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因果の果て  作者: 中田英二
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伊藤愛の結婚

第一の殺人を遂行し、これで、腹の中の邪魔者をとりあえず始末できたと一安心した愛は、凄まじい怒りや恨みや憎しみによって、武田隆という男に復讐したかったのだが、自分を切り捨てた彼に対する本格的な報復を実行する現実的な余力も最早、愛には残されていなかった。

苦痛と疲労のあまり抜け殻のようになった愛は、休学していた高校に復学するのも嫌になり、そのまま中退した。自分を切り捨てた彼、武田隆という男が、あの血みどろの大喧嘩以降どうなったのかは伊藤愛という女は知らない。

知りたくもなかった。

 

高校を中退した愛は、母の勧めもあって専門学校へ通うようになった。しかし、ショックから未だに立ち直れていなかったので、専門学校も休みがちだった。ある日、ゾンビのようにふらふらと繁華街をうろついていると、そこにはなかなかハンサムな男がいた。

その男を見ていると、彼の方から愛に声をかけてきた。ナンパである。

愛は喜んだ。

二番目の彼と出会う事で、自分の心が蘇るような気がした。


彼、高橋さんっていうんだ。


高橋智弘という男は愛より一つ年上の不良っぽい青年であり、その中身も外見に違わず近辺で札付きのワルだったのだけれど、ごくたまに彼が見せる優しい振る舞いは愛の目には大変魅力的に映った。何かにすがりたかったので、優紀に擦り寄ってそのまま付き合い始めた。智弘も温かい家庭というものに縁が薄い人生を送ってきたらしく、愛に対して温もりを求めてきた。

二人の恋人付き合いは、要するに惨めな負け犬同士の傷のなめ合いでしかなかったのだが、愛と智弘はその事を自覚していなかった。

そして、失敗した。

またしても愛は妊娠してしまったのだ。

喉元過ぎれば熱さ忘れる、とはよく言ったもので智弘との恋人付き合いを始めてから、またしても快楽に溺れるようになった愛は、前の男である武田隆に利用されて捨てられた挙句、嬰児殺しまでやらかしたという過去の所業から全くと言っていいほど何も学んでいなかったのである。


結局、伊藤愛は懲りない女だったのだ。


しかし、智弘は人並みの良心を持ち合わせていたので、結婚して働くと言ってくれた。自分達の「子供を守ると誓ってくれた。妻と子を養える男になると約束してくれたのだ。

覚悟を決めた智弘の表情を見て愛は、これで自分はようやく幸せになれると想った。

ようやく、自分だけの王子様と出会えたのだと妄想した。かわいそうなお姫様である自分には世間一般の人間より幸せになる権利があり、それを享受できる時がついに来たのだと勘違いしたのだ。

入籍後、智弘は妻と子供を養うためにホストとしての道を歩み始めた。愛の実家の人々はは、娘がまたやらかしたのかと呆れていたが、智弘という男を一目見て気に入ったらしく特に問題も無かった。

愛が子供を出産する頃には、智弘はホストとしての仕事に生きがいを見出し始めていて活き活きとしていた。そう、この時確かに幸せを感じていたのだ。彼女は彼女なりの幸せを、掴みかけていたといえる。


だが、その幸せも長くは続かなかった。


愛さんの悪行はこれからもっとエスカレートしていきます(汗)。

どうか、最後まで、お付き合いくださいませ。

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