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魔王へのレクイエム  作者: 浜柔
第二章 魔王は古に在り
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第十六話

 日が変わって遺跡調査の続き。建物の痕跡の並び方から道路の配置も徐々に明らかになり、遺跡の全体像も見えてくる。道路や建物の配置が朧気ながらでも判ってくれば、その分だけ調査する範囲を狭めることができる。道路の下には地下室など造られないものだ。そしてこの町には約千戸の家が在ったらしい。

 その建物が在っただろう部分を中心に調べた結果、地下室らしきものは最初に見つけたのを除いて十二箇所。三箇所は天井が崩落したらしく陥没していて、残る九箇所は土砂が入り口を塞いでいた。

 初日の発見に比べれば、二日目からの四日目の成果はささやかなものだが、いつも通りなのは二日目からの方である。

 ただ、何かとノルトが「疲れた」と言い、それに毎度の如くドレッドが目くじらを立て、そのドレッドをサーシャが諫めてを繰り返さなければ、四日目の夕方まで掛かった調査も昼過ぎには終わっていたことだろう。その悶着の回数だけクインクトの溜め息も出た。

 夜にはサーシャとマリアンとで調査に合わせて書き記していた遺跡の地図を元に発掘の計画を立てる。

「全部調べたいところですが、時間の制約も有りますので陥没している所は後回しにしましょう」

 陥没している場所には水も溜まっていて、壁らしきものが無ければ元々水溜まりのような池だったと思ったことだろう。そしてそんな場所だから状態の良い遺物が望めそうにない。

「貴様がぐずぐずしなければ済む話だろう」

 ノルトの提案にドレッドが噛み付いた。ノルトがもっと働けば全ての箇所を調査できると言いたいのだ。

「ドレッド!」

 そしてここでもそのドレッドをサーシャが諫める繰り返し。ノルトの提案そのものにはドレッドの言う意図は含まれていないからか、反比例するようにサーシャの声に苛立ちが含まれる。

「ノルトのが明日までに発掘の順番を決めなさい!」

「はい」

 ノルトは目を(しばたた)かせながら頷いた。

「明日からはその順で発掘を進めます! ドレッド、いいですね!?」

「畏まりました」

 サーシャがドレッドを睨み付けて言うと、ドレッドは畏まる風でもなく答えた。

「以上、解散します! 直ぐに部屋に戻りなさい!」

 サーシャはノルトとドレッドを睨み付ける。自分こそ逃げ出したい気分のサーシャだったが、二人より先に席を立ってはまた悶着を起こしかねないのだ。少なくともどちらか一方が立ち去るまでは動けない。

「姫様……」

 そんなサーシャの気持ちに気付いたのだろうマリアンが気遣わしげにする。

 しかし当事者の一方であるノルトはまるで気に留めていない様子だ。

「ではお先に失礼します」

 軽く挨拶して席を立った。

 それを苦々しげに見送ってからドレッドも席を立つ。もしもサーシャが先に席を立っていれば小言の続きを言い出したことだろう。

「では自分も失礼いたします」

 部屋に戻るドレッドを見送りながらサーシャは溜め息を吐いた。

「どうしてあの二人は……」

 ここまで気の無い様子で眺めていただけのクインクトが目を(すが)める。

「姫さん、『あの二人は』と言ってるが、絡んでるのはいつもドレッドの旦那だぜ?」

 クインクトから見れば、問題が有るのはドレッドだけなのだ。ノルトが「疲れた」と頻繁に言うのも、身体(からだ)を動かす作業が遅いのも確かだが、調査に出発する前から判っていることでもある。

 このことはサーシャにも判っていて、だからこそ返答にも窮してしまう。そこに助け船を出すようにマリアンは言う。

「そうかも知れませんが、ノルトが歩み寄っても良いでしょう?」

「『歩み寄る』って、結局はあいつに『身体を鍛えろ』ってことだろ? 無理に決まっている」

「しかし遺跡調査に必要な体力も不足しているではありませんか」

「そんなもの、これから何十箇所も続ける内に必要な分は付くだろうさ」

「気が長すぎます!」

「勘違いしちゃいけない。あいつに働かせて貰わなけりゃならないのは、ここだ」

 クインクトは自分のこめかみを人差し指でとんとんと突きながら言った。


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