エピローグ
それからの事について言うと。
赤星ゆかりは、生徒として。真山徹子は、教師として。白石かえでは、魔法少女のステッキとして。
町に滞在することになった。
ゆかりが説明した。
「私達の戦いはひとまず終わったけど、また魔物が出るかもしれないから、とりあえず、この町に滞在するよ」
だそうである。
真山は、自分の正体や過去を幸佳に知られてしまった。
その上、あろうことか、自分があれ程敵意をむき出しにして、痛罵しまくり、殺そうとまでした伊藤愛に結果的に、とはいえ、助けてもらった。
と、ゆかりから聞いて、ひどく取り乱していたそうだが、今では落ち着いている。
ただ、それ以来、彼女の態度が少し遠慮がちなものになった。
それが、幸佳には少し可笑しかった。
ちなみに、伊藤愛は、現在、行方不明となっている。
現在、幸佳を初めとする一色小学校の生徒達は、元気に登校している。異常なほど多かった欠席者も、皆回復し、町には活気が戻った。
柴田幸佳の決意は、実を結んだといえる。
事態は大きく好転した。
ただ、五年四組の生徒達に関しては、そうとも言えない。
彼等の担任は、未だ、あの「暴力の鬼」なのである。
真山徹子、二十九歳独身、ヒステリックでクレイジーな女教師なのである。
以前と比べると、多少は穏やかになったとはいえ、真山徹子は依然「暴力の鬼」と呼ばれる、嫌われ者のままだった。
かえで先生ではなく、「暴力の鬼」が転任すれば良かったのに、と愚痴る子供達は大勢いたが、幸佳はその意見には賛成しなかった。
何故なら、幸佳は、「暴力の鬼」と呼ばれ忌避されている女性が、背負い続けている苦しみや悲しみを知っているから。
彼女は、ずっと怯えていたのだ。
彼女は、ずっと怖がっていたのだ。
彼女は、ずっと傷ついてきたのだ。
その事を知った幸佳には、もはや真山を非難する事などできなくなっていた。
そして、幸佳は悟った。
・・・どんな大人も、昔は子供だったのだと。
二十九歳の「独身女教師・真山徹子」の中には、十歳の「正義の魔法少女・ファイ」が生きているのだと。
そのことを、幸佳は知っている。
だから幸佳は、学校へ行こうと思う。
赤星ゆかりや、白石かえでや、真山徹子に会うために。
自分の眼で、自分の耳で、自分の肌で、自分の頭で、見て、聞いて、感じて、考えるために。
朝、ランドセルを背負った幸佳は、自宅の玄関から、外へと飛び出した。
少女は元気よく言った。
「行ってきます!」
さあ、学校へ行こう。
・・・「因果の果て」にあるものは、他人を愛さなかった母親と他人を許せなかった娘、
この両者の邂逅がもたらした、救いと許しと癒しだった。




