仲間
13話
トールとテュールに言われるままに全員が席に着いた。店は結構繁盛しているようで色々な種族でごった返している。
店の中央にある大きいテーブル席になるので、少し大きめの声でないと聞き取れないと思われた。
早速トールが酒と料理を注文し始めた。
「ビールはあるか?ラム酒は?あと食い物を適当にジャンジャン持ってきてくれ!」
「あっ!酒は飲めるよな?」
俺は大丈夫だが他の者が心配だったので、酒はあまり頼まないようにと言った。
「酒は少しだけにしておこう。明日は早く出発したいのでね・・・。」
「そうか?まぁ、好きなだけ飲んでくれ!」
そんなことを話しているうちに酒と料理が運ばれてきた。
「さあ!ジャンジャン飲んで食べてくれ!今日の俺は機嫌が良い!」
トールは豪快に笑いながら酒と料理を進めてきた。
勝負に負けたというのに機嫌が良いとは随分と気っ風の良い男である。
「そういえば、こいつの紹介がまだだったな?こいつは俺の従者をしているヘパイストという。仲良くしてやってくれ。」
テュールが荷車に盗難防止の法術を掛けたドワーフを紹介した。
「ヘパイストと申します。法術を少し使えます。本業は鍛冶職人ですが砥ぎもできます。まあ、道具のメンテなら大体はこなせます。」
ヘパイストと名乗るドワーフはトールとは真逆の丁寧な自己紹介を行った。
「ところで、なぜ魔族を追っているんだい?見たところ全員武装している様だが・・・。随分と重大な問題なのかい?・・・、良ければ詳しく聞かせてくれないか?」
テュールが聞いてきた。するとトールも打って変わって真剣な表情で話しだした。
「そうだ、事と場合によっちゃあ、力になるぜ!」
俺は自己紹介と仲間の紹介、異世界から転移してきたこと、こちらの世界でのこと、追っている魔族にマリアが殺されてリンが連れ去られたことを掻い摘んで説明した。
するとトールが
「なぁにぃぃ!?エルフの親を殺して子供を連れ去っただぁ!・・・許せん!!」
「なるほど・・・、あの厳重な馬車の中にエルフの娘が捕らわれていたのか・・・。」
テュールが続けた
「知っていれば、そのまま魔国に帰す様なことはしなかったんだがな・・・。」
するとサラが
「仕方ないわよ!知らなかったんだから!」
口いっぱいに食べ物を頬張りながら言い放った。
「よしっ!決めた!俺もエルフの娘の奪還を手伝おう!テュール!お前も行くよな!?」
トールが憤りを抑える様にテュールに言い放った。
するとテュールが
「だな!そんな連中を野放しにしておくことは出来ない・・・。」
「決まりだ!優司!いいだろう?断っても俺たちは付いて行くぞ!」
トールがニヤッと笑いながら言い放った。
俺は少し考えたが、戦力は多い方が良いと思い3人の申し出を受けた。
「で、魔族を追って行って、どうするつもりだ?まさか、そのまま乗り込む訳じゃないだろう?」
テュールが冷静に痛い所を点いてきた。
「実はそうなんだ・・・。正直に言うと、どう救出するべきかの計画が思いつかなくてね・・・。」
俺は正直にノープランであることを伝えた。
「う~ん、このまま乗り込んでも返り討ちに遭うのは目に見えているなぁ・・・。」
テュールが顎に手を当てて考え込んでしまった。
すると、そばで話を聞いていたレプラコーンよりも小さな種族の老人が話しかけてきた。
「すみませんねぇ。聞くつもりはなかったんじゃが、話が聞こえてきてしまって・・・。聞くに尋常な事態では無い様ですなぁ・・・。」
「あっ!申し遅れました。私はダグザと申します。」
全員が話しかけてきた者の方を見た。まっさきにサラが驚きの声を上げた。
「えっ!ウソ!!信じられない!!」
テュールもほぼ同時に驚きの声を上げた。
「お主!ノームか!?」
続いてヘパイストが冷静に
「人型に受肉したノームとは・・・、非常に珍しい・・・。」
サラが引き継ぐ
「ちょっと!どういうこと!?亜人に憑依できるなんて!ありえないんですけど!?」
「まさか!?あんた亜人を殺して体を乗っ取ったんじゃないでしょうね!?」
するとダグザと名乗ったノームが
「ははは!まさか!それが不可能なのは、お前さんが一番よく解っているじゃろうに!」
ダグザはサラから変な疑いを掛けられたが、冷静に大人の対応をしていた。
同じ精霊族でも大違いである。
「この体を手に入れられたのは偶然じゃよ。そこのシルフが言っている様なことは決してやっておらんよ。」
「そもそも精霊が生物を殺すには一度姿を現さなくてはならん。その時に莫大な霊力を使う。そして殺すための手段にも霊力が必要となる。さらには憑依するときにまた、莫大な霊力が必要じゃ。そんな大量な霊力を持つ精霊などおらんよ!」
「まぁ、精霊ではなく、神霊であれば居るかもしれんがのぉ・・・。」
「・・・なるほど、そうなのか・・・。解りやすい説明だなぁ・・・。」
俺はサラがダグザに絡んだのは、人型の肉体を手に入れられたダグザを妬ましく思ったからだろうと理解した。
「ところで、話に割って入るのは申し訳ないが、エルフの里から離れて暮らすエルフの娘を魔族が攫っていくのは尋常な事態ではないと思う。」
「もしかしたら世界の趨勢に関係することになる問題ではないかと、ワシはおもうんじゃが・・・。」
「ワシの案なんじゃが、一先ず魔国に行くのを取りやめてエルフの里へ行ったらどうかの?エルフ達に状況を話してみた方がよいと思うんじゃが。」
俺はダグザの話に関心し、納得した。少し考えれば判るようなことであった。マリアを殺され、リンを攫われたことで冷静さを欠いていたと改めて思い知らされた。
「ご助言、ありがとう。確かにその通りだ!まずはエルフの里へ行って状況を知らせよう。むしろ、リンの救出にエルフの力を借りた方が良いに決まっているしな。」
そう話すとダグザが同伴を申し出てきた。
「そうと決まれば、ワシもお伴させて貰いましょうかのぉ。事がことだけに、この目で見届けたいからのぉ!」
「それに、メンバーを見たところ魔法を使えるのはレプラコーンのお嬢ちゃんとお兄ちゃんが初級の上といったところかな?・・・。」
「シルフが風属性の神通力を使えるかの?」
するとサラがムッとしながら言った。
「ふんっ!何よ!失礼ね!だから何なのよ!」
「すまん、すまん!怒らんでくれ!ワシの法術は上級クラスなのでな。おまけに土属性は神通力じゃからのぉ・・・。」
「同伴の売込みじゃよ!」
ダグザはニコニコしながら話していた。
俺は法術や神通力も重要だが、ダグザの様な冷静で知恵のある長老的な者が一人居た方が良いであろうと判断した。
「ありがとう。むしろ、こちらからお願いしたい。リンの救出を手伝ってくれ!」
俺は素直にダグザに助力を頼んだ。
「そうと決まれば、早速ビールじゃな!良いかな?トール殿?」
ダグザはニヤっと笑いながらトールに話した。
トールは一瞬キョトンとしたが、直ぐにダグザに答えた。
「ああ、もちろんだ!ジャンジャンやってくれ!新しい仲間に乾杯だ!」
俺は新しい仲間が3人も加わったことにより、緊張が少し和らいだ感じがした。そして、飲まないでおこうとしていたビールをおかわりしていた。




