<第三章>・司の気持ち
『ごめんね、こんな親不孝な娘で。』
打てば響くような静けさの中、優はぽつりとそう言った。
『ほんとそうよ。』
『母さん、』
そう返したのは、今まで一言も発さなかった、母 美保子である。
『この際だから、未練が残らないよう全て話し合いましょう。』
怒っているのかどうなのか、美保子の口調は少し刺々しいように感じた。
『じゃあまず、あなたから。』
その一言で、視線が一気に忠道に集まる。
『俺は…』
そして忠道は、優の方をしっかり見ると言った。
『俺だけの意見を言っていいなら、優の生き方に文句はない。
むしろ、仕事にそこまで誇りが持てるって凄いことだし、この年でもう自分の考えをしっかり持って生きていることも凄いと思う。
だから、軽率な発言をして悪かったなって、さっきの話を聞いて思ってた。
確かに、優の花嫁姿を見たかったのは本当だ。
だけど、神路さんの言うように、自分の理想を押し付けるあまり……優が幸せになれないのは違うと思ってる。
だから、優の生きたいように生きてくれればいい。
……それが、父さんの幸せでもあるからね。』
終始穏やかな口調で話す忠道に、優の涙腺はまた崩壊しそうになっていた。
『本当にごめんね、お父さん。
でも、ありがとう…。』
見た目のわりには理解ある父親で良かったと、蓮も思わずその頬を緩めた。
すると美保子は、優の顔を見てはっきりと告げた。
『優。あなたは、さっき言っていた事が全てなの…?
もしまだ言い残した事があるなら、全部教えてちょうだい。』
『分かった。』
パンパンに腫れた目を軽く押さえると、優は残りの全てを全部吐き出した。
『さっき言ってた事は、私の本音。
でも、これだけは勘違いしないでほしい。
…恋が人をダメにするとは言わない。
人を愛することを馬鹿馬鹿しいとも思ってない。
けど、私にその道は合わなかった。それだけの話なの。』
誰も口を挟まない。優は続けた。
『この年で“恋をしない”と決めつけるにはまだ早すぎるのも分かってる。
私みたいな、人生経験もさほど積んでいない小娘が何言ってんだって言いたいのも分かる。
でもさ、私は……、私は……。』
ぐっと拳を握りしめ、優は言った。
『恋をするばかりに周りが見えなくなって、つい人の粗探しをしてしまう……そんな残念な人間にだけはなりたくない。
たった一度きりの人生、後悔するような生き方は絶対にしたくない。
例え親不孝だと言われても思われても、私は私の道を貫く。
認めなくていい、分かろうとしなくていい、憎んでくれたって構わない。
でも、この気持ちを……知るだけ知っていて下さい…っ。』
と勢いよく頭を下げた。
『優……。』
再びの沈黙の中、美保子はそっと優の傍に立った。
『ほんとアンタって……親不孝な子。』
『───っ。』
でも…その吐き捨てた台詞には、何故か温かみがあって。
『我が子の幸せを一番に望んでる親に、とんだ仕打ちをしてくれるわね。』
『えっ─?』
いたずらっぽく笑う美保子とは対照的に、開いた口が塞がらない優。
『じゃあ次は、母さんの番だな。』
そう言って、妻に軽く目くばせをする忠道に、美保子はくすぐったそうに笑った。
『そうね。ちゃんと、お母さんの話も聞いてもらわないと。』
昔話をするようにゆっくりと目を伏せた彼女は、優しい口調で思い出を語り始めた。
『…うちの近くに、小さな教会があるでしょ?
近々取り壊されちゃうみたいだけど、祭壇の上の大きなステンドグラスが魅力でね。
私達、そこで式を挙げたの。』
黙って話を聞く娘に、同じ思い出を共有した一人として、優しそうに目を細める夫。
そこにもう、親子の“わだかまり”は存在していなかった。
『そこは別に、チャペル専用の教会って訳じゃなかったんだけど、その綺麗なステンドグラスに思わず心惹かれちゃって。
お母さん、無理言ってそこの神父さんに、“どうしてもここで式を挙げたいんです”ってお願いしちゃったの。』
『お母さんらしい。』
『だろ?』
そう言って笑う二人に、美保子もつられて口元が緩む。
『そしたらその神父さん、いいですよって。
幸せだったなぁ……。
色とりどりの光差す教会で、誓いの言葉言って、指輪交換して。
──だからね、優。
結婚っていうのは、幸せになるためにするものなの。
私にとっての幸せは、好きな人と家族になることだった。
それだけの話。
……優にとっての幸せは?』
考える間もなく、優は確かな口調ではっきりと告げた。
『…私の仕事で、誰かの心を少しだけ明るくしたい。
今日はこの服を着るんだって、たったそれだけの事なんだけど、少し心が弾んじゃうような…そんな服を作り続けたい。』
すると、美保子はクスッと笑って、
『じゃあ答えは出てるじゃない。
いつまでウジウジ悩んでる気?』
と、優の手を取った。
『でも……』
『優。神路さんも言ってたでしょう?
優が私達の幸せを望んでくれるみたいに、私達もまた、優の幸せを望んでるって。
だから、親孝行したいと思うなら幸せになりなさい。
結婚だけが幸せの形なんて誰が決めたの?違う?
ただ、人には価値観ってものがあるから、優の考え方は、周りからはなかなか理解されにくいかもしれない。
この先、独り者でいる事を馬鹿にされるかもしれないし、頼んでもないのに憐れみの目を向けられることもあるかもしれない。
でもね、これだけは忘れないで。』
娘の手を自身の胸の辺りで強く握りしめ、美保子は一粒の涙を流した。
『私達は、何があっても優の味方よ。』
『──だな。
お前らしく生きて幸せになれ、優。』
『お母さん、お父さん……。』
今日だけでもう、一体どれだけの涙を流しただろう。
『私、私、………今がもう幸せだよ。
これ以上の幸せはないってくらい、今が一番幸せ。』
と、二人を強く抱きしめた。
『ごめんね……でも、本当にありがとう……っ。』
嬉し涙が止まらない娘の背中をゆっくりさする母親と、そっと頭に手を置いて微笑む父親。
その温かな情景を見る限り、さっきまでの重苦しい空気はどこかへ飛んでいってしまったようだ。
そして蓮は、そんな三人を見て寂しそうに呟く。
『……親父も、こんなんだったら良かったのにな。』
生前の記憶を思い出し、蓮は諦めたように笑った。
過去は変えられない。
大好きだった母親をアイツの元に一人置いてきてしまった後悔が、今更になって蓮を苦しめていた。
すると。
『──お話、済みましたか?』
なにやら、どこぞのボンボンの3時のおやつでも運んできそうなティーカートを押して現れた司に、三人は『はい』と頷く。
『では、これを。』
そのティーカートの上段には出来立ての紅茶とティーカップが、下段には、熱々のお湯を張った洗面器と氷水を張った洗面器にそれぞれおしぼりが入ったものを乗せており、司は机にそれら全てをところ狭しと並べた。
『神路さん……これは?』
そう言ったのは優だが、その場にいる全員、皆揃って注目していたのはその洗面器二つである。
『巷でよく聞く、アフターフォローってやつでございます。』
そう言って、事前に用意していたのであろう手鏡をポケットから取り出した司は、優の前にそれをズイッと突き出した。
そしてそれを見た優は、悲鳴に近い叫び声をあげる。
『な、な、な、な、何これ!!!?』
館に来る前に既に腫れていたその目は更に腫れており、本人も驚くほど瞼が赤く膨れ上がっていた。
『この熱いおしぼりと冷たいおしぼりを交互に5秒ずつ瞼に当て、それを何度か繰り返してください。
そうすると、自然と血の巡りが良くなり、今の状態よりはいくらかマシになるかと思われます。』
分かりました、と早速実践し始める優を背に、今度は矢野倉夫妻のティーカップに着々と紅茶を入れていく司。
『優さんの腫れが引くまで、おかわりをどうぞ。
新しいお茶菓子も用意させて頂きましたので。』
すると二人は、申し訳なさそうに頭を下げた。
『さっきは怒鳴ってすみませんでした、神路さん。』
『私も。
ちゃんと親子で話し合う機会をくれて、本当にありがとう。』
その言葉を聞いて、司は嬉しそうに頷いた。
『……い、いえ。
お礼を言わなければいけないのは私の方です。
赤の他人の、しかもこんな小娘の拙い話に付き合って下さり、本当にありがとうございました。』
と立ったまま深々と頭を下げた。
すると忠道は、『拙い話なんて…。』と柔らかく微笑み、
『あなたの話はもう、充分立派な“悟り”でしたよ。』
と付け加える。
そして美保子も、
『これだけ立派な館主がいたら、この町も安泰ね。』
と、天井を見つめながらそう言った──。
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午後9時。
この館の閉館時刻を丁度回ったため、司はドアプレートをcloseに変えるため表に出ていた。
『あ、雨……』
今はまだ小雨程度だが、これは本格的に降り出すだろう。
早く帰った方が身のためだと傘立てに目をやると、そこには一本、司の黒い傘だけが円筒の中にあった。
別に、そのこと自体は何もおかしくない。
むしろ、普段と何も変わらない普通の光景だった。
『………。』
でも何故か、このとき司は……その一本しか入っていない傘立てを見て、ふと、ある余計な心配をしてしまっていた。
それは───蓮の分の傘がないということ。
『…馬っ鹿じゃないの、、私。』
早くもその心配の矛盾点に気付い司は、思わず自嘲せずにはいられなかった。
なぜなら、アイツは悪魔だ。性質上物に触れることは出来ないため、雨に濡れる心配などする必要もないし、考えるまでもなく司もその事を理解している。
なのに今、司は悪魔のその性質を分かっていてさっきの心配をした。
それが意味するところ、つまり──。
『今のうちに、距離を置かなくちゃ……』
ほぼ無意識のうちに、悪魔である蓮を人間扱いしてしまう程度には、司は蓮との生活に慣れてしまっていた。
雨脚が強くなる空を見つめ、暫しの間もの思いに耽る。
蓮と暮らし初めて一ヶ月。
当初は、これでもかと言うほど戸惑いや驚きに溢れた毎日であった。
もちろん、今でもまだ驚かされる事はたくさんあるし、悪魔について理解していない部分も、きっとまだ多いだろう。
けれど、人間にとって異質な存在である《悪魔》を、少なくとも司自身はそこまで異質なものとして見なくなった。
そしてそれは、特別悪いことでも何でもない。
……そんなことは、理解っている。
理解ってはいるけれど、でも。
『幸せになりたいんでしょ、私。』
自らに言い聞かせるように放った本音は、そのまま雨音の中に混ざって消えてった。
そうだ。
辛い思いをすると分かりきっている道を選択するほど、今まで伊達に独りで生きてきた訳じゃない。
早かれ遅かれ、いつか悪魔が自分の日常からいなくなる日は必ず来るのだ。
──仮に今、司の目の前に死の瀬戸際を彷徨っている子供が一人でもいたとしたら。
司は迷わず、蓮との契約を使ってしまうだろう。
そしてその後、望みの代償に蓮を失ってしまったとして、例えどれだけ司が悲しみに暮れようとも、残された自分の人生はそう簡単には終わってくれない。
いつか別れがくる存在に、絶対依存してはならない。
例えそれが、物理的に“死なない”存在であったとしても。
──ドンッッッッ……!!
思わず目を閉じてしまうくらいの落雷が、曇天を弾き飛ばすように強く光った。
司は別に、雷が苦手な訳ではない。けれど、特にもうここに用はないため、そのまま館の中に入っていった。
そして…扉を閉めた後、ドアに寄りかかり息をつく。
『こんなこと考えちゃう時点で、もう遅かったのかな……』
あまりの情けなさに、自然と眉間にシワが寄る。
何度同じ過ちを繰り返す?
何故同じ道を選んでしまう?
人は死ぬのだ。誰しにも別れはあって、“永遠”などという言葉はただのはったりに過ぎない。
それを、幼い頃に身をもって……悟ってしまったではないか。
『はぁ……』
考えれば考えるほど、深く刻まれる無数のシワ。
すると。
『何が遅かったの?』
と、相変わらずの笑顔が目の前にあって飛び退いた。
『れ、蓮!?』
『そりゃ俺以外に誰がいるんだよ。』
蓮のツッコミはもっともだが、さっきまで二階にいたはずの存在に、司はすっかり油断していた。
『話、聞いてたの?』
『話?司、誰かと話してたのか?』
その様子だと何も聞かれていないようだ。ほっと安堵の息をつくと、司は蓮の顔を静かに見つめた。
『ねぇ蓮。』
『な、な、なんだよ、つかそんなに見つめんな。』
今の司は、身長差で自然と上目遣いになっているうえ、外に出た寒さからかほんのり頬も赤くなっている。
しかも、その瞳がどこか寂しさを抱えるように憂いを帯びていたため、さすがの蓮であっても、心臓の音がうるさくて仕方なかった。
『なに照れてんの?
……さすがに今更感が否めない。』
しかし、吐き捨てたその台詞だけは、至っていつもの司のままである。
『うっせーよ、つかいちいち返しが辛辣なんだよ。』
そのおかげか、いつのまにか鼓動はいつものペースに戻っていたけれど、それでもまだ蓮の顔は赤かった。
『あのね、突然で悪いんだけど。』
打ちつける雨が次第に強くなっていくのを音で感じながら、司は言った。
『私達……別々で暮らさない?』
それは──司が考えた、蓮と距離を取る唯一の方法だった。
すると蓮は、大きく目を見開き、慌てたように口に手を当てる。
『ご、ごめん、俺、何か司の気に障るような事……』
『違う。』
『司……?』
司の突然の提案に対し、文句より先に自らの落ち度を責めたこのお人好しに、司はまた頬を緩めていた。
『何と言うか……これはね、私の気持ちの問題なの。
蓮は何も悪くない。むしろ、謝らないといけないのは私の方。
勝手言って、困らせてごめん。』
司は今まで、ほぼ独りで生きてきた。
だから、いつまたその生活に戻ってもいいよう、以前の感覚に戻しておく必要があった。
家に帰って『おかえり』と言ってもらえる幸せ、誰かが傍にいるというぬくもり、それら全てが当たり前になってしまった時、後々辛い思いをするのは自分だ。
例え身勝手な判断だと言われても、今までの自分の経験が予防線を張れと警告している。
今は、それに従うしかなかった。
すると蓮は、意外にも明るく笑い飛ばして一蹴した。
『まぁ……司も、年頃の女の子だからな。
いくらお前がそういうのを気にしないったって、赤の他人と、ましてや、こんな状態であっても一応男である俺と暮らすなんて、休まる気も休まんなくてとーぜん。
……だから気にすんな。
司が謝る必要なんて、これっぽっちもねーよ。』
『蓮……』
繊細なほど優しい笑顔に、胸がチクリと痛み始める。
見当違いな理由ではあるけれど、これが彼なりの優しさだと知っている司は、特に否定も肯定もしなかった。
『ありがとう。』
司には、蓮のような優しさは持てない。
もちろん、誰かを気遣える心の余裕も……まだ。
すると蓮は、その色素の薄い髪を掻き上げ、
『でも、俺からも一つ……お願いがある。』
と、司から視線を逸らして言った。
『どうしたの?』
『図々しいこと言ってるのは分かってるんだけど……今日までは、あの家に一緒に帰っていいか?』
『…え、あ、そんなこと?
うん、分かった。』
さっきの神妙な面持ちから一転、あまりにもあっさり要望を受け入れた司に、今度は蓮が目を丸くする。
『……え、嫌じゃないのか?』
あまりにも心配そうに尋ねる蓮に、司は言った。
『嫌なわけないでしょ?
私は別に、蓮のことが嫌いになってさっきの話をしたわけじゃないんだし。』
『そ、そうなんだ……。』
どこかホッとした顔をする蓮に、司も内心安堵のため息をつく。
しかし、玄関で話してても片付けは一向に進まないため、区切りよく話を切り上げ、二人は館の戸締まりへと移った。
『じゃあ、いつも通りよろしくね。』
閉館後の窓の施錠確認は、もっぱら蓮の仕事になっていた。
なにせ、この広い館内の窓を一つずつ確認していくのはとても時間がかかる。
そのうえ、館の掃除やティーカップ類の後片付けもあるので、上手に役割分担をしながら、閉館作業を行っていた。
『おう、任された。』
そう言って颯爽と二階へと上がっていく蓮を見ながら、司もモップを手に掃除を始める。
『雨の日はやっぱり汚れるな……』
でもさすがに、館内全てを司一人で掃除するのは無理がある。
普段は、玄関と廊下、悟りを説いている一室、そしてその隣の部屋の掃除が主だが、例え年末の大掃除が来たとしても、例年二階まで手が回ったためしがない。
『今年は掃除したいなぁ…』
残念ながら、悪魔は人手に入らない。
けれど、“借りを作る”ことを異常に嫌っていたはずの司の頭には、何故か多くの人の顔が浮かんでいた。
──烏江、篠田の“心のよりどころ”組、常連客の美鈴、もしかしたら美羽も、頼んだら手伝ってくれるかもしれない。
『でもみんな、年末は忙しいか。』
廊下の端から端まで綺麗に掃除し終えた司は、降りしきる雨を見ながら、ポツリと呟く。
でも、今までの司なら考えもしなかった試みだ。
前までの司は、この館に関わる全てのことは、誰の手も借りず一人でやっていく所存だった。
それは、出来るだけ周りに迷惑をかけたくない……という思いからくるものだったが、掃除も、地域関係も、存続費も、とりあえずお婆ちゃんが残してくれた遺産…と呼べる程の遺産もないなか、なんとか頭を捻ってやりくりしてきた。
けれど今は、貸し借り云々の前に、単純にみんなで大掃除をする場面を想像し、胸が勝手に高鳴っている。
そういや最近、烏江に『纏う雰囲気が優しくなった』とか何とか言われたような……などと考えていると、玄関の方から一人の黒づくめが近づいてくるのが見えた。
『つーかさっ!
一階二階とも特に異常なし!』
仕事の早いヤツだ。叫ばなくても聞こえるというのに、清々しいほど二カッと笑うその姿に、思わず苦笑が零れた。
───犬……そうそう、蓮って言うんです、そいつ。
幻覚か、駆け寄ってくるその姿に、揺れる尻尾まで見えた気がした。
『きっと全部、アイツのせいだな。』
司は、自らの心境が徐々に変わりつつあることに気付いている。
そしてそれは、まぎれもなくあの悪魔が、“誰かといる楽しさ”を知らず知らずのうちに司に刷り込んだからだろう。
『……ったく、余計なことを。』
『ん?司、どうした?』
あどけない顔で首を傾げる某悪魔に、司は呆れたように言った。
『あんな馬鹿デカイ声で叫ぶなんて、近所迷惑でしょ?』
すると蓮は、司の顔をまじまじと見つめ、一言。
『俺の声は、司にしか聞こえないはずなんだけど…。』
『あ…………。
あーあーあぁ~!!!!!』
傘同様、また悪魔を人間扱いしてしまったと嘆く司に、揚げ足をとるように笑う蓮。
『ハハっ、そういう司こそ断然近所めいわk───』
『はぁ!?一体誰のせいだと……!!!!』
『ハハハっ。』
館内に響くのは、確かに司の叫び声だけ。
けれどそこには、目には見えなくても暖かな空気が、優しく二人を包みこんでいた。
司が段々、蓮のペースに巻き込まれてきてる…?
次回、いよいよ事態が大きく動き出します!
(いつも読んで下さってる方々、本当にありがとうございます…!!)




