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第2話

───ドンドンッッ!!!!


 



 そのとき、暗さに慣れた目へ届いた赤い閃光、耳と頭をつんざく轟音、突発的にやって来た暴力的な風と、それに乗ってきた何かが焦げた匂いに、セリオーレは現実へと引き戻された。



……その数時間前。





「はぁ…はぁ…はぁ………み…見失った…」




 快晴の空の下、若々しく茂る木々の中で美しいライトブラウンの髪がなびいている。小さい額がきらめいてもいた。

 青いネックレスをかけた少女は(推し)を探していた。




筋トレしても経験値入らなかったなぁ。

せっかくセリーから経験値ネックレス借りたのに…

てかステータスウィンドウってどうやって表示するんだ…?もしかしてセリーの特権なのかな?


それかモンスターを1体でもいいから倒さないといけないとかなのかな。



「あーー…疲れた…休憩するとこないかな。暑いし。」



…あれ。洞窟だ!



 心地よい風が奥からぶわっと吹いてくる。吹いた風が額の汗を拭って、洞窟へと手招きしてくる気がした。



涼しい…

ちょっと中で休憩しようかな。

モンスターいるかもだけど、まあどうせ雑魚敵だから勝てるよね。

なにせ今の僕はラスボス(レイリィ・アルーヌ)ですから。



 岩天井から水が滴っているのだろう。

 ピチャン…ピチャン…と心地よいソロパートを洞窟中に響かせていた。

 真っ暗な洞窟の中では、点くらい小さいコケが、さまざまな色を発してまばらに自生していた。

 それがお気持ち程度の光源となることで、中は目を凝らせば何とか見えるレベルだった。

 ここでは宇宙が広がり、目が慣れていけばいくほど、気が付かなかった美しい星々(コケ)が表れていく。



 しかし、今のレイリィにとってこの神秘的な光景は心底どうでもよかった。




「くさぁっ…」


 無意識に鼻をつまみ、嗅覚を遮断したくなる。

 奥に進めば進むほど、グナンッとした獣臭い匂いが生ぬるい風に乗って運ばれてきた。

 


なにこれ…臭すぎる…

これは無理。我慢できない。ひどい。言葉にならない。

戻ろ。


 ─ゴンッ!!!!


痛っ! …くっ…まじ…は…?


 レイリィの足元から響いたその音と伝わった痛みから、それが何かの箱というのはすぐに分かった。



…なにこれ。

え?宝箱?なんでここに?

てかどこから出てきた?



 それを開けると中から光が…!

 


 …ということはなく、真っ暗な洞窟の中では何が入っているのか全く分からなかった。

 手触り的に、何かのアクセサリーたち、とくに指輪と、円柱型の棒のようなものがあるとわかる。


指輪…?

と、パイプ?いや、穴は空いてない。

棒?なんか握り心地いいな。あとなぜか冷たい。

レーザーソードとか?ボタンとかあればブビーンってレーザーとかビームとか出ないかな。

そしたらちょーかっこいいのになー。


とりあえず指輪と棒だけ持って帰ろーっと。

その後はセリーにここを教えて、一緒に宝箱を持ちだそう!

セリー喜ぶかなー…


てかこの指輪ピッタリじゃん。左の薬指に入れてみたけど…


……え、ちょっと、ピッタリすぎない?抜けないんだけど。


 暗くて全く見えないが、おそらく顔を赤くするほどの力をこめて、指先が白くなるほど力んでいる。



 背中にまた汗が出てきているのを感じる。熱い。

 ……いや、熱すぎる。


 背中から、ぶっ、ふぶふっと音と共に、生ぬるい風が止まる。



………ん…?



………


 振り返ると、レイリィのくりくりした小さな瞳には映しきらない大きな生き物がそこには居た。



あはー……


これはこれは…

かわいいかわいい…ドラゴン…さん…ですか…?

いや…かっこいい黒の…大蛇さんですねぇ…?

はははー……



 ぶふ。

 と、レイリィの心の声に『正解です』とでも言うような鼻息がかかった。





………


やばいやばいやばいどうしよう。

こいつどう見ても大ボスだよな。

え、ってことは入ってきたとこって、ダンジョンかなにかの出口だったって感じ…?


だから宝箱あったのかー。なるほどー。



…ってそうじゃないよ今は。

うわー死んだ。あー死ぬわこれ。どうしよう。



…どうせ死ぬかもしれないなら、もう今やれることは全部やる!





活火激発(エクスプロージョン)!!!!」





───ドンドンッッ!!!!

 


 真っ暗な洞窟の中に、

 赤い閃光、耳と頭をつんざく轟音、爆破による暴力的な風と、肉と石が焦げた匂いが一瞬で充満した。




「あっつ… …くない!?」



 先ほど手に入れた指輪が、淡い緑色の光を強く放ち、レイリィを包んでいる。

 暗くてよく見なかったが、今ならはっきりわかる。


 その指輪は美しい銀色をしていて、リングには何かの文字、または模様が刻まれ、レイリィの小さい指に合わせてピッタリと装着されていた。どうやら模様の中から光が放たれている。


 そして握っていた棒は…



 ただの錆びた金属棒だった。



「なんだよこれ!鉄くずか!?」



 目の前にいる焦げた大蛇は、鼻息を荒くして痛がっている。まだかろうじて生きているようだった。

 鋭い牙をむき出してこちらを睨んでいる。

 このモンスターがレイリィの小さな首を狙っていることは、レイリィ本人でもわかった。




「魔法は効いてるのかな…ヘビは熱に弱いはずだから強そうな名前のやつ叫んでみたけど。くそ…どうしたら…」




 その時、大蛇から…いやその後ろから、早い足音と、聞き馴染みのある、レイリィにとって最も美しい存在であり、尊ぶべき存在(推し)の声が聞こえてきた。




「今の爆発はなに!?そこにいるのは誰!?」







「セリー!!」



 




そう叫んだとき、小さな右手に包まれた鉄くずが、ピクッ…ピクピクッ…と反応を示し、レイリィにだけ訴えていた。

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