アンデットモンスターの叫び
58話
不浄の地に入って2か月が経った。相変わらずアンデットモンスター達との戦闘と浄化と休息を繰り返しての旅路となっている。
こんなことを2か月間も続けているのでメンバーの間での連帯感がしっかりと形成された様子だ。
順調に行けば数日のうちに不浄の地を抜けられるとのことだ。しかしながら、不浄の地は簡単に抜けられる所ではなかった。
「またアンデット達が集まってきています!今まで通りの展開でお願いします!」
レイナがアンデット達の気配を察知し、全員へ注意と指示を出した。優司達はレイナの指示の下に配置に付き、辺りを警戒した。すると、数多のアンデットモンスター達が優司達を取り囲み始めた。
「ひゃぁ~!相変わらずウヨウヨいますねぇ!」
タケゾウがちょっとうんざりした声を上げた。その声を合図に戦士系の者たちが飛び出し、同時に法術師が詠唱していた補助の法術を戦士たちに掛けた。
今回の戦闘も今までの通りの手順ではあるが、優司のみはアンデットたちの意識を読み取ろうとしながら戦っていた。
「・・・アンデットは可哀想、敵ではない・・・、いったいどういうことなのか・・・、他と違うこの違和感は何なのか・・・、今度こそ掴めるか・・・」
「・・・ん!何だこれは・・・?」
「・・・けて・・・、すけて」
優司はアンデットモンスターの声が聞こえた様な気がした。確かめるために意識をアンデットモンスターの意識へ集中した。すると・・・。
「・・・助けて!お願い、助けて!解放して!」
「・・・!?・・・」
優司ははっきりとアンデットモンスターの声を聞いた、いや、聞いたというよりも心に響いたといった感じであろう。アンデットモンスター達の意識が優司の意識を通して頭に半鐘の様に鳴り響いている。
「・・・助けて!お願い、助けて・・・!」
「・・・嫌だ・・・!ここに居たくない・・・!」
「・・・置いてかないで!一緒に連れて行って・・・!」
「・・・さみしい・・・!一緒に居てくれ・・・!」
「・・・行かないで・・・!お願い、行かないで・・・!」
アンデットモンスターたちのそれは深い悲しみからくる悲痛な叫びであった。 優司はあまりの大きな負の感情の流れ込みの多さに動きを止めてしまった。その様子を詠唱途中であったレイナが気づき、詠唱を止めて叫んだ。
「いけない!優司さんっ!アンデット達の意識を取り込んではっ!取り込まれてしまうっ!」
レイナが途中で詠唱を止めてしまったため、ダグザとハヤタの詠唱も止まった。しかしながら、ハヤタはすぐさま状況を把握し、各人に指示を出した。
「ルイ!ルリ!優司殿の援護を!戦士達は一度集まれっ!サラとモンチは防御壁を形成せよ!ダグザ殿はディスペルの法術を出来る限り広い範囲で!」
各自訳が分からない状況であったが、ハヤタの指示に従い行動した。ダグザがディスペルの法術を発動させると同時にハヤタもディスペルの法術を発動した。これにより、周囲のアンデットモンスター達が崩れ落ちた。そして、レイナが真っ先に優司の元へ駆けていった。その後ろを全員が追い駆けて行った。
「優司さんっ!大丈夫ですかっ!?」
レイナが優司に声を掛けた。すると優司がゆっくりと返事をした。
「ああ、すまない、大丈夫だ!」
「アンデット達の声をもろに聞いてしまった!ちょっと驚いただけだ・・・、心配ない・・・」
優司は落ち着きを取り戻していた。そんな優司を心配してレイナが声を掛けた。
「アンデット達は可哀想な存在です。死霊達はなりたくて死霊になったのではありません。よって、いつでも誰にでも助けを求めてきます。それなので、敵ではないのですが、決して味方でもありません!寂しいが故に、悲しいが故に仲間を欲します。気を引き締めておかないと、取り込まれてしまいます・・・」
レイナの言葉に優司は素直に感謝した。
「すまない、ご忠告痛みいる」
「いやぁ、優司の旦那でも失敗することがあるんでやすねぇ!」
キヨタが少し喜びながら言った。するとタケゾウが注意した。
「ばかっ!旦那にだって間違いぐらいあらぁな!なに喜んでんだっ!」
「いや、喜んでいるんじゃなくて、安心しているんでやすよ!旦那にも俺らと一緒のところがあるんだなぁって!」
「うるさい!ダメなところだらけのお前と一緒にするんじゃねぇよっ!」
「そんなぁ、兄貴だって俺とあまり変わらないでやんすよ!」
「うるせいっ!」
タケゾウはキヨタの頭をポカリと殴った。そんな二人のやり取りを笑顔で見ていたが、ハヤタが注意を促した。
「辺りに注意しろ!ディスペルでアンデットたちを一旦は退けたが、周囲を浄化した訳ではない!直ぐにアンデット達が押し寄せて来るぞ!」
ハヤタの言葉に全員が周囲に注意を払っていた。すると、何か大きな存在が少しづつ近づいて来る気配がした。
「みなさんっ!気を付けてください!禍々しい者が近づいてきます!」
レイナが霧の向こうを凝視しながら叫んでいた。




