マリアの死
10話
マリアの家に戻るとレプラコーンの里長のバルドが来ていた。法術師のエリーも来ており、モンチと共にマリアの治療を行っていた。ルリがレプラコーンの里へ呼びに行ったそうだ。
部屋に入るとバルドが深刻そうな顔をしており、モンチは泣きながら治癒術を行っていた。エリーと目が合うとエリーは首を小さく横に振った。それを見て俺はマリアが助からないと悟った。
マリアに近づくと、マリアはか細い声で俺を呼んだ。
「ゆ、優司、り、リンは?」
「すまない・・・。連れて行かれてしまった・・・。」
「だが、必ず助ける!約束する!」
「お、お願い・・・必ず、リンを・・・。」
「わかった!もうしゃべらないで・・・。」
「ゆ、優司は・・・、リンのガーディアンだから・・・、お願い・・・。」
「ああ、俺はリンのガーディアンだから、必ずリンを取り返すよ。」
「お、お・・ね・・が・・・い・・・。」
マリアは静かに息を引き取った。
レプラコーンの里から少し離れた町のこと。
グレーターデーモンが馬車の中へ声を掛けている。
馬車の中にはアークデーモンと一人のエルフが向かい合って座っている。
「ただ今、戻りました。」
「うむ、お前だけか?レッサーデーモンとガーゴイルはどうした?」
「それが・・・、全員倒されました。」
「倒された!?あの妖獣どもにか!?」
「いえ、あの後・・・、一人のヒューマンが現れまして、その者に全て倒されました。」
「ヒューマン!?それは真か!?何故にヒューマンがそんなところに!?」
「わかりません・・・。しかしながら、確かにヒューマンでした。」
「して、そのヒューマンは倒したのか?」
「申し訳ありません。こちらの不利を悟り、不本意ながら撤退いたしました。」
「そうか、わかった、ご苦労であった。」
「その者は娘を取り返しに来るか?」
「はい、必ず来ると思います。」
「そうか、では、手早く処分するように。」
「はっ!必ず!」
そう言って馬車は魔国を目指して出発した。
その馬車の中でアークデーモンとエルフが話している。
「よろしいのですか?そのヒューマンとやらを放っておいて。」
「グレーターデーモンが何とかするであろう。」
「大丈夫ですかな?」
「手勢はまだある。大丈夫であろう。」
「そのヒューマンとやらは、何者ですか?」
「いや、詳しくは判らないが、たいした者ではない、気にするな。」
「そうですか、わかりました。」
「なに、娘は手に入れたのだ。あとは娘の成長を待ち、力に目覚めさせるまでのこと。その時に全て旨くいくであろう。」
馬車の外ではグレーターデーモンがレッサーデーモンに何かを指示し、他の魔族を指揮してリンの乗った馬車を魔国に向けて出発させていた。
その様子を町の酒場の窓から一人のドワーフが眺めていた。
「魔族なんて、めずらしいな!しかも何か慌ただしいみたいだなぁ。」
「確かに、この辺りに魔族が来る理由は何だろう?」
ドワーフの問いかけに2メートル以上はあるかと思う大男が答えていた。そこへもう一人のドワーフが駆け込んできた。
「どうだ、ヘパイスト、魔族たちは何しに来ているんだ?」
「詳しいことは解りませんが、レプラコーンの里に用があったようです。そこで何者かに襲われたようです。なんでも素手でガーゴイルを3体も倒したそうです。」
「素手でガーゴイルを3体倒した!?」
問い掛けたドワーフが答えるより先に、大男が驚いて見せた。
「ほう、素手でガーゴイルを3体倒したのか・・・。一体、どんな種族だろうな・・・。」
「本当か!?聞き間違いじゃないのか!?」
「確かです!グレーターデーモンがレッサーデーモンに話していたのを聞きましたから!それに、追いかけて来るだろうから返り討ちにしろと命令してましたよ。」
「ほう、では、この町に来るかもな、その種族・・・。」
ドワーフは何故か楽しそうに微笑みながら話していた。




