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古流武術異世界戦記  作者: タキケン
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不浄の地

53話


 周りの景色が一変した。不浄の地、言われる通りの土地であった。木々は枯れ、霧が立ち込め大地は汚れた泥の沼地となっている。昼間でも太陽の光があまり届かないため辺りは非常に薄暗い。唯一の通り道があることが救いである。

 この道は不浄の地を浄化しようと試みた何人もの法術師の唯一の成果だそうだ。しかしながら、そういった法術師も今では不浄の地の住人となっているとのことである。

 ダグザの話を聞きながら優司達は不浄の地の一本道を竜族の里を目指して進んでいた。


 「この道は数多の法術師がこの土地を浄化しようと進んで行った道ですじゃ!しかしながら、ほとんどの者は途中でこの土地の住人となってしまったですじゃ・・・。数人の法術師がこの地を抜けることが出来たのですじゃが、この道を作ることだけで力尽きてしまいましたじゃ・・・」


 ダグザの話にルリが疑問を投げかけた。


「どうして浄化を試みたの?何か特別な理由があるの?」


「元々、この土地は獣人達の土地でしたじゃ・・・。獣人達は自分の土地を取り戻すべくこの土地を浄化しようとしましたのじゃよ・・・。しかしながら、獣人達の望みは叶いませんでしたじゃ・・・。そして獣人達は各地へ散らばって行ったのですじゃが、各地で先住していた種族と色々ありましての!そんな獣人達を憐れんだ各種族の法術師が浄化を試みたという訳ですじゃ!」


「しっ!来たみたいよ!」


 ダグザの話をレイナが制した。どうやら死霊達が近づいてきたようである。ネクロマンサーでもあるレイナはいち早く気が付く様子だ。

 レイナの言葉に全員が動きを止め、辺りに注意を巡らせた。しばらくすると、周りで何者か達が近づいて来る気配がした。優司は霧の向こうに意識を集中し、霧の中を凝視した。

 すると、数十体のアンデットがゆっくりと近づいて来るのが確認できた。


「みんな!来るぞ!」


 優司が全員に注意を促した。同時に後方のトールも声を上げた。


「後ろにも居るぞ!気を付けろ!」


「アンデットに囲まれているわ!手筈通りに行動して!」


 レイナの呼びかけに全員が一斉に行動を開始した。


 戦士系の優司、トール、カイ、フェンリル、タケゾウ、キヨタが飛び出した。前方に優司、後方をトール、左翼をカイとフェンリル、右翼をタケゾウとキヨタとなっている。荷車からはあまり離れずにアンデットたちを近づけないのが目的である。ルイは荷車に乗って矢を射り、戦っている者を援護する。

 ルリとサラ、モンチも魔法と神通力で援護を行う。決着はダグザとレイナ、ハヤタの魔法となる戦法である。


「・・・足場が悪い、注意して戦わないと・・・」


 優司が飛び出しながら考えていると、ハヤタが詠唱を終わらせているところであった。


「・・・何だ!足元に違和感があるな!?」


 優司が思っているとハヤタが大音声を張り上げた。


「前衛戦士に浮遊の術を掛けたっ!これで足場の不利は無くなる!思う存分に暴れてくれっ!」


「・・・なるほど!この違和感は少し浮いているってことか!これは心強い!」


 優司はそう思いながらアンデットに向かって行った。


「・・・この戦い慣れた対応、さすがエルフ随一の術者じゃわい・・・」


 ダグザはハヤタの対応の速さに関心していた。


 木ノ葉流舞、この技は木ノ葉流武闘術の極意である。それは『反し』『ズレ』『掛け』『揺らぎ』を連携させて行う。流舞を分解するとこの四つの要素が出てくるといった感じだ。木ノ葉流舞は一対一の戦闘ではなく、複数を相手にした乱戦に力を発揮する。白兵戦の無くなった元の世界では木ノ葉流舞を思う存分に振るうことはまず無い。

 優司は水を得た魚のごとく、アンデット達に流舞を発動させた。アンデット達の間を縫うように進むその様は一つのつむじ風のようであった。

 優司が体を反転させるたびにアンデットが斬られ、あるいは砕かれ、あるいは吹き飛ばされていた。


「ひゃぁ~!凄いな旦那はぁ・・・さすがだぜぇ・・・」


「あ、兄貴!危ないでやんすよ!よそ見してちゃ!」


「うおっ!あ、危ねぇ・・・!」


「気を付けておくんなさいよ!ほら、前見てっ!」


「うるさいっ!わかってらぁな!」


 右翼で戦っているタケゾウとキヨタが優司の姿を見てそんなやり取りをしている。優司の行動範囲が広いおかげで右翼と左翼の負担が軽減されているようだ。


「・・・確かに凄い戦い方だ・・・、あのような戦士はこの世界には存在しないだろう・・・、伝説のマスラオであることは間違いないかもしれない・・・」


 優司の姿を見ているハヤタはそんなことを考えていた。


「・・・木ノ葉流武闘術を皆伝してから数年が経つ、元の世界に居る限り、日本に居る限り実戦なんて絶対にありえないだろうと思っていた・・・、古流武術を極めることなど、無用な事ではないかと考えていた・・・」

「・・・それが今、異世界という舞台で力を振るっている。木ノ葉流武闘術を役立てている。修めた古流武術が誰かの為に役立っている。無駄ではなかったと実感している・・・」


 優司はそんなことを頭の片隅で考えながら戦っていた。


「・・・意識闘法、木ノ葉流武闘術の極意、この技がアンデットモンスターにも通用するとは少し思っていなかった・・・、アンデットモンスターに意識があるのかと疑問に思っていた。しかし、アンデットにも相手を襲う際に意識が働く・・・、意識は対象があれば必ず働く作用の様だ・・・、ただ、アンデットモンスターの向けてくる意識は少し違う感じがするが・・・」


 優司は戦いの中で少しの違和感を覚えていた。

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