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大奥で下女をしていたら、算術の才能がバレて勘定方と組むことになった件 ――利権まみれの大奥を最適化します。  作者: 細川 雅堂
【関東商圏編 ―仕組みが国を動かす―】

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第22話 光は、ただで配るほど価値が出る

――織江屋再興編・江戸の景色を塗り替える一撃


浅草寺の境内は、

朝の薄明かりに包まれていた。


参拝客が列をなし、

僧たちが掃き清める音が響く。


ぬいは、

その本堂を見上げて静かに息を吸った。


(……ここだ。

 江戸で最も人が集まり、

 最も“光の変化”に敏い場所)


(この御堂が明るくなれば、

 江戸中が気づく)


お縫は、

織江屋で作った 海の灰のガラス を積んだ荷車を見やった。


水野が歩み寄る。


「本当に“無料で”寄進するのか?」


お縫は頷いた。


「はい。

 寺社は、江戸の“見本帳”でございます。

 ここが変われば、

 江戸の目が変わります」


水野は苦笑した。


「商いとしては無茶だが……

 お前の無茶は、いつも理が通っている」


お縫は、にこりと微笑んだ。


「光は、

 ただで配るほど価値が出ます」


お縫は浅草寺の僧たちに頭を下げた。


「本堂の障子を、

 すべて“光を通す板”に掛け替えたく存じます。

 費用は一切いただきません」


僧たちは目を丸くした。


「そ、そんな……

 織江屋殿、いくらかかると思っておるのです」


「寄進にございます。

 どうか、江戸のために」


僧正が静かに頷いた。


「……では、任せよう。

 光は仏の慈悲。

 それを広めるというのなら、

 我らが断る理由はない」


作業は夜通し行われた。


古い障子を外し、

新しいガラス板をはめ込む。


夜明け――

最初の光が差し込んだ瞬間、

僧たちが息を呑んだ。


「……なんと……」


「御堂が……

 朝日で満ちていく……!」


参拝客が次々と立ち止まる。


「おい……見たか?」


「浅草寺が……光ってるぞ……!」


「こんな明るい御堂、見たことない!」


お縫は、

その光景を静かに見つめた。


(光は、

 人の心を動かす)


その日の昼。

江戸中の瓦版が一斉に刷り上がった。


「浅草寺、本堂が“光の宮”に変貌!」

「新しい障子は織江屋の“江戸ギヤマン”」

「参拝客、連日数万人!」


町人たちが口々に言う。


「織江屋のギヤマン、すげぇな……!」


「寺があれだけ明るいなら、

 うちの店にも欲しい!」


「大名屋敷でも噂になってるぞ!」


お縫は、

店の前にできた行列を見て静かに頷いた。


(無料で配った光が、

 江戸中の財布を動かす)


その夜。

水野が織江屋に戻ってきた。


「大名からの注文が十件。

 豪商からは二十件。

 寺社からは“うちも掛け替えてほしい”と山ほど来ている」


お縫は静かに答えた。


「浅草寺は“見本”にございます。

 見本が良ければ、

 商いは自然と広がります」


水野は笑った。


「お前のやり方は、

 江戸の商いの常識をひっくり返すな」


お縫は、前髪の奥で目を細めた。


(織江屋の名は、

 江戸の空に届いた)


(次は――

 江戸の“金”を動かす番)


(第23話へ続く)

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