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【第95話】呪われた娘③

「ん? どうしたルーナ、そんなとこで口開けたまま突っ立って......って、村長?!」


すぐに父は、家の中に漂う異様な空気を察しました。



いつもはあれほど騒がしい私が、なぜか今だけ、一言も発さずに立ち尽くしている。


いつもは穏やかな村長が、ぐったりとした様子でソファーに座っており、血の気の引いた顔で私の方をじっと見つめている。


突然、母が手に持っていたコップを床に落としたかと思えば、そのガラス片を片付けようともせずに、ただただ絶句している。



――――誰がどう見ても、普通の状態ではありませんでした。



「村長! ど、どうされましたか!? レイナ! 薬は!?」


「おいおい、何があったってんだよこれ......」


「ラース、村長に回復魔法を。 薬よりそれが先だ」


異常事態にも慌てることなく、淡々と処置を始めるフェザーさん達。



皆さんは、ついさきほどここに来たばかりだから知らないのです。



―――――この奇怪な状況を作った元凶が、目の前にいる私であることを。



ただそれも、ほんの少しの間だけです。


もう、偶然なんて言葉で済ませてはならないところまで、私達は来てしまっていたのですから。



「村長、気を確かに持ってください!!! ラース! 早く!」


村長の元に駆け寄り、そう声を掛ける父。


「わ、わかってるって!!」


「この症状だとクーラよりディスペルが有効だ。 急げ」


持ち前の経験を生かして的確な指示を送るフェザーさんと、それに応えるラースさん。



......しかし、ここである異変が起きました。



「.......だ......」


ずっと黙っていた村長が、唐突に顔をハッと上げ、一言そう呟いたのです。



「ま、魔法が効いたのか......?」


「いや待て......様子がおかしい......」


誰かが声を掛けても、村長に反応はありません。


顔は変わらず青ざめたまま、視点は定まらず、虚空を見つめるばかり。



唯一変化が見られたのは、口の動きでした。


「......の......子だ.......」


村長はとても重大なことを私達に訴えかけるように、パクパクと口を必死に動かして、なにかを言い続けていたのです。



「クソッ! 俺の魔法じゃ力不足ってことなのか!?」


「静かにしろ。 よく聞け、さっきからなにかを言おうとしてるぞ」


はじめは誰一人として、その内容を聞き取れませんでした。



ですが、徐々に徐々に村長の声量は大きくなっていき、そして.......



「..........れた子だ」


「村長、さきほどから一体なにをおっしゃっているのですか? やはりちゃんとした病院に行った方が......」



父がそう声を掛けた、次の瞬間でした。



「うわあああああああああ!!!!!!!!!」


村長が急に目を見開き、大きな声で発狂しながら、椅子から転げ落ちたのです。



「なッ!? こ、今度はどうされたんですか?!」


父が驚いた様子でそう言い、村長の元に駆け寄りますが、


「あ......あああ......なんということだ......私の村でこんなことが起きてしまうなんて......」


「あの......村長?」


視界に入っていないのか、村長は父を無視。


無視したというより、もはや反応をする余裕さえ無かったのでしょう。



「.......」


村長は尻餅をついたまま、右手を上下にぶらぶらと揺らし、その手をゆっくりとゆっくりと上げていきます。



―――――――そして、その手で私のことを真っ直ぐに指差すと、村長はこう叫んだのでした。



「間違いない......その子は、呪われた()だ!!!! 俺は確かにこの耳で聞いたぞ!! ラースたちがここに来る直前、他人の魔力を感じとったかのように聞こえる、恐ろしい発言を!!! まるで、この世界の観測者にでもなったような口ぶりでなぁ!!!!」

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