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魔王へのレクイエム  作者: 浜柔
第六章 勇者として
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第八十二話

 着陸できそうな場所を探していると、奇妙な空き地を見つけた。森の木を引っこ抜いてから(なら)したようにしている。不自然だが他に適当な場所が見つからないため、あるいは不自然だからこそ、そこに降りることにした。

 着陸前にクインクトが浮遊器(フローター)付きのカバンを背負い、地上すれすれを飛んで周囲の偵察をする。横移動は地面に棒を突き立てて漕ぐ。そして最後に地上へと降りる。

「危険は無い! 大丈夫だ!」

「判りました!」

 クインクトの報告を受けたノルトがゴンドラを着陸させ、ノルト、エミリー、オリエがゴンドラを降りた。

「うへぇ、ぬかるみだ」

 エミリーがぼやく通りにあちこちがぬかるんでいて、歩き難い。これも雨の名残である。

 改めて地面を見ると、均された土の上には角の丸まった大きな台形の凹みが至る所に付いている。それに混じって女性の足跡のように見えなくもない跡も有る。いずれも雨で崩れていて、自然のものかどうかが判別できない。

「この台形の跡は足跡のようにも見えますが、こんなのは聞いたことも有りませんね……」

 しかし、これ以上見ていても何も判らないため、追及は諦めた。目的は別に有るのだ。

 ぬかるみを避けつつ遺跡の中心と思われる方へと進み、森に入る。木々はまばらでも、近付いたらうぞうぞと動き出す樹木や、襲って来る樹木が有るので気が抜けない。

「くそう、こんなの魔法で一発ぶっ飛ばしちまえば簡単なのによ」

「お気持ちは解りますが、遺跡に影響しかねないのでご自重お願いします」

「解ってるよ……」

 解っていても愚痴りたい時は有るものである。

 襲い来る樹木をクインクトやオリエが斬り倒し、エミリーが火柱を立てながら万が一にも遺物に影響しないように一本ずつ根を残して焼く。三人がどうやってそれを為しているかは彼ら自身のみが知るところだ。

 済し崩しに森を拓いて道を造りながら進んだ先、城壁跡と思われる場所に行き当たった。崩れたそれに登ってみると、目の前は大きく抉れて底の方に水が溜まっていて、遥か遠くにまた城壁跡のようなものが見える。

「大きさからして帝城のようですね」

「ああ。こりゃ、いつかの遺跡と比べたら随分と恨まれてたようだな」

 サーシャ達と一緒に調査した遺跡には、こことは違って抉れた場所が無かった。薄く広くと言った塩梅である。

「恨みですか……。そうかも知れませんね……」

 クインクトは何気なく感想を言っただけだったが、ノルトには何か重要なことのようにも感じられた。

 エミリーが顔を顰める。

「こんなんじゃ何も残ってねぇんじゃねぇか?」

「確かにお城の方は期待薄ですね……」

 帝城の跡を調べるとしても内側から城壁に向けて吹き飛ばされた土砂を掘り返さなければならない。そうして掘っても、城壁付近に重要なものが有るとは考え難い。ノルトと言えどもそこから手を付けるのには二の足を踏む。

 しかし、手掛かりが残されているのが帝城だけとは限らないのだ。城壁の外側は内側より被害が少なそうに見える。

「とにかく、周辺から調べてみましょう」

 調査はここまでの道中と同じように森を拓くように木を斬り、木を燃やして安全を確保しつつ行う。まずはゴンドラを帝城近くに移動させられるよう、エミリーが周辺の木の地上部分を燃やす。切り株のように残る焼け跡が邪魔ではあるが、枝さえ無ければ小型ゴンドラが降りられる程度には間隔が空いているので妥協する。ゴンドラを移動させたらこの日は終わった。翌日からが本格的な調査となる。

 そうして始めた調査だったが、何の進展も無く、一日二日と過ぎる。

「調査ってのは思ったより大変なもんだな」

 エミリーが溜め息混じりに零した。

「すいません。エミリーさんには食事の世話までして戴いているのに。疲れたら気兼ね無く休んでください」

「いや、そうも行かないだろ。その分だけ終わるのが遠くなるんだからよ」

「まあ、そうなんですが……」

 エミリーはふぅと息を吐く。

「ほんじゃ、もう一頑張りすっかぁ」

 魔王に関わることなので飽きても止めようとは思っていないエミリーだ。何より、リリナが真剣に調査に加わっているので無下にできる筈もない。

 そんな努力が実ったのは、予定も過ぎた、調査を始めて六日後のことだった。


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