかしながら、素早く動くということにも限界がある。どんなに速く動こうとも、風よりも早く、光よりも速く動くことは出来ない。よって、効率良く動作することにより、その問題を解決しようと考えたんだ」
「相手の攻撃に対して的確な動作を滑らかに行うことを技として身に付けることが戦闘では重要であると先人達は実戦で学び取り、体系化させたのが木ノ葉流武闘術というものだ」
優司は木ノ葉流武闘術の成り立ちを簡単に説明した。
「ではまず木ノ葉流武闘術での骨格の効率の良い動作を説明しよう」
「骨格は骨と骨が繋がっている関節とから構成されている。骨格の動作は関節が中心となるため必ず円運動となる。しかしながら、この円運動は真円を描くことはまず無い。ほぼ半円よりも小さい円となる。だが、この円運動の可動範囲が広いほどストロークが大きくなり威力が増すことになる。よって体の柔らかい者の方が有利となるため、ストレッチなどの運動が必要となる。しかし、円運動の可動範囲には限界があり、真円を描くことは絶対に無いことなので威力には限界がある。そこで必要なことは、この小さな円運動を正確に、そして滑らかに連結連動させて動作させることである」
「この動作が骨格の動作の基本的な考えとなるが、木ノ葉流武闘術ではもう一つの円運動を非常に重要と考える。それは『反し』という動作である」
「反しは関節を中心とした円運動ではなく、骨を一本の軸として考えた『ねじりモーメント』として考える。いわゆる『トルク』である」
「関節での円運動とトルクである『反し』を正確に滑らかに連結連動させることで素早く、力強い動作を発生させることが可能となる」
「なぜならば、筋力を反しの動作を次の骨の反しの動作に連結させるように出していく。すると体の芯から絞り出す様に力を出すことになる、体幹にある大きな筋肉から先端にある小さな筋肉に力の伝達を行うため、伝達のルート上にある筋力を全て使うことになるからだ」
「この反しの動作は体全体としての動作としても考える。それは左右を切り替えるという動作である。左と右を反すことによって相手の攻撃を往なす技になる。体全体の反しと骨の反しを行うことで相手の攻撃を滑らかに受け流すことも可能となる」
「以上が『反し』という重要な動作の説明となったが、解らない事などはないか?」
優司は身振り手振りを添えて説明していたが、ふと優司のみしゃべってしまっていることに気づき、ドラゴニュート達に確認をした。すると、ヴァスキ達ドラゴニュートは頭を振って答えた。
「そうか、俺だけが一気にしゃべっているので心配したが、大丈夫なようだな」
優司は安心すると直ぐに話し出した。
「それでは次に重要な要素である『ズレる』という動作を説明しよう!」
「『ズレる』とはある点からある点に一気に移動することを意味する。元の所から移動する先には途中で停止することなく一瞬で移動する。このような考え方である」
「この動作は反しと違い座標上の動作となるので解りやすいと思う。簡単に言うと目的地に行くときは寄り道せず真っすぐ行くということである。途中で立ち止まったり休憩したりもしない」
「この『ズレる』という動作は先ほど話した円運動でも同様に考える。円を描く骨の先端を元の位置から移動先へ一瞬で移す。円軌道上での停止は一切しない」
「ズレる先は相手の死角となるが、状況によって変わるので後で説明する型の中で理解して欲しい。ただし、死角とは相手の視界の外のことであることをここでは理解しておいて欲しい」
「骨格の中にある反しとズレる動作、それから体全体での反し動作、相手との位置関係からなるズレ動作を正確に滑らかに実行すると完全ではないが筋力ではない素早く力強い動作が可能となる」
「ここまでで解らないことがあったら質問してくれ!」
優司はドラゴニュート達へ質問の機会を与えた。するとヴァスキが優司に質問を投げかけた。
「『ズレる』という動作ですが、単純に移動するという動作ではないかと思いまして、『移る』という表現を使わずに『ズレる』という表現を使う理由はあるのですか?」
優司はヴァスキの質問に感心しながら答えた。
「いい質問だ!俺も同じことを師匠である親父にしたことがあるよ!『ズレる』よりも『移る』の方が格好良いし!しかしながら、練習を重ねていくうちに『移る』ではなく『ズレる』の表現の方が正解であることが解ったんだ!」
「『反し』の動作だが、この動作も『ズレる』動作で行うんだ!左右や上下といった相対となっているものを『ズラして入れ替える』様に動作をするんだ!『反し』は円弧の軌道を進むのだが、動作としては『ズレる』の直線として動作していく。結果として円弧の動作となるということなんだ!まぁ、『ズレる』という動作を連続していくと『移る』ということになるって理解した方がいいかなぁ・・・」
「今のところはこんな感じでしか説明できないが、型を教えるときにもう一度説明するから、今のところは大体で理解しておいてくれ!」
「解りました。ありがとうございます」
ヴァスキは素直に受け入れた。そして、もう一つの質問をした。
「反しとズレという動作が重要であることは解りました。反しやズレがどのような動作であるかも何となくですが理解できました。この動作を身に付けるために型があるのだということも何となく解りました。しかし、優司殿は完全ではないとおっしゃいましたが、この他にも重要な動作があるのですか?」
ヴァスキは二つの動作で十分なのではないかと思っている様子だ。優司はにこやかにヴァスキに答えた。
「残念ながら、あと二つの重要な要素があるんだ!続きを説明しよう!」
優司は武闘術の説明を再開した。




