婚活⑥ 婚姻届
毎月、婚活会社へ数万円払い毎週末女性と45分間話す。
次へ進めばデート。
だが、その次が無い。
進めない。
また45分間。
また断られる。
また翌週。
それを何年も続けた。
彼は口癖のように言う。
「どこに出会いがあるんだ?」
「ヴァー(BARか)?」
「ヴァー(BAR)なのか?」
同僚の誰かが、
「行ってみれば?」
と言った。
他の誰かが
「料理教室とかどうですか?そういう趣味のサークル入ってみるのはどうですか?」
彼は首を立てに振らなかった。
彼は言った。
「料理なんて興味無い!」
そもそもBARに行けば出会いがあるというのもすごい発想だ。
確かにそういう出会いもある。
だか、あんな田舎で畑を耕していそうな顔で、ファッションセンスも皆無。スーツのジャケットの下にジャージを履いて、中高生の部活で使いそうなデカいバッグを肩から下げて
「決まってる?」
と、言ってきたときには何も返せなかった。
彼と話していて分かったことがあった。
それは、彼は結婚という二文字に憧れているということだった。
結婚相手なんか正直どうでもいい。
本人は20代前半のおっぱいの大きい娘が良いとかほざいていたが、そんなもの無理に決まっている。
彼に似合う女性は年上の人だと思う。が、そんなこと口が裂けても言えない。
あなたに似合う女性は90歳くらいのお婆さんですよ。なんて。
相変わらず婚活会社へ通っていた。
彼は婚活パーティーの席に座る。
何も進展は無い。
ただ参加して席に座るだけ。
ある時、カツオさんが
婚活パーティーに行く前はオナニーをしていくと言っていた。
理由は
「勃ってしまうから」
風俗は?と聞いたことがある。
「風俗はねぇ……」
溜めるんだよな。この人イチイチ。
「汚いから行かないんだよ」
風俗嬢に対して汚い発言をしていた。
ただ、デリヘルには行くと言っていた。
そしてもう一つ。
彼には奇妙な癖があった。
婚姻届を財布に入れて持ち歩いていた。
「いつ結婚してもいいようにな。」
その紙だけが、
三十年間、
一度も提出されることなく財布の中で歳を重ねていった。




