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古流武術異世界戦記  作者: タキケン
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木ノ葉流武闘術

26話


「まず、体の使い方の基本だが、手や足といった体の先端に力を入れるのではなく、体の内側から外側、先端に向かって力を連動させるように出す。解るように言うと、体の中側から動かしていく、内側から動作を開始するという意味だ。」


 優司は立ち上がり、実演を交えながら解説した。


「通常、体の先端のみを動かしてしまう者は、体の内側を固めてしまう。それに慣れてしまうと内側を動かせなくなり、先端のみの動作しか出来なくなる。そうなると、全体の数パーセントの筋肉しか使わないので腕の力比べとなり、体の大きなものの方が強いと勘違いしてしまうんだ。」

「では、体の内側から動作を開始するには、どのようにすれば良いか。木ノ葉流武闘術では『体幹を整える』と表現する。簡単に言うと姿勢を正すことだ。これは体勢のゼロ点調整と考えてもらえるといい。動作を必ずゼロ状態から開始してゼロ状態へ戻そうとする。この動作をするには体の内側を動かさなければ出来ない。」

「姿勢を正した状態から動作を開始すると姿勢が必ず崩れる。その崩れを直そうと姿勢を正そうとする。そのときの力を相手に伝えて闘うんだよ。」


 優司の話を全員が黙って聞いている。優司が講師の講習会の様な感じとなっていた。優司は続けた。


「そして、この体の内側、中心から外側へ力を伝える動作を『反し』という。木ノ葉流武闘術の基本中の基本であり、極意である。」

「反しを行うには、まず中心を考える。それから対象だ。」

「基本的な体の中心は正中線となり、対象は左右となる。解りやすく考えると右肩と左肩を考えれば良い。『反し』とは、この左肩と右肩を入れ替える動作のことを言う。この考え方は体中のあらゆる部位で通用する。例えば手の平だと中指を正中線として親指と小指を入れ替えるという具合だ。」

「この動作はトルクとして考えることができる。いわゆる回転軸の周りの力のモーメント、つまり、ねじりモーメントのことだ。」

「このねじりモーメントを関節を歯車と捉えて相手の体に伝えて攻撃を行うんだ!」

「ただし、これを実践するには姿勢を正すことが必要となるので、姿勢を正せないと100パーセントの力が発揮できない。戦えない訳ではないが威力は低下すると考えて欲しい。」

「姿勢を正していることが出来ているかを判断するには色々な『型』を行うことだ。色々な型を行うことにより、得意な型と不得意な型が出てくる。この不得意な型が姿勢を正せない状態と理解できる。これは人それぞれによって生活習慣が異なるから、生活習慣の中で先端しか使わない動作を続けると、生活習慣に合った『固まり』が体の中に出来てしまう。固まりは力の伝達を阻害する要素となるので『解す』必要がある。」

「固まりを解すには『整体』か不得手な型を出来るまで練習するしかない。一人で出来る整体はストレッチと体操となるので、ストレッチと体操、不得手な型を日々、繰り返して行う必要がある」

「これは強くなるための欠かせないセオリーだ!」


 優司がカイに目をやると、真剣に目を輝かせながら聴いているのが確認できた。


「次に『力の出し方』について話そうと思うが、休憩なんか入れようか?」


 優司がみんなに聞いてみたが、全員が無言でかぶりを振って答えた。よって、優司は続けた。


「では力の出し方だが、力は押し出す、または握り込む様に出すのではなく、絞り込む様に出す。」

「イメージとして雑巾を絞るときを考えて欲しい。雑巾を絞るときは雑巾をぎゅっと握らないと思う。肘から手に向かって絞り込んで力を出すだろ?これを体の中心から行っていく。そして、握らないで『掛ける』ように道具を持つ。この『掛ける』も木ノ葉流武闘術の極意の一つだ!」

「道具を掛けるには体の凹凸を使うのと、体の部位を掛けられる形状にするのと二つがある。この部位を掛けられる形状にする力が絞り出す力となる。力を絞り出し、形状を整えて関節を固める。この様に体を形作る。戦闘は、この形作りの変化の連動と捉える。」

「例えば相手や道具を掴むとき、手の形をフックの様な形状とする。それを掛ける。このフックは対象物の大きさや形状によって変化することになる。この変化を学ぶためには色々な『型』を学ぶ必要がある。このためにも『型』は重要となると理解して欲しい。」

「ちなみに、これが出来ないと順手と逆手を切り替えることが出来ない。『反し』と『掛ける』が出来る様になれば、順手と逆手の切替が出来るので、右利きと左利きでの対応の違いが無くなる。」

「簡単にまとめると、反しと掛けるを連動させる。つまり、姿勢を正した状態をゼロ状態として、掛けるが出来る形状に変化させる。その変化の時に筋力を絞り出す様にする。そしてゼロに戻そうと姿勢を正す。この時にも筋力を絞り出す様に使う。この繰り返しを形にしたものが『型』だ。」


「なるほど・・・。」


 優司が話す合間にリュカオーンが一言つぶやいた。


「さて、次だが、次も木ノ葉流武闘術の極意である『ずれる』だ。これは戦闘に大きく係わる要素となるので、しっかりと理解して欲しい。」

「ずれるとは、すなわち今いる位置から相手の死角へ移るということになる。しかしながら、ずれるという動作は一つの動作と捉える。つまり、ある位置から目的の位置まで歩いて行くという連続した動作ではなく、ある位置からある位置にずれ、それを連続させて目的の位置に辿り着く様な感じである。一つ一つのずれは瞬時に行い、ずれの途中で停止することは絶対にない。点から点へ必ずワン動作で行う。」

「足を動かして移動するのではなく、正中線を上から見た点と捉え、その点を座標上の必要な位置へずらすのである。」

「もっともらしく言うと難しいかもしれないが、戦闘のときを考えると、戦闘では必ず相手が居るので、その相手の死角へずれることとなる。多数を相手にする場合でも、目の前にいる相手は一人となるので、その者と自分を中心に座標を考える。そして、絶対的な死角とは相手の背後となるので自分が後ろに下がることは無い!後にずれても追いかけられるだけだからだ!」

「しかしながら、いきなり相手の背後にずれることは出来ない。出来るのは左右である。よって、一旦左か右にずれ、そのずれを繰り返して背後に回るようになる。」

「ただし、戦闘の場合、相手の意識は敵である自分へ向けられている、よって、意識が集中している分、死角が広がる。相手の懐や横と言った所でも十分に死角となりえるのだ!よって、無理に背後に回り込む必要は無い!」

「そして、基本的な考えだが、相手が右半身である場合、相手の右の外側が死角となる。この位置へタイミング等を計って『ずれる』ことが基本である」


「なるほどっ!これが俺が蹴られた理由か!」


 トールがいきなり大声を上げた。随分と興奮している様子である。

優司はニコっと微笑みながら話を続けた。


「この『ずれる』位置も型に織り込まれている。よって『型』の習得は絶対に必要となる、しつこいと思われるかもしれないが、理解してくれ。」


 みんな優司の話に夢中になり、真剣に聞いている状況だ。

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