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古流武術異世界戦記  作者: タキケン
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木ノ葉流武闘術2

27話


 優司の講義が続いている。


「次は基本の最後、『揺らぐ』だ。これは『脱力』のことで力を抜くことである。通常、何かの動作をするときは力を出すことを意識してしまうが、力を出す前に力を抜くことが必要である。これは姿勢を正すことの説明のときに出てきたゼロ点調整と同じである。姿勢は形状のゼロ点調整で脱力は力のゼロ点調整と解釈する。形状も力もゼロから始まり、ゼロに戻ることを覚えて欲しい。そして、姿勢を正したときが力を抜くときとなるので、ゼロ点調整は同時に行うこととなる。」

「この『揺らぐ』は、さっき話した『ずれる』の動作をするのに重要な要素となる。正中線を点とした座標上の動きをするとき、脚に無駄な力が入って固まっていては、ずれることはできない。脚の力を抜くことが重要だ」

「やり方は、立った状態で進む位置に向かって正中線をずらす。すると脚が付いて来ないので倒れそうに体制が崩れる。この時に脚を進める。この動作を滑らかに繰り返す動作が『揺らぎ』の基本となる。」

「いつでも『揺らぐ』ことが出来る様に、いつも無駄な力の抜いておく必要がある。逆に揺らぐための力は、いつでも蓄えていなければならない。この力を体に蓄えておく状態が姿勢を正した状態となる。よって、体幹を使うことになる」


 優司は一口、水を飲んだ。優司自身も熱くなっている様だった。


「木ノ葉流武闘術では、この『反し』『掛け』『揺らぎ』『ずれ』を四つの基礎動作と定義している。そして、この基礎動作をまとめた動作方法を『揺瞬法』『反移法』『掛乗法』という三つの基本動作としている。この基本動作を滑らかに行う技を『木ノ葉流舞』という。」

「この三つの基本動作を考えながら『型』の練習を行うことが重要だ。そして型も一人で行うのではなく、受け方と取り方に分かれて行った方が効率が良い。今から型を教えるので、2人一組となってやって見てくれ!」


 優司の指示に従い、各々が型の稽古を始めた。素手での手ほどきの型から始め、打撃の型から組内への型へ変化していくといった具合だ。

 優司はカイへ近づき、ワーウルフ達に型を教える様に指示をした。


「カイは各組を見て廻って間違ったところを修正してやってくれ!できるな?」


 カイは少し戸惑いを見せたが、頷いて答えた。


「わかった!やってみる!」


 優司はカイの背中を微笑みながら見ていた。


 しばらく型の練習を優司は見ていたが、頃合いを見て声を掛けた。


「みんな!次に進むので集まってくれ!」


 全員が優司のところに集まった。


「型の練習は今後も続けてくれれば良いと思う!この里に滞在できる期間は短いと思うので先のことを話しておきたい。今日理解できなくとも、今後の練習のときに思い出してもらえればと思う!」


 優司は次の説明を始めた。この話も全員が真剣に聞いている。


「次は戦い方の話となる。相手と戦う時、何を、そして、どこを視る?」


一人のワーウルフが答えた。


「相手の武器や体格、そして隙がどこにあるかなどですか・・・。」


優司は頷き、相手の意見を肯定しながら答えた。


「確かにその通りだ!特に隙を伺うのは戦闘の基本となる。しかしながら、戦闘のときに相手は隙を見せるだろうか?自分自身も相手に付け込まれない様に隙を作らない様にするはずだ!」

「結局、闇雲にどちらかが先に攻撃し、攻撃をされた方は受けるか避けるか、あるいは負けるかになると思う。この場合は相手より速く動ける者、もしくは力が強い者が勝者となる。身体能力が高い者の方が強いということになる。しかしながら、身体能力が高い者が強いのではない。身体能力が高い者は有利であって強いということではない。身体能力は勝利の一つの要素であるが、条件ではない。実際に小さい者が大きい者を倒し、のろまな者が素早い者を倒す時がある。要は、力が強いか素早く動けるかではなく、どう動くかの問題だ!」

「木ノ葉流武闘術は相手を見ない!相手の意識を視る。そして、相手の意識の先をとる。これを『意識闘法』という。しかしながら、いきなり相手の意識を視ろといっても無理だと思う。よって、まずは何を視るかを今から教えよう」


 優司は一人のワーウルフを指名し、優司と対峙して立つように指示した。そして、優司を打つように言った。

ワーウルフの男は少し戸惑ったが、右手の爪で優司を引っ掻く様に攻撃した。優司はその攻撃を簡単に躱した。そして優司が話し始めた。


「今、俺が躱せたのは身体能力が高いからではなく、攻撃してくるタイミングが解ったからだ!そのタイミングは相手が教えてくれる。それが相手の隙となる!」


 ワーウルフ達は真剣だが、訳が分からないといったような表情をしている。優司は構わず続けた。


「敵を攻撃するとき、必ずする動作がある。それは『引き動作』だ!相手を右手で攻撃するときは、必ず一度右手を引く。一度引かなければ前に出すことは絶対にできない。この引き動作に気を付けながら型の練習をして見てくれ!」


 優司が言うとワーウルフ達は型の練習を始めた。するとカイが優司に近づいてきて聞いてきた。


「この『引き動作』が『当たり前の理』なんだね!?」


 優司は何も言わず、微笑みだけで答えた。

しばらくして再度、優司が声を上げた。


「また集まってくれ!続きの説明をする!」


 講義の再開である。


「引き動作の続きとなるが、引き動作は解ったか?」


 優司の問いかけに何人かのワーウルフが返事をした。


「確かに、攻撃をしようと体を一度退けるのが解りました。しかし、次に何をすれば良いかが解りません・・・。」


 優司は微笑みながら答えた。


「引き動作が解れば十分だ!次に対応方法を教える。」

「相手が引き動作をしたとき、自分はその引きに『釣られる』んだ!相手の引きに引っ張られるんだよ!相手の引き動作に合わせて自分も動く、心を動かす!その動作が自分の引き動作となり、次の動作の準備となる。そして、相手の動きも視える様になる!視える様になれば色々な動作に繋げていくことが出来る様にもなる!」

「一先ず、『枕を押さえる』というものを出来る様になってくれ!これが基本の動作となるからだ!枕を押さえるというのは、相手が引いたものに釣られて動作し、そのまま相手が出してきた攻撃に進んで攻撃自体を抑える技のことだ。」

「これが出来るとカウンターの攻撃も出来る様になるので、絶対に覚えてくれ!」

「木ノ葉流武闘術では『枕を押さえる』の後に『三つの先』というものを学ぶ。三つの先とは『後の先』『対の先』『先の先』という。後の先には『空蝉』という技があり、対の先には『陽炎』、先の先には『水鏡』という技がある。これらの表現は抽象的なので『枕を押さえる』という技が確実に出来る様になるまでは理解できないと思う。よって話だけ聞いてくれれば良い。」

「さっき話した『意識闘法』は、さらに三つの先をクリアしてからの課題である。よって、今の段階では雲を掴む様な話であるから話だけにしておく・・・。」

「日々の鍛錬を欠かさず、やり続けた者のみが辿り着く所となる。よって、今日学んだことを毎日欠かさず型で練習してくれ!今後、機会があれば、また教える様にすると約束する!」


 優司は、そう言って講義を締め括った。

その場にいた全員が優司へ感謝の意を示した。


「ありがとうございました!」

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