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古流武術異世界戦記  作者: タキケン
19/86

待ち伏せ

18話


 朝食を済ませ、早速エルフの里を目指して出発した。

ひたすら森の中の街道を西に進んで行くことになる。街道と言っても整備などされた道ではない。森の中や草原といったところの通りやすい場所を人々が歩き、自然とできた道だ。そんな獣道の様なものを行商人や武装商隊などが更に切り開いた道である。

 その様な道の木漏れ日の下を歩いている。無事にリンを救出する方法を考えながら歩いていた。

 ふと木漏れ日が射した木の幹のところを見るとキラキラと輝いているところがある。恐らく朝露が木漏れ日を反射して光っているのであろうと思った。

 気候も良い日なので、リンの救出が目的でなければ、楽しい旅になっていたのではないかと考えていた。

 コバエが数匹、目の前を飛んでいる。暖かくなったきたので虫も活動を始めたらしい。そんなことを思いながら手でコバエを払った。その仕草を見てサラが話しかけてきた。


「どうしたの?優司、手なんか振っちゃって?」


「ああ、コバエがうるさくてな・・・。」


「コバエ!?」


サラが不思議そうな表情をして俺を見ていたが、そんな会話を打ち消すような嫌な気配を俺は感じた。

 俺は前方を確認した。前方を見ると道が左に少しカーブしている様である。そして、その先に少し広くなっているところがある様だ。

 俺は胸騒ぎの様な感じが込み上げてくるのを抑え、全員に気を付ける様に促した。


「みんな!なんか胸騒ぎがする・・・。慎重に行動しよう。」


カーブを曲がり、広い所にでると数十人の人数に囲まれた。

俺たちは一旦停止して相手の出方を見た。


「ようっ!お前達か?魔族の商隊を襲ったっていう集団は?」


 伸長180センチメートルぐらいであろう非常に醜い種族の男が前に進み出てきて問い掛けてきた。恐らくこの集団の頭であろう。俺は警戒しながら男の問に答えた。


「魔族の商隊を襲った覚えはないが、魔族の集団を追っているのは俺たちで間違いない・・・。」

「で、俺たちに何の用だ?」


俺は頭の男の前に進み出ながら、腰の刀に手を掛けて鯉口を切った。


「やっぱりそうか!魔族の旦那から盗賊共に襲われたって聞いてな。追いかけて来る様だから始末してくれって頼まれたんだよ!」

「ついでに奪われた荷物は俺たちにくれるってよ!」


二十人ぐらいは居るであろうか、大きい醜い種族の者が三人、その他はドワーフと同じぐらいの伸長で体格が細い種族のようである。一人だけ集団の後ろにエルフと思われる女性が弓を持って立っていた。


「ふんっ!スプリガンとコボルト共が生意気を言いやがる!お前達がいくら集まっても無駄だ!俺たちには勝てん!」


 トールが一番後ろで回りを睨み回しながら叫んでいた。


「いや、俺たちは魔族に奪われた方だよ・・・。家族をな!」


俺は言うや否やスプリガンであろう集団の頭の首を態勢を変えずに『抜き』で切り落とした。

 それを合図に戦闘が始まった。

俺は弐の太刀でスプリガンの頭の後ろに居たコボルトを袈裟懸けに切り伏せ、参の太刀でその左隣に居たコボルトを逆袈裟に切り上げた。

 チュールがスプリガンを一人倒し、フェンリルがもう一人のスプリガンを倒していた。トールは後ろでコボルト達を蹴散らしていた。

 ダグザは直ぐに防御の神通力で土の盾を作り、サラが更に気流の壁を作って防御を固めていた。

 カイがルリとモンチを守るようにコボルトと戦い、ルリがカイの後ろからファイアーボールの魔術で援護をしている。ヤタも爪と嘴でコボルトと戦い、その援護をヘパイストが行っていた。

 ふと見ると、一匹のコボルトが後ろに居たエルフに何やら叫んでいた。叫ばれたエルフの女性はハっと気が付いた様に弓を構えた。

 エルフの女性は俺の左手側に居たので、ちょうど弓を持つ左側、背中を俺に向けている態勢であった。

 俺は、すかさず棒手裏剣をエルフの女性の左肩へ打ち込んだ。エルフの女性は低い悲鳴を上げて倒れこんだ。

 勝てないと解ったコボルト数人が一目散に逃げていくのが見えた。戦闘はほんの数分で終わった。圧勝である。


 俺は倒れこんで棒手裏剣の刺さった左肩を押さえているエルフの女性の元へ歩み寄った。

 警戒しているエルフの女性を無言で抑え、棒手裏剣を引き抜いた。エルフの女性は苦痛に顔を歪めた。

 俺はダグザを呼び、エルフの女性のキズを治すように言った。エルフの女性は驚いた表情を見せていた。

 すぐに荷車のところに行き、全員が無事であることを確認した。怪我をしている者は一人も無く、初めての戦闘を勝利で納めることができたことに胸を撫で下ろした。

 ルリとカイがエルフの女性のところへ行き、何か話し始めていた。入れ替わりにダグザが歩み寄ってきた。

 俺はみんなを労った。


「みんな良くやってくれた!怪我をしたのが誰も居なくて本当に良かった!」


 サラが得意そう、にふんぞり返っている。俺はサラに話し掛けた。


「サラも良くやってくれた!とっさに風の防御柵を作って土の壁の隙間を補強するなんて大したもんだよ!」


 するとサラは得意になって言った。


「まぁね!当然よ!」


 するとダグザが口を挟んだ。


「わしが言っておいたんじゃよ!わしが土の盾を作ったら、その盾の間を風の盾でカバーする様にってなぁ」

「土の盾ですべての間を囲んでしまうと相手が見えなくなるからの!よって土の盾の間を風の盾で補強すれば相手も見えるし完璧じゃからのぅ!」


 するとサラがふて腐れながら言った。


「ふんっ!あんたに言われなくてもやってました!」


「なっ!なんじゃとぉ!」


ダグザが真っ赤になりながら怒鳴ろうとしたが、俺はなだめながらダグザをサラから引き離した。

やれやれと思っているとヘパイストが笑いながら言った。


「風と土は元々相性が悪いんですよ!お互い打ち消しあいますので・・・。」


俺は、なるほどと、あの2人の仲が悪い理由を理解した。


カイとルリがエルフの女性のところに来るようにと俺を呼んだので近くに行った。

近づくとルリが話し始めた。


「このエルフの女性、騙されていたみたい。」

「私たちが魔族の商隊を襲った盗賊で、その討伐をするから手伝って欲しいって言われていたらしいの」

「でも私たちを見たら盗賊とは思えないから迷っていたんだって、そんなときに怒鳴られたから思わず弓を引き絞っちゃったんだってさ」


 するとエルフの女性が謝罪をしてきた。


「すまない。騙されていたとはいえ、あなたたちを襲ったのは事実だ。どんな罰でも受けよう」


 俺は軽い口調で答えた。


「謝罪も罰も必要ない。一人の怪我人も出なかったから問題もない」

「俺は優司という名だが、あなたは?」


俺はエルフの女性の名前を聞いた。するとエルフの女性は えっ!と少し驚きながら名前を名乗った。


「あっ、私はルイという。エルフのルイだ」


「そうか、ルイっていうんだね。実は俺たちはエルフの里に行くつもりなんだ!」

「理由は魔族に攫われたエルフの娘を救出するための助力を乞うため、それと殺された娘の母親の敵を討つためにね」


するとルイが驚いた様に問い返してきた。


「攫われたエルフの娘!?もしやリンのことか!?」

「母親って・・・!マリアのことか!?」


俺はリンとマリアの名前が直ぐに出てきたことに驚いたが、ルイの問に答えた。


「そうだ、リンとマリアのことだ。レプラコーンの里に身を寄せていたマリアとリンを襲い、マリアを殺してリンを連れ去った」


 ルイは中空を見つめながら呟いた。


「レプラコーンの里にいたのか・・・。」

「すまない!!まさかマリアとリンの恩人だとは思わなかった!!」

「私はマリアのいとこにあたる。里から出たマリアとリンを探していた」

「まさか、魔族に!」


 ルイは悔しそうに、目に涙を浮かべながら話していた。


「私も仲間に加えてくれ!エルフの里への道案内をする。なによりもリンを救い出さなくては!」


俺は微笑みながらルイの申し入れを受けた。


「それは、ありがたい。なによりアーチャーが仲間に加わるのは心強いしね!」

「みんな、異論はあるかい?」


 今の話を聞いていたため、当然、誰も反対すものは居なかった。

こうして、ルイというエルフの戦士が仲間に加わった。

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