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古流武術異世界戦記  作者: タキケン
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母への思い

57話


「優司さんは母と生活していたそうですが、どれくらいの期間を一緒に過ごしていたのですか?」


 レイナはマリアのことを知りたいのかと思い、優司は正直に話した。


「そうだなぁ、2年とちょっとかなぁ」


「そうですか、その2年の間で私のことを母は優司さんに話していましたか?」


 優司はレイナの問いにかなり戸惑っていた。何故ならレイナのことを一度も聞いたことが無かったからだ。レイナに正直に話すべきかどうかを迷ったが、変に嘘を付く方がレイナを傷つけることになるのではないかと思い、正直に話した。


「そうだな、聞いたことは無かったかな」


 レイナは残念そうに俯きながら話し出した。


「やはり・・・、そうですか・・・、やっぱり母は私のことなんか忘れていたのでしょうね・・・」


「いや、俺が覚えていないだけかもしれない・・・」


 優司が苦しい言い訳をした。


「2年も一緒に暮らしていて一度も話さないなんてありえますか!?優司さんだって、もし母からリンに姉がいるって言われたら絶対に覚えているでしょう!」


 レイナの目には涙が溢れ、今にも流れ出しそうであった。確かに、リンの姉のことを聞いていたら忘れるはずはない。


「マ、マリアはリンの命を守ることに必死だったんだよ!いつ居場所がばれるか警戒していたから!」


 優司は苦しい言い訳を続けた。


「そうですよね!やっぱり妹の方が大切だったんですよ!私のことなんか、どうでもよかったんですよ!」


 レイナの目からは涙が止め処なく溢れていた。そんなレイナを優司はどう慰めようか迷っていた。

 その時、後ろから叫ぶように声を掛けてくる者が居た。


「そんなことない!私はレイナのこと、マリアから聞いていたよ!」


 レイナと優司が振り向くと、そこにはルリとルイが佇んでいた。そしてルリがレイナの前に歩み寄って言った。


「あなたのことはマリアから聞いていたわ!リンに姉がいると!歳は私と同じぐらいだって!私を見ているとあなたを、レイナを見ているみたいで落ち着くって!」

「マリアは私を見るたびに言っていたよ!あなたには可哀想なことをしたって!母親失格だって!」

「マリアがレプラコーンの里の中で私を一番可愛がってくれていたのは私の中にあなたを見出していたからだと思う!」

「あなたのことをマリアは一時も忘れたことなんてないと思うよ」


 ルリは力強く、そして優しくレイナに語り掛けた。レイナは泣きながらルリの話を聞いている。するとルイもレイナにマリアの話をした。


「マリアがリンを連れて里をでるとき、私の元を訪れた・・・、馬を借りるのと、お前のことを私に託すために・・・。何度も私にレイナを頼むとお願いしていた!本当は連れて行きたいと・・・。しかし、もし捕まってしまったとき、一緒にいればリンと共に殺されてしまうかもしれないと、それを心配していた」


「なるほど!マリアはレイナとリンが似ているのを警戒したんだな!追っ手にすればどっちが本命か解らないとき、両方を処分することが一番確実な手段だから!」


 優司はマリアがレイナを置いて行った一番の理由に気が付いて口に出した。


「その通りだ!レイナはエルフの里に居れば危害を加えられることは無い!そして、私が居れば迫害を受けることも少ないであろうと判断したんだ・・・」

「私もマリアと一緒にお前を連れて行きたかったよ!しかし、マリアがそれを拒んだんだ!レイナ、マリアはお前には幸せになって欲しいと願っていたよ!普通に成長し、恋をする幸せを掴んで欲しいと・・・!」


 ルイはレイナを諭す様に優しく語り掛けていた。そして、優司がまた口を開いた。


「ルイがマリアとリンを探しに里を出た時期が遅い理由が解ったよ!レイナの成長を見守っていたからなんだな!」


「レイナが独り立ち出来るまではと・・・、マリアの大切な娘だから・・・」


 ルイの目から一筋の涙がこぼれていた。すると、レイナが絞り出す様に話し出した。


「そ、それでも・・・、それでも、一緒に行きたかった!お母さんと妹と一緒に居たかった・・・!」


 レイナの肩にルイとルリがそっと手を添えて擦っている。すると木陰から大泣きしたタケゾウとキヨタが出てきた。


「わ~ん!お嬢!大丈夫ですおよぉ!お母さんがお嬢のことを忘れていたなんてことは絶対にありやせんよぅ!」


「そうでやんす!絶対にありえやせん!命を掛けて妹を守る母親が姉のことを思わないなんてことはありやせん!」


「キヨタ!おめぇ、良いこと言うなぁ!その通りだ!決めた!決めたぜ旦那!」


 顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしたタケゾウが優司の前に来て決意を語った。


「あっしは今までリンお嬢の救出と奪還て目的にピンとくるものが無かったんでさぁ!会ったことも無い娘の救出といっても実感が持てなかったんでさぁ!けど、今はちげぇやす!俺の目的はレイナお嬢に会わせるためにリンのお嬢を救出する!このために頑張りやす!なぁキヨタっ!」


「へいっ!兄貴もいいこと言うなぁ!」


 優司は苦笑いをしながらタケゾウの決意に返事をした。


「あ、ああ、よろしく頼む・・・」


「よし!キヨタっ!そうと決まれば早速やるぞ!」


「へい!やりやしょう・・・!ところで、何を?」


「ばかっ!おめぇ、明日の戦いのために寝るんだよ!今やらなくちゃいけないのは休息だっ!」


「へい!休みやしょう!」


 そう言ってタケゾウとキヨタは元居た場所に戻って行った。レイナはタケゾウとキヨタの滑稽なやり取りを見て落ち着いた様子だ。

 優司はレイナ達に元に戻って休む様に促し、その後ろに着いて歩いた。ふと、この出来事により、レイナが名実ともに仲間になった様な気がしていた。

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