婚活① 人生で一番長い夜
※この作品は事実ベースにフィクションを2%くらい混ぜて書いております。
これは婚活に人生の半分以上を捧げたある男の物語である。
彼は今、人生の岐路に立たされていた。
婚活男。
本名ではない。誰が呼び始めたのかも分からない。それでもいつしか、その名だけが一人歩きするようになった――コン・カツオ。
この物語の主人公である。
リアルな人生では主役になれなかった男が、小説の中でだけ、晴れて主役の座を勝ち取った。
五十七歳。
婚活歴三十年。
お見合い経験二回。
性交渉ゼロ回(婚活開始からの三十年間で)
風俗歴、多数。ただし本番なし。
彼は言う。
「嫁さんが欲しい!」
「既に家はある! なのに何故、嫁さんが来ないんだ!」
誰も否定はしない。
誰も肯定もしない。
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それは、二十七歳の秋だった。
二年間付き合った、一つ年下の彼女。カツオは当然のように、いずれ結婚するものだと思っていた。結婚とは恋愛の延長線上にあるものだと、疑いもせず信じていた。
だから彼女の口から出た言葉は、日本語のはずなのに理解できなかった。
「別れてください」
時間が止まった。
理由もよく分からない。昨日まで、いつも通りだった。笑っていた。手も繋いでいた。なのに今日、何の前触れもなく終わった。
彼は彼女の家へ向かった。
「もしかしたら――」
その"もしかしたら"だけを、胸の中で握りしめて。
夜が更ける。 街灯が消える。 朝まで、元彼女の家の前に立ち尽くした。
新聞配達のバイクが走り抜ける。 鳥が鳴きはじめる。
彼女は、最後まで出てこなかった。
人生で一番長い夜だった。
朝日が昇る。希望ではなく、ただ現実だけを照らしながら。
その日は仕事を休んだ。昼間から酒を飲んだ。泣いた。涙は、意思とは関係なく勝手に溢れた。
「俺の……何が悪かったんだ」
その答えは、三十年経った今も、まだ見つかっていない。
そして――、彼は婚活の沼へとはまり込んでいく。




