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暁の〝星剣使い〟(あかつきの〝コスモダスター〟)  作者: よつふじあきたか
EPISODE5 『胎動する〝絶望〟(たいどうする〝ディスペア〟)』
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第265話 並行世界の相違点

「あ~、緊張したぁ」


明星(あけほし)美那(みな)はテーブルにぐったりと突っ伏した。


「緊張? いつ?」


正面に座っているミシェルは驚きのあまり、温かい紅茶を飲もうと少し傾けたカップを途中で止めた。


「ずっとだよぉ。編入なんて初めてだし。それもつい最近まで(・・・・・・)通っていた学校の二学年下(・・・・)にだよ?」


「じゃあ〝ミナさん〟と年上らしくお呼びした方がよろしいですか?」


「誰に対してもタメで話すクセに何言ってんのかな。というか寒気がするからやめて」


「ふふ。了解」


「あのな、美那」


頭上からの声に美那が顔を上げると、【ミラージュ】のホールスタッフである穂村優希人が呆れ顔をしているのが目に入った。


そのこと(・・・・)はあんまり大声で話すなよ。誰がどこで聞いてるかわからないんだから」


「大丈夫だって。誰もあんな話信じないよ、もう、心配性だね優希人は」


「それもそうよね。まさかいつも世話になってるユキトが別の並行世界の人間だったりとか、ミナもそれを追いかけるようにしてこの世界に辿り着いたとか。いくら魔術や超能力が公になっているとは言え、おいそれと信じられる話ではないわね」


「そんなぁ。赤い糸が私を引き寄せたなんて……照れるよぉ」


美那が両手で頬を包み込むようにして顔を左右に振ると、山吹色のポニーテールが釣られてぶんぶんと揺れる。


「ユキトとの関係を暴露して大騒ぎになったものね」


「どうりで。今日はよく聞かれるわけだ」


放課後になって二人と同じように帰りに寄った学院生が優希人に美那との関係を何度も訊ねたのだ。


「あはは~。ごめんね、つい」


「まあ、いいけどな」


大して気にした様子もない。


「そのおかげでいいデモンストレーションにはなったのではないかしら」


「デモンストレーション? 三人相手に圧倒したってやつか?」


「その話もう出回ってるんだ」


美那が目を見開いて驚いた。


「まあ全然本気じゃなかったけど」


「当たり前だ。本気のお前と対等に闘えるのなんて浅陽とかミシェルくらいだろ」


それはすなわち、編入一日目にして学院最強クラスの仲間入りを果たしたということだ。


「……そういや浅陽っていつ帰ってくるんだっけ」


「今夜大切なお務め(ミッション)があると言っていたから、週明けには戻っているのではないかしら」


「今夜? ……ああ、〝龍神祭〟かぁ」


美那は懐かしそうに柔らかく微笑む。


「知っているの?」


「昔この辺りの海を一匹の龍が暴れ回ってたんだって。それを偉いお坊さん……だったかな、が一度は鎮めたんだけど、満月の晩になると龍に取り憑かれて暴れ回ってたらしいんだ。だから地元のなんだかって結界専門の家の人に手伝ってもらって自らを封印したって話があってね。早い話、その龍とお坊さんの魂を慰めるためのお祭り」


「慰霊祭というやつかしら。ともかくその手伝いをアサヒ(あのこ)がしていると」


「浅陽の地元だしな。家も歴史があるらしいから、そういう役割があるんじゃないか」


「次期当主と言う話だし、あの子も大変ね」


「大変と言えばキミだって大変じゃない?」


「ワタシ?」


意外そうな顔をするミシェル。

しかし内心、少しだけ狼狽した。


「留学にしろ、ホームステイにしろ、自分の国を離れて生活するって大変じゃない」


「そういう人達はそこでやりたいことがあったり、何か目的があって国を離れてるんだ。大変なのは承知の上なんだろ」


「そうね。ワタシの場合は任務の一環でもあるわ。でも大変さで言えばアナタ達の方が上じゃないかしら。世界の壁を越えてもう戻ることは出来ないのだから」


「うん……」


美那の表情が少し暗くなった。


「寂しいか?」


「……寂しくないって言ったらウソになるけど、でも優希人と一緒なら大丈夫」


そう言ってまたニカッと笑った。


「せめて手紙か無事を知らせることが出来ればいいんだけどな」


我ながら無茶なことを言うと優希人は苦笑する。


「向こうの世界と言えば、ワタシは〝白銀の魔女〟と呼ばれていたらしいわね」


「ああ。向こうではその通り名で有名だったな」


「こっちでは〝白銀の魔術師〟だったっけ?」


「ええ。一応ね」


「そういや一緒に誰かいなかったっけ、優希人ん()に来た外人さん」


「いたな、女騎士。たしか名前は……」


優希人が思い出そうとしていると、


「女騎士? もしかして『アリシア・エレノア・シンクレア』かしら?」


「そうそう。【聖槍降魔聖省(ランス・オブ・ヘブン)】の双剣使い。たしか彼女もミシェルと似た剣持ってたな」


「〈星刃(セイバー)〉ね。彼女は風の双星剣〈ゼファー〉の所有者よ」


「ねえ、優希人。ボクも持ってるんだけど」


美那はぶぅと頬を膨らませている。


「お前のはどっちかって言うと(つるぎ)じゃなくて(こぶし)の方だからな」


「え~、でもこうして手刀ですぱっとやったら地面が斬れたんだよ」


美那が右手を手刀の形にして振り下ろす。

さすがに戦闘時でないので何も切れない。


「七つ目の〈星刃(セイバー)〉。星の星剣〈アストライヤー〉ね」


星刃(セイバー)〉は全部で六振りと聞いていたミシェルは、七振り目の〈星刃(セイバー)〉が現れた時はさすがに茫然自失としてしまっていた。


しかも美那は【念晶者(クリスタライズ)】な上に、拳に宿ってしまうなど前代未聞だったのも拍車をかけた。


「こっちではアリシアと一緒に活動してなかったのか?」


「別に一緒に活動していたということはないのだけど。そうね。アナタ達が向こうのワタシ達と会ったのは向こう側での二年前だったかしら?」


「ああ」


「ちょうどその頃イギリスでとあるミッションを共同でこなしたことはあったけれど、日本に来たことは今回留学で来たのが初めてで、来たことはなかったわね」


「それはやっぱり、この世界の(・・・・・)俺達が既に死んでるからなのか」


この世界の穂村家、明星家は飛行機事故で亡くなっている。


「そればかりは分かりかねるわね」


「そりゃそうか」


「そのミッション以来会っていないのだけど、たぶんどこかで人々の為に剣を振るっているに違いないわ」


そこで優希人が二人組の客が来たのに気づいてその場を離れた。


「いらっしゃいませ、緋織さん。それと……」


優希人が出迎えるのにその場から離れた。


「あれは……」




つづく

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