出会い
2話
ふと目覚めて当たりを確認してみるが霧はまだ濃いままだ。
スマホで時間を確認すると1時間弱ほど寝ていたようである。とりあえず温泉はやめて適当な町に出てコンビニにでも寄ろうかと考えた。スマホでコンビニを探そうといたときに霧が薄れてきた。ゆっくりであれば走れそうな状況である。
行き当たりで走ってコンビニを探そうと車を走らせ、今日は車中泊にしようと決めていた。
車中泊は慣れたもので無水シャンプーや体を拭くウェットタオルなどは車に積んである。日常で利用するものはほぼ車にある。もっと言うとちょっとした工具や電動工具、バッテリーなども積んでいる。DIYも趣味の一つだから。
この車があれば普通の生活ができる仕様だ。無いのは水だけである。水だけは補給しないといけないのでコンビニを探さなくてはならない。
コンビニに行くため、ゆっくり山を下りていると霧が晴れてきた。少しスピードを上げてしばらく走るが、どうもおかしい。
舗装された道に出ないのだ。舗装はされてはいないが砂利道であり、轍があるので間違ってはいないだろうと車を走らせた。
「来るとき、こんな悪路って通ったかなぁ!?」
そんなことを考えながらゆっくりと進んでいくと少し開けたところに出た。そして木造の小屋の様な昔風の民家があった。
その民家は木々や草に覆われていて幻想的な雰囲気に包まれていた。道を聞こうと思い、車を邪魔にならないところに止め、降りて民家に歩いて近づいた。
民家に近づいて行くと中から小さな女の子が出てきたので声を掛けてみる。
「こんにちは。ちょっと道に迷ってしまって。ここは何処かなぁ?誰か大人の人は居ない?」
女の子がこっちを向く。
「・・・あれ!?耳がやけに長い娘だな・・・」
ゲームなどに出てくる『エルフ』の美少女の様な女の子であった。
女の子が不思議そうに俺を見ながら何かを話し始めた。
「○▽★☆◎◎、◇◎□▽△■○。」
俺はきょとんとした。
「・・・・。」
「何を言っているか解らん・・・。」
「えっ!!ここは日本だよな!?」
そう思っているうちにも女の子が一生懸命に話している。
「○◎△▼□■、☆★◆◇□。」
戸惑いながら一応、俺も話す。
「ごめん!わからない・・・。」
何かに気づいた様に女の子が家の方へ走って行き、家の中に向かって何やら叫んでいた。
しばらくすると女の子の母親の様な女性が出てきた。この人も女の子と同じ様に耳が長い。
女性は女の子と一緒に俺に近づいてきて話しかけてきた。
「○▽★☆◎◎、◇◎□▽△■○。」
やっぱり解らない・・・。
困ったような顔をしていると女性はちょっと待ってという様な仕草をして家に戻っていった。
待っている間、女の子は俺を見ながらニコニコと笑っている。少し不安であった気持ちが女の子の笑顔を見ていると和らいだ。
俺も自然に女の子に笑いかけていた。
数分後、女性が瓶に入った白い薬の様な液体を持って家から出てきた。それを俺に渡し、飲めという様な仕草をした。
「う~ん、なんだろう・・・牛乳か?でもドロッとしている・・・。」
戸惑っていたが、ふと女性を見るとニコニコしている。悪意のある様な顔にはまったく見えない。
意を決し、飲んでみた。以外と旨かった。
「なんだ、これ、旨い!」
そう呟くとエルフの様な女性がニコリとしながら話しかけてきた。
「それは翻訳の薬です。」
はっきりと聞き取れた。いきなり日本語を話し始めた。
「・・・」
「えっ!?翻訳の薬!?」
そう言うと女性は自己紹介を始めた。
「初めまして、私はエルフのマリアといいます。こちらは娘のリンです。」
俺は心の中で叫んだ。
「・・・えっ!エルフ!?なに!?何のこと・・・!?」
俺はかなり動揺していたが、エルフの親子は満面の笑みを浮かべていたので少し落ち着くことができた。
するとエルフのマリアが
「あなたは見たことのない種族ですね。どちらからいらしたのですか?」
と丁寧な言葉使いで訪ねてきた。
俺は戸惑っている素振りは見せないようにと努力しながら
「えーと、東京からですが、ここは何処ですか?」
マリアは笑顔で
「そうですか・・・東京ですか・・・聞いたことのないところですね・・・。」
「恐らく、この世界ではなく、異世界から来たのでしょう・・・。」
俺は無茶苦茶びっくりした。恐らく、もの凄い可笑しな顔をしていたと思う。
「いっ、異世界!?」
俺の驚いた顔をマリアとリンはニコニコしながら見つめていた。