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暁の〝星剣使い〟(あかつきの〝コスモダスター〟)  作者: よつふじあきたか
EPISODE5 『胎動する〝絶望〟(たいどうする〝ディスペア〟)』
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第267話 空を流れていくのは

「ふぅ……」


参道を登り切り、ミシェルは一息()く。

そして顔を上げると、仄かにライトアップされた霧園神社の荘厳な門が目に入った。


「さすがにこんな時間だと人はほとんどいないわね」


まもなく午後八時になろうという時間。真冬のこの時間に山の上の神社までやってくる物好きは彼女()以外にいないようだった。


「どうやら人払いを発動させる必要はなさそうですね」


「隠蔽はそのまま続けてもらえるかしら、リリィ」


「了解です」


霧園山及び霧園神社は水薙家、ひいては【異能研】の管轄である。


浅陽(あのこ)がこの地に居ない今が、この聖域(・・・・)を調査するチャンス」


「ですがたしか彼女には兄がいて、今は彼が代理でこの地に残っている筈では?」


水薙家次期当主である浅陽が管理の最高責任者だが、彼女は現在特殊な任務で久遠舘を離れている。そういう時の為に兄である誠夜が、この期間だけは責任者の代理としてこの地に留まることになっている。


「二人揃っている時よりも一人の方がやりやすいでしょう?」


淡々と……というより少し冷たい笑みを浮かべるミシェル。


「なるほど。では学院からほど近い〝旧参道〟ではなくて、遠回りな〝新参道〟から登ったのは?」


「〝旧参道〟の方は人通りなんて皆無。だけど〝新参道(こちら)〟は観光客や土産物屋で比較的人通りは多いわ」


「〝木を隠すなら森〟というやつですね」


ミシェルは小さく頷いた。


「さて、いつまでもここで留まっていたら怪しまれてしまいそうね」


「では先に進むとしましょうか」


とは言っても彼女達は別に参拝にやってきたわけではない。

とある目的の為に隠蔽術式を使って姿をくらましつつ霧園神社(ここ)までやってきた。


曰く、〝任務の一環〟というやつである。


ミシェル・J・リンクスの本来の所属組織は【ヘブンズ・ノーツ】である。

【ヘブンズ・ノーツ】はイギリスを中心に活動をしている魔術結社で、構成員は少ないが精鋭揃いで知れ渡っている。その筆頭が彼女───ミシェル・J・リンクスだ。


その彼女に与えられた最大の任務は【異能研】との関係構築である。


早くから〝黒晶人形(モリオンゴーレム)〟達の動向を探っていた【ヘブンズ・ノーツ】は、水薙家襲撃事件を前後に〝ヤツら〟が日本を中心に動き始めたことを察知していてずっと機会を窺っていた。


やがて襲撃事件の当事者である浅陽が【久遠舘学院】高等部へ進んだのを機に、ミシェルを送り込んだ。現在は友好的な関係を構築しつつある状況だ。


そんな状況で【異能研(かれら)】を裏切るような形の今回の調査任務は一歩間違えれば、関係を破綻させかねない。


だがそれでも、調査せざるを得ない理由が【ヘブンズ・ノーツ(かれら)】にはあった。


「この地の結界が、この山を中心とした破邪の結界だけでなく、もっと大きな結界の要である可能性がある?」


「そうよ。それもこの島全体を覆うほどの大きなね」


「島全体を?」


この島の面積はおよそ二五〇平方キロメートルで、島を一周する道路は約一四一キロメートルある。


「この山の他に東、西、南の三カ所に強力な破邪の結界が張られている」


「つまりこの山の結界も、神域や周囲の地域を守るためではなく……」


「大きな結界の要を守っていると考えられる。周辺地域はその恩恵の一部、ついでなのではないかしら」


「ですがつい先日、ノーブル達の跳梁を許してしまいましたね」


「それはおそらく、ヤツらの次元が違いすぎてここの結界では足留めにすらならないからではないかしら。もちろんアナタたちも含めて」


「アレらと一緒にされるのは非常に心外なのですが」


リリィはもの凄く嫌そうな顔で抗議した。


「そういうつもりではなかったのだけど。だってアナタがたが破邪の結界に引っかかるわけがないじゃない」


「それはそうなのですが……」


「なんなら本来の関係(・・・・・)に戻って、きちんと天使として接した方がよろしいかしら?」


「従来通り普通に師として、友としてお願いします」


融通の利かない自分の性格を半ば諦めて、リリィは譲歩した。


「ふふ。了解」


「では見つかってしまう前に調査を……───ッ!?」


突如、辺りに妖しい気配が漂う。


「これは───?!」


同時に気づいた二人は警戒態勢を取る。


「ミシェル」


リリィが上を見上げている。


「上? 一体何が?」


ミシェルも夜空を見上げる。

すると南の方角の空に眩しく光る物体が、上空から落ちてきているのが見えた。


「あれは流れ星……いえ、火球のようだけど……」


「どうやらこの妖気はあの火球が原因のようです」


「こんな強大な妖気をあれが───。一体アレはなんだと……」


そしてふと気づいた。

夜の闇の中にあってもなお黒い影が、二人の周りの地面からゆらゆらといくつも立ち上ってきている。


「これは───」


「どうやらこの地に留まっていた〝負の念〟があの妖気に呼応して姿を取ったようですね」


「調査どころではなさそうね」


髪から抜いた簪が巨大化して(ケイン)となった。


「ええ。放っておけば人間に取り憑いたり、害を為す存在へと変貌してしまうかもしれません」


リリィの肩甲骨の辺りから左右一対、二枚の翼が顕現した。




つづく

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